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カプノサイトファーガカニモルサス感染症~症状・原因から治療・予防法まで

 人獣共通感染症の内、カプノサイトファーガカニモルサス感染症について病態、症状、原因、治療法別に詳しく解説します。人にも犬猫などのペットにも感染する病気ですので、予備知識として抑えておきましょう。なお当サイト内の医療情報は各種の医学書を元にしています。出典一覧はこちら

C.カニモルサス感染症の病態と症状

 カプノサイトファーガカニモルサス感染症とは、カプノサイトファーガ・カニモルサス(Capnocytophaga canimorsus)という細菌を原因とする感染症です。
 免疫機能の低下した人において重症化する傾向のある、いわゆる日和見感染症(ひよりみかんせんしょう)の1つに数えられています。菌は犬や猫の唾液に常在しているため、ペットを飼っている人は常に接触する可能性があります。 カプノサイトファーガカニモルサスの培養コロニーと顕微鏡写真  カプノサイトファーガカニモルサス感染症の主な症状は以下です。犬猫は無症状ですが、人において重症化した場合、敗血症になった患者の約30%、また髄膜炎になった患者の約5%が死に至るとされています。なおリスト中に出てくる「敗血症」(はいけつしょう)とは、病原体が全身に広がって各所で炎症を引き起こした状態で、「髄膜炎」(ずいまくえん)とは、中枢神経である脳と脊髄を包み込んでいる髄膜に炎症が波及した状態のことを指します。また「播種性血管内凝固症候群」(はんしゅせいけっかんないぎょうこしょうこうぐん, DIC)とは、出血した場所だけに起こるはずの血液凝固反応が、なぜか無秩序に全身の血管内で起こってしまう状態のことです。細い血管内において目詰まりと破裂を引き起こし、結果として複数の臓器を機能不全に陥れてしまいます。
C.カニモルサス感染症の主症状
  • 発熱
  • 倦怠感
  • 腹痛
  • 吐き気
  • 頭痛
  • 敗血症
  • 髄膜炎
  • 播種性血管内凝固症候群(DIC)

C.カニモルサス感染症の原因

 カプノサイトファーガカニモルサス感染症の原因としては、主に以下のようなものが考えられます。予防できそうなものは飼い主の側であらかじめ原因を取り除いておきましょう。
カプノサイトファーガカニモルサス感染症の主な原因
  • 噛み傷・引っかき傷  カプノサイトファーガ・カニモルサス感染症は、菌を保有した犬や猫に咬まれたり、ひっ掻かれたりすることで感染・発症します。2010年に行われた調査では、犬の74%、猫の57%がこの菌を口内に保有しているとの結果が出ています。さらに近縁種である「Capnocytophaga cynodegmi」まで含めると、犬の86%、猫の84%が保菌しているとのこと。
  • ペットとのスキンシップ 菌は犬や猫の唾液中に含まれているため、ペットとキスをしたり食器を共有するなどして唾液を体内に取り込んで感染するというパターンもあります。
 カプノサイトファーガ属(Capnocytophaga)にはこれまで8つの亜種があると考えられてきました。具体的には、犬や猫の口内に生息する2種(C.canimorsus | C.cynodegmi)と、人間の口内で検出される6種(C.gingivalis | C.granulosa | C.haemolytica | C.ochracea | C.sputigena | C.leadbetteri)です。しかし2015年と2016年、今まで知られていなかった「C.canis」と「C.stomatis」という新しい亜種が立て続けに発見されています。これらの新種は犬や猫の口の中に生息していることはわかっているものの、今のところ人間に感染したときの病原性が全くわかっていません。詳しくはこちらの記事をご参照ください。

C.カニモルサス感染症の治療

 カプノサイトファーガカニモルサス感染症の治療法としては、主に以下のようなものがあります。
カプノサイトファーガカニモルサス感染症の主な治療法
  • 投薬治療  カプノサイトファーガ・カニモルサス感染症の治療は、抗菌薬等による治療がメインとなります。噛まれた箇所に対する抗菌薬としては、ペニシリン系、テトラサイクリン系抗菌薬が一般的に推奨されています。
  • 予防  カプノサイトファーガ・カニモルサス感染症の予防は、動物との過度のスキンシップを避けること、また動物と触れあった後は必ず手を洗う習慣をつけることです。また宿主の抵抗力の低下を狙って暴れ出す日和見感染症なので、免疫力を落とさないことも予防につながります。