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猫の扁平上皮ガン~症状・原因から予防・治療法まで

 猫の扁平上皮ガン(へんぺいじょうひがん)について病態、症状、原因、治療法別に解説します。病気を自己診断するためではなく、あくまでも獣医さんに飼い猫の症状を説明するときの参考としてお読みください。なお当サイト内の医療情報は各種の医学書を元にしています。出典一覧はこちら

猫の扁平上皮ガンの病態と症状

 猫の扁平上皮ガンとは、生体の表面を覆っている上皮の一種である扁平上皮がガン化した状態のことです。
猫のガンの種類~扁平上皮ガン・メラノーマ・線維肉腫  皮膚にできるガンには、メラニン細胞がガン化した「メラノーマ」、線維芽細胞がガン化した「線維肉腫」などがありますが、「扁平上皮ガン」と言った場合は、皮膚の最上部を占めている扁平上皮細胞がガン化した状態を指します。
 扁平上皮ガンは、皮膚が存在している場所であればどこにでも発生する可能性を秘めています。しかし種によってある程度好発部位が固定されており、猫においては「鼻の表面」、「耳」、「まぶた」、「唇」、「歯肉や舌」(口腔)、「肺」などに多いとされています。 猫における扁平上皮ガンの好発部位
 扁平上皮ガンの症状は、発生した部位によってそれぞれ違います。具体的には以下です。
猫の扁平上皮ガンの主症状
  • 口腔 口の中の組織としては、舌と歯肉に好発します。数週間という短期間でただれや潰瘍を引き起こすのが特徴です。好発年齢は10歳以降で、「舌小体」と呼ばれる舌の裏側にある部位にできやすいとされます(→口腔ガン)。
  • 鼻の表面 鼻の表面に発生した場合は、鼻のできもの、鼻出血、鼻汁、くしゃみといった症状を示します。できものはかさぶたのようなものから始まり、徐々に増殖してグジグジの「びらん」を形成します。好発年齢は8~12歳で、白っぽい猫が長時間紫外線に暴露された場合に多く発症します。
  • まぶた・くちびる・耳介 まぶた・くちびる・耳介といった顔面の皮膚に発生した場合は、できたての擦り傷に似た皮膚病変が見られます。この病変の特徴は、時間とともに治ることはなく、逆に数ヶ月~数年かけて徐々に大きくなっていくという点です。好発年齢は9~12歳とされています。
  •  肺に発生した場合は、乾いた咳、呼吸困難、元気がない、体重減少、喘鳴(ゼーゼー)、喀血(咳と共に血を吐く)といった症状を示します。発生部位の多くは左肺後葉で、好発年齢は12歳以降です。
  • その他 病変部が多発性の場合は特に「ボーウェン病」(多発性上皮内扁平上皮ガン)とも呼ばれます。猫の耳介~眼瞼に発症した扁平上皮癌 この病気では、痛みを伴うかさぶたのような皮膚病変が2~30ヶ所に多発し、中心部は皮膚の表面を貫いて潰瘍化します。皮膚への色素沈着や病変部の脱毛も特徴の一つです。好発部位は頭~首~肩~前足~肉球で、11歳を超えた老齢のメスに多いとされます。

猫の扁平上皮ガンの原因

 猫の扁平上皮ガンの原因としては、主に以下のようなものが考えられます。予防できそうなものは飼い主の側であらかじめ原因を取り除いておきましょう。
猫の扁平上皮ガンの主な原因
  • 紫外線(?)  皮膚の扁平上皮ガンは、色素が薄い白系の猫の、被毛が薄い部分(鼻・耳介)に発症しやすいことから、紫外線への露出が一因だと考えられます。
  • 環境(?)  犬の肺や扁桃の扁平上皮ガンは、都会に多く発症するといわれていますので、猫においても何らかの環境因子がガンの発生に関与しているのかもしれません。具体的には、慢性的なタバコへの暴露、化学薬品、スモッグといった可能性が考えられます。
  • 不明 扁平上皮ガンの原因は、多くの場合不明です。

猫の扁平上皮ガンの治療

 猫の扁平上皮ガンの治療法としては、主に以下のようなものがあります。
猫の扁平上皮ガンの主な治療法
  • 手術療法  ガンが小さく、猫に体力がある場合は、外科手術によってがん細胞を除去してしまいます。肺の場合は肺葉の切除、鼻の場合は鼻甲介の切除、耳の場合は耳介の切除などです。ただし、舌の付け根にある扁桃に腫瘍ができた場合は転移性が高く、仮に手術しても1年以上生きられるケースが10%に満たないため、外科的な切除以外の方法が優先されます。
  • 化学療法・薬物療法  ガンが進行して外科的に切除できない場合や、猫に体力がない場合は手術療法が見送られ、抗がん剤治療などが施されます。また外科手術後の補助療法としても行われます。
  • マッサージ 飼い主が日頃から、病気の早期発見を兼ねてマッサージしてあげていると、いち早く病変を見つけることができます。猫のマッサージなどを参考にしながら、体表に異常はないか、コリコリした部分はないかなどを注意深くモニターするようにします。なお見つかったコリコリがもしガンだった場合、むやみに触っているとリンパ管を通して細胞が広がってしまう危険性があります。「怪しい」と思ったらすぐにかかりつけの獣医さんに相談した方がよいでしょう。猫のマッサージ