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猫がトイレの使用を拒絶する理由は臭いよりも汚れ

 2種類のトイレを用いた究極の選択試験を繰り返すことにより、猫が最も好む条件と最も嫌う条件が明らかになりました(2017.3.1/アメリカ)。

詳細

 調査を行ったのは、アメリカ・ミズーリ州にある「Nestle Purina PetCare」。同社の研究施設で飼育されている猫(1歳~12歳・全て不妊手術済の雑種)を対象とし、トイレ以外の場所で排泄行為を行う粗相が、一体どういう条件下にあるとき最も発生しやすくなるのかを検証しました。 条件を変えた2つのトイレを並べて猫の選好を調べる  調査チームはカバーが付いていない開放型トイレ(61.0 cm × 48.3 cm × 25.4 cm)を排泄区画内に2つ用意し、全く同一の猫砂を用いた上で、以下に述べるような14種類の究極の選択実験を行いました。「排尿塊」とは食塩水を猫砂に吸収させたもの、「排便塊」とはゼラチンで作った模擬うんちのことです。
猫のトイレ選好試験
トイレ砂の状態を様々に変えて猫の忌避反応を観察する
  • まっさら vs 親しい猫の実物糞尿
  • 親しい猫の実物糞尿 vs 自身の実物糞尿
  • まっさら vs 親しい猫の尿臭
  • まっさら vs 親しい猫の糞臭
  • まっさら vs 親しい猫の糞尿臭
  • 親しい猫の尿臭 vs 親しい猫の糞臭
  • まっさら vs 無臭の排尿塊1つ(25ml相当)
  • まっさら vs 無臭の排尿塊3つ(60ml相当)
  • まっさら vs 無臭の排便塊1つ
  • まっさら vs 無臭の排便塊3つ
  • まっさら vs 無臭の排尿塊1つ+無臭の排便塊1つ
  • まっさら vs 無臭の排尿塊3つ+無臭の排便塊3つ
  • 無臭の排尿塊1つ vs 無臭の排便塊1つ
  • 無臭の排尿塊3つ vs 無臭の排便塊3つ
 上で述べたような様々な実験の結果、猫がトイレの使用を忌避する時の条件が明らかになったといいます。具体的には以下です。
猫のトイレ選好条件
  • 親しい猫の排泄臭があろうとなかろうとトイレの使用率はそれほど変わらない
  • たとえ排泄臭がなくても排泄の痕跡があると使用率は低下する
  • 痕跡の数が多ければ多いほど使用率は低下する
  • うんちよりもおしっこの痕跡の方が使用率は低下する
 最も使用率が高いのは「使用した痕跡が全くない無臭のトイレ」(おしっこ90%超 | うんち70%超)、逆に最も使用率が低いのは「あちこちにうんちとおしっこの痕跡があるトイレ」(おしっこ30%程度 | うんち10%未満)であることがわかりました。猫の不適切な排泄は時として飼育放棄につながる一大事であるため、トイレが忌避される条件を事前に知っておく事は、猫と飼い主双方の絆を維持する上で極めて重要であるとしています。
Does previous use affect litter box appeal in multi-cat households?
Behavioural Processes, 14 February 2017, J.J. Ellis et al. dx.doi.org/10.1016/j.beproc.2017.02.008

解説

 今回の調査で得られた結果は、ほとんどの飼い主にとって周知の事実です。ただ意外だったのは、トイレ忌避の原因となっているのが臭いよりも見た目であるという点です。この選好基準には、「手足が汚れるのが嫌」という生理的な理由のほか、猫が先天的に備えている寄生虫予防策が関係しているかもしれません。
 使用痕跡がある砂の上で用を足そうとすると、足の裏や被毛にどうしても他の猫の糞尿がついてしまいます。排泄物の中には寄生虫の卵や原虫が含まれていることが多々ありますので、セルフグルーミングを通して体内に取り込んでしまう可能性が大です。トイレを選ぶ際、目がそれほどよくないはずの猫が突如としてビジュアル重視に変わる理由は、「臭いで病原体がうつる事は無いが、物理的な接触を通してうつる事は大いにあり得る」という原則を、生まれつき知っているからなのだと推測されます。 猫にとって重要なのはトイレの臭いよりも清潔さ  今回の調査では新たな発見もありましたが、飼い主として注意すべき事は今までとそれほど変わりありません。ポイントはトイレは常にきれいにしておくという単純な1点です。「トイレを1日1回きれいにする」ことを日課にしている人は、「猫がトイレを使用するたびきれいにする」を基本ルールにした方がよいでしょう。特にシステムトイレを使っている家庭や多頭飼いしている家庭においては、使用痕跡が残ったままになりがちですので要注意です。また家を空けている時間が長い家庭においては、多くの参考書で言及されている「トイレの数は飼育頭数+1ルール」が役に立ってくれるでしょう。たとえ一方のトイレに使用痕跡があったとしても、予備のトイレを用意しておけば、カーペットや布団の上よりもそちらを選んでくれる確率が高まります。
 とにかく使用痕跡のあるトイレを猫に使わせないというのが大原則です。臭いはなんとか我慢できるけれども、汚れているのは我慢できないという点において、人間と猫は似ているのではないでしょうか。公衆トイレに入ったはいいものの、便器の周辺に水たまりや山盛りの何かが残っていると、顔をしかめつつ別の場所を探しますよね? 猫のトイレのしつけ 猫のトイレの失敗