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放し飼いが招く猫の死

 「殺処分ゼロ」というスローガンは、人の手によって行政機関に持ち込まれ、ガス室の中で殺される猫たちの数をなくしましょうという意味合いでよく使われます。しかし仮に行政が発表する殺処分の数がゼロになったとしても、猫にまつわるすべての問題が解決するわけではありません。屋外で人知れず死を迎えている負傷動物や路上死動物の数を減らさない限り、猫好きたちの心が休まる日はなかなか来ないでしょう。

負傷動物としての猫

 犬や猫の殺処分を話題にする時、参照データとして環境省が公開している「犬・猫の引取り」という項目が引用されることが大半です。しかしその下に目立たない形で「負傷動物」という項目が設けられていることも忘れてはいけません。負傷動物とは、屋外で病気にかかったり怪我をした動物のことで、動物愛護法の第36条では自治体や市民に以下のような義務(努力義務)が定められています。
負傷動物等の発見者の通報措置
●道路、公園、広場その他の公共の場所において、疾病にかかり、若しくは負傷した犬、猫等の動物又は犬、猫等の動物の死体を発見した者は、速やかに、その所有者が判明しているときは所有者に、その所有者が判明しないときは都道府県知事等に通報するように努めなければならない。
●都道府県等は、前項の規定による通報があったときは、その動物又はその動物の死体を収容しなければならない。動物の愛護及び管理に関する法律
 上記した法律により、都道府県等は市民からの通報によって負傷動物として収容した犬や猫の数をカウントしなければなりません。そしてその数を合計したものが、以下に示す環境省の「負傷動物」というデータです(→出典, 棒グラフの赤い部分は殺処分数)。すべての人が負傷動物を通報するわけではなく、また動物自身が人目を避けて隠れているケースもあるため、実際の数は報告数より更に増えるものと推測されます。
負傷動物データ(平成27年)
平成27年度における負傷動物として収容・殺処分された犬と猫の棒グラフ
  • 負傷犬の収容数=974頭
  • 負傷犬の殺処分数=476頭
  • 負傷猫の収容数=12,387頭
  • 負傷猫の殺処分数=9,278頭
 平成27年度(2015年4月~2016年3月)、負傷動物として収容された猫の総数が「12,387頭」で、そのうち「9,278頭」が殺処分されていることがお分かりいただけるでしょう。これは同年度に引き取りの結果として殺処分に至った猫「67,091頭」のおよそ13.8%に相当する数です。処分数の中には病気や怪我の結果として保管中に死亡してしまった数まで含まれているものの、収容動物に手厚い治療を施すという状況は考えにくいことから考えると、苦悶のうちに死んでいったであろう事は想像に難くありません。
 また引き取りの結果として殺処分された猫のうち、離乳前の子猫が占める割合は65%(44,068/67,091頭)という高値だったのに対し、負傷の結果として殺処分された猫の中で子猫が占める割合はわずか34%(3,174/9,278頭)にとどまっています。負傷動物に成猫が多いという事実は、子猫よりも身体能力が高く行動範囲も広い成猫のほうが、より交通事故に遭って負傷する危険性が高いことを物語っているのではないでしょうか。 負傷動物として収容される猫においては成猫の割合が高い
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路上死動物としての猫

 「殺処分数」や「負傷動物数」とは違い、全く数字に表れていないものとして「路上死」があります。これは交通事故や病気により屋外で死亡した後、処理された動物たちのことです。動物愛護法の36条第2項では「犬、猫等の動物の死体を発見した者は、速やかに、その所有者が判明しているときは所有者に、その所有者が判明しないときは都道府県知事等に通報するように努めなければならない」と定められています(→出典)。しかし保健所などに連絡をしても、死体の処理は道路の管理機関やゴミ回収業者に回されるというパターンがほとんどです。結果として、毎年どのくらいの犬や猫が路上で死んでいるのかを正確に把握していない自治体も中にはあります。

路上死猫の実データ

 実際の所、いったいどのくらいの猫が毎年路上で死んでいるのでしょうか?データは限られていますが、いくつかヒントになる数字があります。以下はその一例です。

沖縄県の路上死猫データ

 2016年4月の「沖縄タイムス」内の記事によると、沖縄本島で2015年度、車に轢(ひ)かれるなどして死んだ猫の数が2,684件に上ったといいます。猫の死体の回収件数は、国道が1,334件、県道が1,350件で、離島や本島の市町村道の回収件数を加えると、実数はさらに増える公算が大きいとのこと。このデータを沖縄県における直近2014年度の猫の殺処分数2,679頭と比較してみると、ほぼ同程度、もしくはそれ以上ということになります。
 沖縄県内で猫の轢死(れきし)が多い理由としては、放し飼いが当たり前という風土のほか、エサだけ与えてあとは放置するというあいまいな飼い方をしている人が多いためだと推測されています。 沖縄タイムス(2016年4月12日)

京都府の路上死猫データ

 平成26年4月、京都府健康福祉部の調査チームは府全域25市町村に対して動物の死体処理に関するアンケート調査を行い、1年間で路上死する猫の正確な数を把握しようと試みました。その結果、死亡数が判明した8つの市町村のデータから推計し、京都府全体ではおよそ6,800頭もの猫が路上で死亡している可能性が浮かび上がってきたと言います。また飼い主からの引き取り頭数が多いほど、路上死する猫の数も多くなるという正の相関関係が認められたとも。具体的には、引き取り数の10倍程度が路上死しているかもしれないというものでした。 獣医畜産新報(2016, No12, P900)

大分市の路上死猫データ

 大分市は全国的にも珍しく、路上死した動物の数を統計的にデータ化して公開しています。以下は、平成22年度から25年度までの期間、市が行った猫の殺処分数と市が処理した路上死体数を比較したものです。どの年を取ってみても、路上死の数が殺処分数の2.8~3.6倍になっていることがひと目でわかります。 大分市ホームページ
殺処分数:路上死数
大分市における猫の殺処分数と路上死数の比較一覧グラフ
  • H22年度→922頭:2,561頭
  • H23年度→884頭:2,585頭
  • H24年度→905頭:2,757頭
  • H25年度→725頭:2,631頭

路上死猫の推計数

 沖縄県や京都府、そして大分市の実データと平成27年度の行政データから、日本全国で路上死している猫の数を推計してみましょう。まず沖縄のデータを転用すると、路上死数は少なく見積もって殺処分される猫と同じ67,091頭となります。また京都のデータを転用すると、飼い主からの引取数14,061頭の10倍に相当する14万頭となります。さらに大分市のデータを転用すると、路上死数は67,091頭を2.8~3.6倍した19万~24万頭という膨大な数になります。7万~24万と3倍以上の開きはあるものの、どの数値を取ってみてもにわかには信じがたい途方もない数です。しかし否定するデータがない限り、こう見積もるしかありません。 日本国内で人知れず路上死している猫の数は、殺処分数の3倍に達する可能性あり
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猫を不慮の死から防ぐ方法

 屋外で人知れず死を迎える猫たちの悲しい実態が見えてきましたが、負傷や死の原因が病気でも、猫同士のケンカによる怪我でも、人間による虐待でも、路上での交通事故でも、確実に予防する方法が1つだけあります。それは「猫を屋外に出さない」ことです。
 路上死する猫に含まれるのは、飼い主のいない野良猫、地域で管理されている地域猫、そして外を自由に出歩ける放し飼いの猫です。正確な数字すらわかっていない野良猫すべてに飼い主を見つけて安全を確保してあげることは至難の業でしょう。また地域猫活動によって猫の生活範囲が分かっていたとしても、自由気ままに行動する猫を交通事故から完全に防ぎ切ることはできません。一方こうした猫たちとは違い、ただ単に放し飼いにされている猫の安全を守ることは比較的簡単ではないでしょうか。やり方は極めて単純で、飼い主が猫の放し飼いをやめて完全室内飼いにするだけです。以下では、完全室内飼いする際に役立つ情報をご紹介します。
完全室内飼いの手引
猫を不慮の事故から守る最も確実な方法は「完全室内飼い」しかない  放し飼いを正当化する人の中には「猫の自然な行動を促している」と主張する人がいます。しかし車に轢かれる事は猫の自然な行動範囲には入っていないでしょう。また「猫を閉じ込めているようでかわいそう」と主張する人がいます。しかしバンパーで頭を砕かれてカラスに脳みそを食べられるよりかわいそうなことなどあるのでしょうか?
 猫を外に出す事は、猫自身の死亡率を高めると同時に、猫を避けようとした運転手による交通事故の危険性も高めてしまいます。負傷動物と路上死する動物の現状をしっかりと把握し、そのデメリットを何となくではなくリアルに理解することが重要です。
 大阪市立環境科学研究所などが行った調査によると、大阪市内で屋外生活している猫が、1ヶ月のうちに交通事故などで死亡して回収される確率が4.24%と推定されいます(→出典)。また2016年に日本のアイペット損保が公開したアンケート調査によると、犬や猫といったペットとの別れの原因のうち、およそ40%が「事故や行方不明」となっています(→出典)。一瞬何かの間違いかと目を疑ってしまいますが、交通事故などで命を落とす猫の数が殺処分数と同等~3倍超という推定値と照らし合わせると、納得せざるを得ません。
車に轢かれる猫
 以下は、車に轢かれる瞬間の猫の姿をとらえた動画です。不快ですが、猫を放し飼いすることの危険性をリアルに理解するためにあえて紹介します。轢かれるのが他人の猫や野良猫ではなく、自分の飼っている猫だと想像してみてください。「猫を室内に閉じ込めておくのは虐待だ!」と言えるでしょうか? 元動画は⇒こちら
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