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猫の流涙症(涙やけ)~症状・原因から予防・治療法まで

 猫の流涙症(りゅうるいしょう)について病態、症状、原因、治療法別に解説します。病気を自己診断するためではなく、あくまでも獣医さんに飼い猫の症状を説明するときの参考としてお読みください。なお当サイト内の医療情報は各種の医学書を元にしています。出典一覧はこちら

猫の流涙症の病態と症状

 猫の流涙症とは、常に目の周辺に涙があふれている状態です。
 涙の流出は主に目頭から起こり、猫の目の下は常に涙で濡れ、汚れた状態になります(涙やけ)。後天的な理由が大部分ですが、ペルシャなど鼻ぺちゃ顔(peki face)を特徴とする特定猫種では、先天的な要因の方が大きくなります。これは、つぶれた顔が涙の流れを妨げてしまうからです。
流涙症と涙やけ~慢性的に涙が流れ、鼻の横にしみのような痕跡を残している
 猫の流涙症の症状としては以下のようなものが挙げられます。
流涙症の主症状
  • 涙が出る
  • 目やにが増える
  • 涙やけができる
  • 鼻の横の湿疹
  • 湿疹部をこすろうとする

猫の流涙症の原因

 猫の流涙症の原因としては、主に以下のようなものが考えられます。予防できそうなものは飼い主の側であらかじめ原因を取り除いておきましょう。なお文中に出てくる解剖学的な用語は、以下に示した涙の排水システムをご参照ください。
流涙症の主な原因
猫犬の涙の排水システム
  • 涙の過剰分泌 涙の排水システム自体は正常であっても、涙の産生量が異常に多いと、排出しきれなかった涙が目頭に溜まってしまいます。多くの場合、結膜が赤くなります。
     涙の産生量を増やす要因としては、ゴミや毛など目の中の異物、眼瞼内反症による持続的な眼球への刺激、結膜炎角膜炎眼瞼炎といった目の炎症、眼輪筋の衰えによる瞬きの減少などが挙げられます。
  • 排水システムの目詰まり 涙の産生量は正常であっても、それを体外に出す排水システムに問題があると、排出しきれなかった涙が目頭に溜まってしまいます。多くの場合、結膜は白いままです。
     排水システムのトラブルとしては、鼻炎副鼻腔炎による鼻涙管への圧迫、鼻腔や上顎骨周辺の腫瘍、涙嚢(るいのう)の炎症、涙小管の炎症、排水する穴が生まれつき閉じているなど先天的奇形(無孔涙点)などが挙げられます。またペルシャヒマラヤンなど、鼻ぺちゃ顔の品種においては、顔面の骨格が鼻涙管を押しつぶしてしまうため、どうしても涙が詰まりやすくなります。

猫の流涙症の治療

 猫の流涙症の治療法としては、主に以下のようなものがあります。
流涙症の主な治療法
  • 異物の除去  目の中に入った異物に反応して涙が分泌されている場合は、異物事体を取り除きます。ゴミが原因の場合は目薬などで洗い流し、毛が原因の場合は、目周辺の無駄毛をカットします。
  • 基礎疾患への治療  結膜炎角膜炎眼瞼内反症鼻炎副鼻腔炎などが原因となっている場合は、まずそうした基礎疾患への治療が施されます。
  • 点眼治療 目頭にネバネバした目やにがたまり、涙に臭いがついて涙嚢炎が疑われる場合は、抗生物質を含んだ目薬を点眼します。抗生物質を選ぶ際は事前に細菌培養をして原因菌の当たりをつけ、少なくとも3週間は継続する必要があります。
  • 涙小管洗浄  麻酔をかけ、カニューレと呼ばれる器具で洗浄し、目詰まりを改善します。
  • 外科手術 生まれつき涙を通す穴が開いていないなど、先天的な奇形が原因である場合は、外科手術によって人為的に穴を開通することがあります。また鼻に開口する部分での閉塞が見られる場合は、涙嚢と鼻腔を外科的に吻合するという手術もあります。2015年にはアメリカのUCデイヴィス校付属動物病院が、「鼻涙管ステント留置術」と呼ばれる新しい手術方法を開発しました。これは「ステント」と呼ばれる型崩れしにくい金属製チューブを鼻涙管に設置し、閉塞していた排水システムを半永久的に回復するというものです。詳しくはこちらの記事をご参照ください。