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猫の急性腎不全

 猫の急性腎不全(きゅうせいじんふぜん)について病態、症状、原因、治療法別にまとめました。病気を自己診断するためではなく、あくまでも獣医さんに飼い猫の症状を説明するときの参考としてお読みください。なお当サイト内の医療情報は各種の医学書を元にしています。出典一覧はこちら。また猫の採尿と尿検査についてはこちらをご参照ください。

猫の急性腎不全の病態と症状

 猫の急性腎不全とは、腎臓が突然機能不全に陥り、体にとって有害な物質を体外に排出できなくなった状態を言います。慢性腎不全では数ヶ月~数年かけて徐々に腎臓の機能が低下していきますが、急性腎不全の場合はたった1日で急激に悪化します。
 猫の急性腎不全の主な症状は以下です。多くの場合、何の前触れもなく突然出現します。
猫の急性腎不全の主症状
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猫の急性腎不全の原因

 猫の急性腎不全の原因としては、主に以下のようなものが考えられます。予防できそうなものは飼い主の側であらかじめ原因を取り除いておきましょう。
猫の急性腎不全の主な原因
急性じん不全の3大要因~腎性・腎前性・腎後性の模式図
  • 腎臓そのものの異常  腎臓自体が障害されたために起こる急性腎不全で、「腎性急性腎不全」とも呼ばれます。具体的には急性糸球体腎炎ネフローゼ症候群のほか、薬物、毒物、閉塞などです。
  • 腎臓への血流悪化  腎臓自体は正常であるにもかかわらず、腎臓に流れ込む血流が悪化したために生じた急性腎不全で、「腎前性急性腎不全」とも呼ばれます。具体的には出血、大量の下痢、脱水、ショック、心不全心筋症、血管収縮薬や拡張薬の過剰な投与、長時間の麻酔、熱中症などです。
  • 排尿の停滞  腎臓でつくられた尿を体外へ排泄するための経路が閉塞したために発症する急性腎不全で、「腎後性急性腎不全」とも呼ばれます。具体的には下部尿路症候群に伴う尿管、膀胱、尿道の炎症や閉塞などです。
 数ある急性腎不全の原因の中で、確実に予防が可能なのは「腎毒性物質」と呼ばれるものです。これは腎臓に作用して毒性を発揮し、機能不全に陥れるもの全般を指します。具体的には抗生物質、化学療法薬(抗がん剤)、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、造影剤、重金属、昆虫やヘビなどによる生物毒、ブドウ、ユリ科植物などいろいろです。 腎臓の機能を傷害する「腎毒性物質」  腎毒性物質の中でも報告例が多いのはエチレングリコールによる急性中毒です。エチレングリコールは緑色の液状物質で、不凍液の原料として広く使用されています。誤って飲み込んでしまうと、消化管から急速に吸収されて肝臓に移り、グリコアルデヒド、グリコール酸、グリオキシル酸、シュウ酸といった物質に分解されます。このようにして体内にできた腎毒性物質は代謝性アシドーシスを引き起こすほか、腎尿細管上皮細胞を破壊して急性腎不全を招きます。中毒の中で最も致死率が高く、猫における致死量は1.4ml/kg程度です。治療しなかった場合、12~24時間程度で腎不全を起こして尿の量が減り、72~96時間で完全に無尿となります。犬では8時間以内に治療すれば予後良好ですが、猫では3時間がリミットです。
エチレングリコールを道路に放置するのは厳禁  エチレングリコール中毒が多い理由としては、物質の入手のしやすさと、甘みがついていること、そして人間の側の毒性に対する知識不足が挙げられます。アメリカにおいては不凍液に苦みを付けようという動きがあるものの、日本においては依然として甘みがついたままです。間違って口に入れても途中で吐き出されることがないため、特に冬場は安易に道路わきにまき散らさないなどの配慮が必要となります。
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猫の急性腎不全の治療

 猫の急性腎不全の治療法としては、主に以下のようなものがあります。多くの場合は入院治療が必要です。
猫の急性腎不全の主な治療法
  • 対症療法  まずは症状の軽減を目的とした治療が施されます。例えば高窒素血症の改善を目的に、輸液、ホルモン剤投与、腹膜灌流(ふくまくかんりゅう=腹の中に灌流液を入れて1時間位してから回収する)、血液透析(腎臓を模した機械に血液を流す)、窒素化合物を吸着させる薬剤の投与などの治療が施されます。
  • 栄養補給  吐き気が治まったタイミングで炭水化物や脂肪など、タンパク質以外の栄養素を補給します。吐き気が続いている場合は静脈カテーテルを用いて非経口的にエネルギーを送り込みます。
  • 基礎疾患の治療  別の疾病によって急性腎不全が引き起こされている場合は、それらの基礎疾患への治療が合わせて施されます。
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