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猫のキー・ガスケル症候群(自律神経異常症)~症状・原因から予防・治療法まで

 猫のキー・ガスケル症候群について病態、症状、原因、治療法別に解説します。病気を自己診断するためではなく、あくまでも獣医さんに飼い猫の症状を説明するときの参考としてお読みください。なお当サイト内の医療情報は各種の医学書を元にしています。出典一覧はこちら

猫のキー・ガスケル症候群の病態と症状

 猫のキー・ガスケル症候群(Key-Gaskell syndrome)とは、原因不明の自律神経失調症のことです。
 自律神経(じりつしんけい)とは「交感神経」と「副交感神経」が対になって機能している神経系で、「発汗」、「立毛」、「消化器の運動」といった、意志ではコントロールできない部分の体調管理を担っています。この病気は、1982年にイギリスで初めて報告された後、ヨーロッパ、アメリカなどでも散見されるようになりました。症状としては以下のようなものが挙げられます。
猫のキー・ガスケル症候群の主症状
  • 元気がない
  • 食欲不振
  • 便秘
  • 食後の嘔吐
  • 涙の分泌減少とドライアイ
  • 唾液の分泌減少と口臭の悪化
  • 散瞳(瞳孔が開きっぱなし)
  • 瞬膜の露出
  • 腹部の膨張
  • 食道アカラシア
  • 徐脈

猫のキー・ガスケル症候群の原因

 猫のキー・ガスケル症候群の原因としては、主に以下のようなものが考えられますが、不明な部分が多いため、今後の研究が待たれます。なお性別と発症率に因果関係はないとされています。
猫のキー・ガスケル症候群の主な原因
  • 化学物質への中毒(?)
  • ボツリヌス菌の産生毒(?)
 2017年、イギリスやスコットランドにある3つの異なる場所からリクルートされた自律神経失調症を発症した猫合計14頭を対象とした原因調査が行われました。発症猫と生活環境および食事内容を共有している「同居猫」5頭、発症猫と生活環境も食事内容も異なる「隔離猫」6頭を合わせて徹底的に比較した結果、結局「原因はよくわからない。未知の毒物もしくは生体異物が関わっている可能性が高い」という曖昧な結論に至っています。詳しくはこちらの記事をご参照ください。

猫のキー・ガスケル症候群の治療

 猫のキー・ガスケル症候群の治療法としては、主に以下のようなものがあります。予後は非常に悪く、仮に回復したとしても自律神経系に何らかの後遺症が残るとされます。
猫のキー・ガスケル症候群の主な治療法
  • 対症療法  原因が不明なため、必然的に今ある症状に対する場当たり的な治療がメインとなります。たとえば涙の分泌が減少してドライアイになっている場合は点眼、食道アカラシアで食後に嘔吐してしまう場合は、食器をやや高い場所においてエサを食べさせる、食欲不振で脱水気味の場合は輸液や強制給餌などです。
  • 投薬治療  自律神経系に働きかける薬が投与されることがあります。しかし効果に関してはあまり期待できません。
 この病気が多発していた猫の繁殖施設において、食事内容を変更し、施設内を消毒し、種雄を交代してからは発症がピタッと止まったそうです(→詳細)。しかし残念ながら、上記した3つの介入のうち一体どれが効果的だったのかは分かっていません。未知の神経毒が関わっているという可能性を考慮し、ただ単に病状を見守るのではなく、原因としてありえそうな部分から少しずつ手を加えていくのが妥当だと考えられます。