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猫の重症筋無力症~症状・原因から予防・治療法まで

 猫の重症筋無力症(じゅうしょうきんむりょくしょう)について病態、症状、原因、治療法別に解説します。病気を自己診断するためではなく、あくまでも獣医さんに飼い猫の症状を説明するときの参考としてお読みください。なお当サイト内の医療情報は各種の医学書を元にしています。出典一覧はこちら

猫の重症筋無力症の病態と症状

 猫の重症筋無力症とは、神経から筋肉に対する指令がうまく伝わらず、筋肉の疲労や脱力がおこる状態のことです。
 脳からの「動け」という指令は、運動神経を通じて神経の末端まで来ると、そこから「アセチルコリン」と呼ばれる物質を放出し、筋肉を収縮させます。しかし重症筋無力症においては、筋肉の側に付いているアセチルコリン・レセプターに異常があるため、脳からの指令をうまく受け取ることができません。その結果、「すぐに疲れてしまう」、「なかなか力が入らない」といった支障をきたしてしまいます。 神経筋接合部とアセチルコリンの模式図  猫の重症筋無力症の症状としては以下のようなものが挙げられます。人間でも発症する難病であり、日本では厚生労働省により特定疾患に指定されています。
猫の重症筋無力症の主症状
  • 筋力の低下
  • 食べるのが遅い
  • まぶたが落ちて眠そうな顔
  • ふらふら歩く
  • 朝よりも夕方の方が症状が重い
  • 食道アカラシア

猫の重症筋無力症の原因

 猫の重症筋無力症の原因としては、主に以下のようなものが考えられます。予防できそうなものは飼い主の側であらかじめ原因を取り除いておきましょう。
猫の重症筋無力症の主な原因
  • 遺伝  遺伝の要因が大きいとされます。先天的に発症した場合は、アセチルコリンレセプターの欠損、後天的に発症した場合は、免疫系統によるレセプターの破壊が原因です。後者のパターンは、本来なら体内に入ってきた異物を攻撃するはずの免疫システムが、なぜか自分の筋肉を攻撃することで発症します。
  • 腫瘍(?) 胸腺に腫瘍がある場合に発症しやすくなると言われています。

猫の重症筋無力症の治療

 猫の重症筋無力症の治療法としては、主に以下のようなものがあります。
猫の重症筋無力症の主な治療法
  • 投薬治療  多くの場合、適切な投薬によって症状が寛解します。具体的にはコリンエステラーゼ阻害剤、免疫抑制薬,コルチコステロイドなどです。
  • 誤嚥性肺炎を防ぐ  重症筋無力症は高頻度で食道アカラシアを併発します。食べ物の誤嚥(ごえん)によって生じる肺炎を防ぐため、食器を高い位置に固定し、食後10分程度は頭が下がらないようにします。下を向けないような狭いゲージの中に猫を入れて飼い主が監督するなどの配慮も重要です。