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猫の肝性脳症~症状・原因から予防・治療法まで

 猫の肝性脳症(かんせいのうしょう)について病態、症状、原因、治療法別に解説します。病気を自己診断するためではなく、あくまでも獣医さんに飼い猫の症状を説明するときの参考としてお読みください。なお当サイト内の医療情報は各種の医学書を元にしています。出典一覧はこちら

猫の肝性脳症の病態と症状

 猫の肝性脳症とは、肝臓の機能不全により血液の成分が変化し、脳に障害を与えてしまった状態を言います。
 肝性脳症は従来、肝機能低下により血液中にアンモニアなどが増え、発症すると考えられてきました。しかし、血中アンモニア濃度と症状の程度は必ずしも相関しないため、アンモニア以外にもメルカプタン、スカトール、インドール、短鎖脂肪酸、芳香族アミノ酸なども関わっているのではないかと推測されています。
 猫の肝性脳症の症状としては以下のようなものが挙げられます。
猫の肝性脳症の主症状
  • 発育不全
  • 体重減少
  • 食欲不振
  • 嘔吐
  • 腹水(おなかがふくらむ)
  • 水を大量に飲む
  • ふらふら歩く
  • けいれん
  • 昏睡

猫の肝性脳症の原因

 猫の肝性脳症の原因としては、主に以下のようなものが考えられます。予防できそうなものは飼い主の側であらかじめ原因を取り除いておきましょう。
猫の肝性脳症の主な原因
  • 肝不全  肝性脳症という名称が示すとおり、原因は肝臓の機能不全です。代表的なものとしては 肝硬変、門脈シャント(門脈と大静脈がつながっている状態)などが挙げられます。
 肝性脳症の原因として多いのが、先天的、後天的な理由で発症する「門脈体循環シャント」と呼ばれる疾患です。これは、主に内臓からの静脈血が集合する「門脈」(もんみゃく)と呼ばれる血管の一部が、主に四肢からの静脈血が集合する「後大静脈」(こうだいじょうみゃく)と呼ばれる太い血管に連絡路(シャント)を作った状態を指します。門脈に集まる門脈血は、肝臓による解毒作用を受けていないため、アンモニアを始めとする体に有害な成分を高濃度で含んでいます。この血液が後大静脈に乗って全身を巡ってしまうと、その一部が脳にまで到達し、肝性脳症を引き起こしてしまうというわけです。 肝性脳症の原因として多い門脈体静脈シャントの模式図

猫の肝性脳症の治療

 猫の肝性脳症の治療法としては、主に以下のようなものがあります。
猫の肝性脳症の主な治療法
  • 基礎疾患の治療  肝性脳症を引き起こしている肝臓の異常に対する治療が施されます。門脈体循環シャントがある場合は、外科手術によって血液の流れを修復します。
  • 投薬治療  体内でアンモニアが生成されにくくなる薬が投与されます。
  • 食事療法  まず絶食させてて腸内を洗浄し、体内の毒物をなるべく除去します。その後、アンモニア等が生成されにくい低タンパクの食事内容に切り替えます。