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猫の目・視覚

 猫の目や視覚についてまとめました。色・視力・色覚・視野など猫の見ている世界を写真付きで解説します。なお、猫の目の健康チェックは目の変化・異常を、猫の目に関わる疾患に関しては猫の目の病気をご参照ください。

猫の目の色

 猫の目は虹彩(こうさい)が大きな割合を占めており、人間でいう「白目」(眼球結膜)は見られません。虹彩とは、角膜と水晶体の間にある薄い膜で、瞳孔の大きさを調節して網膜に入る光の量を調節する組織です。「猫の目の色」と言った場合は、通常虹彩の色を指します。

猫の目の色・基本編

 猫の目の色は、おおむね以下に示した色調の範囲内に分類されます。 猫の目の色~グリーンからカッパーまでの色調スペクトラム

グリーン

猫の目の色~メラニン色素が薄い時に現れるグリーン  猫の目の緑色は、虹彩の中に緑色の色素が含まれているわけではなく、「レイリー散乱」と呼ばれるメカニズムによって作り出されています。これは、虹彩に含まれる少量のメラニン色素が、可視光線の中に含まれる長い波長を吸収することで生じる現象です。

ヘーゼル

猫の目の色~グリーンからブラウンまでのグラデーションからなるヘーゼル  ヘーゼルナッツの殻は単一色ですが、「ヘーゼル」という目の色はグリーンからブラウンのグラデーションになっています。しかしグリーンの色調が弱いため、ブラウンかカッパーに間違われることもしばしばです。メラニン色素の量は中程度です。

アンバー

猫の目の色~単一の金色からなるアンバー  アンバーとは琥珀色のことです。ヘーゼルとよく似ていますが、ヘーゼルが複数色であるのに対し、アンバーは黄色系統の単一色から成り立っています。人間においてはやや多めのメラニン色素のほか、「リポクローム」と呼ばれる色素を含んでいると考えられますが、猫においては定かではありません。

カッパー

猫の目の色~メラニン色素が濃い時に現れるカッパー  カッパーとは銅色のことです。メラニン色素を多量に含んでおり、長い波長の光と短い波長の光の両方を吸収するため、全体としては黒っぽい色調になります。しかし人間のアジア人に見られるような限りなく黒に近い色は猫では見られず、せいぜい濃い茶色程度です。

猫の目の色・特殊編

 猫の目の色は通常、グリーンからカッパーまでの範囲内に入りますが、まれに違うパターンを示すこともあります。以下はその代表例です。

ブルー

猫の目の色~メラニン色素が極めて薄い時に現れるブルー  猫のブルーの瞳は、グリーンの場合と同様「レイリー散乱」と呼ばれる現象によって生み出されています。虹彩に含まれる少量のメラニン色素が長い波長の光を全て吸収し、残った青色だけが人間の目にとらえられます。これはちょうど空気中を浮遊している細かい粒子が光を散乱し、空が青く見えるのと同じ現象です。つまり「瞳の青は空の青」ということです。
 猫においては青い瞳に関連した遺伝子が4つ確認されており、その多くは遺伝的疾患とも結びついています。具体例としては内斜視(シャム)や聴覚障害(単一ホワイト)などです。しかしオホサスレスのブルーを生み出している遺伝子だけは別で、今のところ遺伝的疾患との明確な関連性は確認されていません。
キトゥンブルー
子猫の時にだけあらわれる期間限定のキトゥンブルー 生まれて間もない子猫の場合、虹彩に色素が沈着していないことが多く、青目に見えることがあります。これを特にキトゥン・ブルー(Kitten Blue、「子猫の青」の意)といい、生後23日齢くらいから虹彩に色素がつき始め、徐々に本来の眼の色になっていきます。

レッド

猫の目の色~メラニン色素が欠乏したときに現れるレッド(赤目)  レッドとは赤目のことで、メラニン色素を産生できない「アルビノ」と呼ばれる突然変異種において見られます。メラニン色素をほとんど含まないため、可視光線がすべて反射されてしまいます。目が赤く見えるのは、フラッシュ付きで写真を撮った時に生じる「赤目現象」と同じもので、眼球の奥にある血管が浮き出たものです。なお、ウサギの赤い目も同じメカニズムで発生しています。

オッドアイ

猫の目の色~左右で目の色が違うオッドアイ  オッドアイ(Odd eye)とは、一頭の個体が複数の目の色を持っている状態のことです。日本では「金目銀目」と呼ばれてきましたが、正式には「虹彩異色症」(Heterochromia)といいます。最も多いのは、白い毛を持ち、右と左で色が違うというパターンです。こうした個体は青い目の側の耳に非常に高確率で障害をもっていることがわかっています。理由は、色素の欠乏に関係する遺伝子が、耳の中の「内耳」(ないじ)と呼ばれる部分の「コルチ器官」に影響を及ぼし、聴覚に重要な分泌液の量が減少してしまうからだと考えられています。
猫の目の色~1つの眼球に複数の色を持つダイクロイックアイ  また非常に稀な例としては「ダイクロイックアイ」(Dichroic eye)というものがあります。人間では「中心型虹彩異色症」(Central Heterochromia)、もしくは「扇型虹彩異色症」(Sectral Heterochromia)と呼ばれるもので、1つの眼球の中に複数の色が混在しているという状態です。ヘーゼルに見られるような漠然としたグラデーションではなく、明確に区分できる2つの色から成り立っています。「中心型」の場合は虹彩の周辺部と中心部で違う色を成し、「扇型」の場合はまるでカットしたピザのように、虹彩の一部分だけが違う色を示します。
 なお、生まれつきではなく、後天的に眼球の一部が変色した場合は、ダイクロイックアイではなく角膜炎の可能性がありますので、獣医さんに相談しましょう。 猫の角膜炎
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猫の瞳孔

猫の眼球内における瞳孔の位置  猫の瞳孔(どうこう)は、ちょうどカメラの絞りに相当する部分です。私たち人間や犬の瞳孔が丸く開閉(かいへい)するのに対し、猫のそれは縦に細長く開閉します。この長円瞳孔(ちょうえんどうこう=elliptical pupil)という構造は、円形の瞳孔よりもすばやく開閉できると同時に、より大きく開くこともできるという点が特徴です。そのため、眼球に入ってくる光の量を微調整するのにとても役立ちます。
 猫の長円瞳孔を調整しているのは、目の色を作り出している虹彩(こうさい)の中を走っている「瞳孔括約筋」(どうこうかつやくきん)という小さな筋肉です。犬や人間の瞳孔括約筋は円形をしており、収縮すると、ちょうど巾着袋の口を締めるように丸い形を保ったまま締まっていきます(下図左側)。一方、猫の瞳孔括約筋は上下に長くなっており、収縮すると、ちょうど輪にしたベルトの両端を上下に引き絞るように、縦長に締まっていきます(下図右側)。猫の瞳孔がスリット状に細くなるのは、こうした特殊な形をした筋肉があるためです。なお、細くなった瞳孔を再び真ん丸に開くのは、主として左右に付着している「瞳孔散大筋」(どうこうさんだいきん)という筋肉です。 犬・人間と猫の瞳孔括約筋比較模式図  瞳孔の幅は、平均すると最大で14ミリメートル、最小では1ミリメートル以下、面積は最大で160平方ミリメートルです。対して人間の瞳孔は、最大幅が8ミリメートル、最小幅が2ミリメートル、最大面積が50平方ミリメートル程度ですので、猫の目はずいぶんと大きく変化することがわかります(Barkley, 1976)。目に入ってくる光の量を自動的に調節する瞳孔反射が完成するのは、目が開いてから2~3日後ですので、それまでは光源から顔を背けたり、前足で目を覆うようなしぐさが見られます。 最大に開いたときと最小に閉じたときの猫の瞳孔比較写真  瞳孔を小さくする瞳孔括約筋は、リラックスしたときに優位になる「副交感神経」(ふくこうかんしんけい)の支配を受けています。一方、瞳孔を大きくする瞳孔散大筋は、緊張したときに優位になる「交感神経」(こうかんしんけい)の支配を受けています。これらの神経は自律神経系ですので、手や足を動かす神経のように自分の意志でコントロールすることはできません。瞳孔の大きさを左右するものは、主に「外界の明るさ」と「感情」です。 猫の瞳孔の大きさと外界の明度、および感情との関連性  上の写真は一般的な猫の瞳孔の大きさ示したものです。都市伝説の一つとして「かつて日本では猫の瞳孔の大きさを時間の目安にしていた」というものがありますが、様々な検証の結果、あまり実用的ではないことが分かっています。詳細は「目を見れば時間がわかる」をご覧ください。
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猫の視力

 猫の視力は2週齢から10週齢の間で16倍に増加すると言われます。これは濁っていた眼房水(がんぼうすい)が徐々に透明になるためです。以下では、子猫の視覚の発達を、日齢ごとに表したリストを示します。
猫の視覚の発達
  • 生後6日まで 4日齢ではすでに大脳皮質における視覚の電位が記録され、6日齢には網膜電図が記録可能となる。
  • 生後7~10日 目が開き始め、2~3日かけて完全に開く。目が開く時期は「暗がりで育った」、「母猫が若い」、「メス猫である」、「父猫からの遺伝」などの条件が重なったときに早くなる。瞳孔反射も発達し、自動的に瞳孔の開閉ができるようになる。
  • 生後15~25日 奥行きを認識したり、物を追ったり母猫を探すといった行動が発達する。
  • 生後25~35日 障害物を避けることができるようになる。
 目が完全に開き、脳も十分に発達した猫の視力は、私たち人間の約10分の1程度といわれています。例えば人間の目で見たとき、1ミリメートルの間隔をあけて並んでいる2本の線を「2本ある」と認識できるとします。人間の視力の10分の1しかない猫の場合、この2本の線の間隔が1ミリメートルの10倍、つまり1センチメートルまで開かないと「2本ある」とは認識できない、と言う意味です。視力の具体的な数字としては、35日齢でおおよそ0.04(1cpd)、4ヶ月齢で0.2(5cpd)、成猫で0.3(8~9cpd)程度と推測されています(出典:「猫の行動学」, インターズー)。 人間の視界と猫の視界の比較図  人間に比べて猫の視力があまりよくない要因は以下です。猫が生まれつき持っている目の構造が、視力に大きく影響しています。
猫の目はなぜ悪い?
  • 光の反射 タペタム層による光の反射が豊富なため、画像がぼやけてしまう。
  • 白黒への感度 白黒を認識する細胞である「杆状体」(かんじょうたい)が多いので、ちょっとした明暗に反応してしまい、画像の細部がぼやけてしまう。
  • 水晶体の大きさ 水晶体が大きいため自力で変形させることが難しく、調整力が人間の1/2~2/3程度まで落ちてしまう。
横から見た猫の眼球~角膜が人間に比べて大きく、ビー玉のように透けて見える  猫の目を横から見ると、ビー玉のように透けて見えますが、この独特の構造が猫の視力を悪くしている一因です。
 夜行性の猫は、少ない光をなるべく多く眼球内に取り入れるため、水晶体(すいしょうたい)と呼ばれるレンズ部分や角膜(かくまく)を発達させました。角膜は人間に比べて非常に大きく、眼球の外層30%を占めるほどです。この大きさゆえに屈曲率も大きく、やや近視傾向になってしまいます。しかしこのことは、猫にとって決して不利ではありません。猫が最も鮮明に対象を見ることができる距離は、およそ75センチくらいと言われており、これはちょうど、獲物を追いかけているときのターゲットの位置に当たります。ですから、狩りの成功率を高めるため、あえて近視になるように進化してきたとも言えそうです。なお、いくら近視傾向と言っても限界があり、25センチより近場には焦点を合わせることができないと言われています。また同じ猫でも、外育ちの猫は若干遠視傾向があるとも(Belkinら, 1977)。
 動いているものを認識する能力に関しては、対象が1秒間に25~60度移動しているときに最大限発揮されます。これはちょうど、小動物がちょこまかと動くときのスピードです。一方、ゆっくり動いている物を見分けることは苦手で、1秒間に1~3度くらいしか動かないものは、もはや「止まっている」と認識されます。
蛍光灯の光は、猫の目から見ると単なる光の点滅として見える  動きの識別能力を表す「フリッカー融合頻度」に関し、猫は人間よりも優れているというのが通説です。フリッカー融合頻度とは、目が1秒間に取り込むことのできるスナップショットの数のことで、この度数が高ければ高いほど、高速で点滅する光の間に挿し挟まれる暗闇を認識することができます。一般的に人間のそれは「60/秒」程度と言われていますが、私たちの目には連続した光として見える蛍光灯やテレビ画面も、猫の目にはチカチカした点滅に見えていると考えられます。
サッケード(saccade)
 サッケードとはすばやく動く対象をとらえるときの眼球運動のことです。猫はこのサッケードが非常に得意で、垂直運動で1秒間に250度、水平運動で1秒間に150度というスピードで目を動かすことができます。また猫は、ゆっくり動く対象に対してもサッケードで対応します。つまり目の前をカメが通り過ぎようとしているとき、猫は目を滑らかに動かすのではなく、まるでアナログ時計の秒針のように、「カチカチ」と断続的に動かすのです。
 猫のこうした特徴は、すばしっこく動く小動物を獲物にしてきたことにより発達したのでしょう。
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猫の瞬膜

目の内側からせり出している白い膜が第三眼瞼、通称「瞬膜」  猫は瞬膜(しゅんまく)、もしくは第三眼瞼(だいさんがんけん, third eyelid)と呼ばれる特殊な膜を持っています。目頭に見える白い膜のようなものがそれで、役割は眼球を異物から保護したり、涙を眼球表面に塗りつけることです。またちょうど自動車のワイパーのように、目の中に入ったゴミを目尻の方にかき集めるという機能も持っています。猫の目の中に入っていた毛がいつの間にかなくなっていたとしたら、おそらくこの瞬膜がきれいに掃除してくれたのでしょう。
 瞬膜は基本的にリラックスしているときに出るものですが、体調不良に陥っているときに出ることもありますので、飼い主は注意して見ていなければなりません。例えば瞬膜に付随して涙を産出している「瞬膜腺」(第三眼瞼腺)が炎症などで腫(は)れてしまうと、チェリーアイといって、赤く腫れた瞬膜が常に露出した状態になります。その場合はすぐ獣医さんにご相談下さい。腫脹した腺が飛び出す「チェリーアイ」と両目の瞬膜が出たまま長時間戻らなくなる「瞬膜症候群」(Haw's Syndrome)また両方の瞬膜が出たまま1日以上戻らないのは、「瞬膜症候群」(Haw's Syndrome)と呼ばれる病的な状態です。原因としては寄生虫感染症ホルネル症候群キー・ガスケル症候群などが考えられますので、この場合も獣医さんに相談しましょう。なお最後に挙げた「キー・ガスケル症候群」(Key-Gaskell Syndrome)とは、1982年にイギリスで初めて報告された後、ヨーロッパ、アメリカなどでも散見されるようになった、原因不明の自律神経失調症のことです。引き起こす原因はフードや殺虫剤の中に含まれる成分ではないかと考えられていますが、定かなことは分かっていません。全快することはまずなく、仮に回復したとしても自律神経系に何らかの後遺症が残るとされます。日本における疫学は不明ですが、猫の瞬膜が突然飛び出たままになり、なおかつ元気がない、食欲不振、便秘、食後の嘔吐、涙と唾液の分泌減少、瞳孔が開きっぱなしなどの症状がみられる場合は、最近猫が口にしたものをリストアップした上で獣医さんに相談しましょう。
瞬膜が飛び出すメカニズム
猫の第三眼瞼が飛び出すメカニズム模式図
 猫の瞬膜が飛び出すメカニズムには、「眼球後引筋」と呼ばれる人間にはない筋肉が関わっています。眼球の後方に付着したこの筋肉は、収縮することによって眼球を後方に引き寄せます。すると前方に隙間ができますので、そこに瞬膜が滑り込むという仕組みです。また猫の場合、眼球の外側に付いている「外側直筋」(がいそくちょっきん)が、薄い筋膜を通して第三眼瞼を引きずり出すという補助システムも持っています。眼球後引筋を支配しているのが、自分の意志ではコントロールできない自律神経であるのに対し、外側直筋を支配しているのは、自分の意志でコントロールできる外転神経(第六脳神経)です。犬よりも猫の第三眼瞼の方が容易に飛び出すのは、恐らくこうした二重制御があるためでしょう。
第三眼瞼(瞬膜)
鳥の瞬膜  第三眼瞼(瞬膜)は透明~半透明の膜で、爬虫類、両生類、鳥類、サメなどに見られる組織です。哺乳類ではラクダ、ホッキョクグマ、アザラシ、ツチブタ、カモノハシが完全な形の第三眼瞼を有していますが、人間では、目頭部分に痕跡が見られる程度です。霊長類では唯一「アンワンティボ」(Calabar Angwantibo)と呼ばれるロリス科の猿で見られます。
 通常のまぶたとは違い、第三眼瞼(瞬膜)は水平方向に開閉します。ビーバーやマナティなどは潜水する際、第三眼瞼(瞬膜)で眼球を水から保護する一方、アシカなどは陸上で砂から眼球を保護する際に使用します。鳥類では、ヒナにえさをやるときに母鳥が眼球をつつかれないように第三眼瞼(瞬膜)を閉じたり、あるいはハヤブサが超高速で獲物に接近する際に使用します。特殊な例としては、キツツキがくちばしで木に穴を開ける際、勢いで眼球が飛び出してしまわないよう高速で第三眼瞼(瞬膜)の開閉を行っています。ホッキョクグマは吹雪から眼球を守るために使用し、サメは獲物を襲う際に使用します。
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猫のタペタム層

タペタム層~眼球を切断して網膜を取り除いたところ  タペタム層とは、網膜の裏にある細胞層で、わずかな光を反射して視神経に伝える働きをします。猫を始め、光の少ない夜間に獲物をハンティングする夜行性肉食動物や、深海にすんでいる生き物、および原猿類などが有する構造です。
 写真を撮ったとき目が光って写ることがありますが、それはこのタペタム層にフラッシュが反射したものです。夜間に動物を撮影しようとする写真家などは、懐中電灯などで周囲を照らし、このタペタム層の反射を利用してお目当ての動物を見つけます。
 猫のタペタム層は2マイクロメートル(0.002ミリメートル)と動物の中では比較的厚く、平均12~15層から成っています。浅い層では短波長、深い層では長波長を反射する傾向があり、輝度閾値(きどいきち)は1.32×10マイナス7乗ミリランベルトです。これは、人間の1/6程度の光量でも物を見分けることができると言い換えることができます。本来猫は夜行性ですから、暗闇の中でもわずかな光で視界を保てることは、獲物を捕らえるときに有利ですね。
 なお、カメラで猫を撮影する際は、フラッシュをオフにしましょう。私たちが太陽を見たときのように、光の量が多すぎて目を傷めてしまいます。 猫の目が暗がりで光るのは、網膜にあるタペタム層にわずかな光が反射したため
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猫の網膜と色覚

 猫の網膜(もうまく)には白黒を判別する杆状体(かんじょうたい)と色を判別する錐状体(すいじょうたい)と呼ばれる細胞があります。
 人間を始めとする霊長類には3種類の錐状体があり、虹の七色に代表される様々な色を識別できます。しかし犬や猫を始めとする夜行性の動物には、通常2種類の錐状体しかありません。霊長類は太陽が出ている間に活動する「昼光性」で、色彩豊かな果実などを主食としてきました。ですから、食べ物を見分けるための色覚能力は非常に重要な意味を持っています。それに対し犬や猫は、日が沈みかけてから活動する夜行性(もしくは薄明薄暮性)で、獲物を捕らえる際、色の識別はそれほど重要ではありません。霊長類と犬や猫の色覚能力に大きな差があるのは、進化の過程上当然の帰結とも言えるでしょう。以下は猫と人間の視細胞の数を比較したものです。夜に活動する猫の杆状体(46万個)が、人間のもの(16万個)より圧倒的に多いことが見て取れます(Berkley, 1976)。
猫の視細胞
錐状体=1平方ミリあたり最大で2万6千個 杆状体=1平方ミリあたり最大で46万個 視神経=8万5万本
人の視細胞
錐状体=1平方ミリあたり最大で14万6千個 杆状体=1平方ミリあたり最大で16万個 視神経=120万本
 なお、アミノ酸の内でタウリンと呼ばれる成分が不足すると進行性網膜萎縮(しんこうせいもうまくいしゅく)という病気にかかり、夜目が利かないなど視野に障害が発生します。猫に不用意にドッグフードなどを与えないようにしましょう。
 以下は猫の色覚予想図です。447ナノメートルの青色領域に反応を示し、554ナノメートルの黄緑色において最も感受性が高いと言われています。これらのデータを元に、「おそらく猫はこのように見えているだろう」という情景をご紹介します。 人間と猫の色覚スペクトル~ 人間の網膜には「錐状体」という色を感じる細胞があるため、様々な色を識別できます。いわゆる虹の七色全てを見ることができます。それに対し猫の網膜には錐状体がほとんどないため、色の識別能力は人間よりはるかに劣っています。このため、赤や緑をはっきりと識別することができないと考えられます。 人間と猫の見ている世界の違い~人間の目からは赤が鮮やかに映えますが、猫の目にはぼんやりと黄色っぽく見えていると考えられます。
 2014年に行われた研究により、犬や猫は紫外線を見ることができるという可能性が示されました。実験を行ったのはシティ大学ロンドンの生物学者ロン・ダグラス氏。犬や猫には、人間には見えない紫外線の世界が見えている様々な動物の眼球を調べたところ、ハリネズミ、イヌ、ネコ、フェレット、オカピーといった哺乳類の水晶体(光を通すレンズレンズ)では、紫外線を通すことが明らかになったといいます。紫外線とは、人間の水晶体ではブロックされてしまうため、見ることができない光のことです。この事実から研究者は、犬や猫といった動物たちは、緑や赤といったありふれた色が見えない代わりに、「紫外線」という私たちには見えない光の中でも対象を見分けることができるという可能性を導き出しました。ただしこれらの動物たちが、紫外線を脳内においてどのような色として処理しているかは定かではありません。 Cats and Dogs May See in Ultraviolet
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猫の視野・視界

 下に並べた図で赤=左目の視野、青=右目の視野、紫=両目の視野を表します。片目で見ることの出来る視野を単眼視野(たんがんしや)、両目で見ることの出来る視野を両眼視野(りょうがんしや)、単眼視野と両眼視野を合わせた全体の視野を全体視野(ぜんたいしや)と呼びます。両眼視野に入った対象は、右目と左目に写る対象像のズレを脳が計算し、結果として対象物までの距離を正確に測ることが出来るというのが特徴です。
内斜視のシャム~両眼視野が存在しないように振舞うため、奥行きの認識が苦手  なお、シャムの中には、生後6~8週齢を過ぎた頃から斜視(しゃし)を示すものがいます。斜視とは、黒目が正常な位置からずれて固定された状態のことです。大きな特徴としては、「全体視野は普通の猫と変わらないものの、両眼視野が存在しない」という点が挙げられます。結果、シャムは物体の奥行きを測って位置を見定めることが不得意です。斜視の原因は遺伝的なものですが、シャムのほか色素が欠乏したアルビノ種、およびチンチラの中にも同種の異常遺伝子を持っているものがいると言われています(出典:「猫の行動学」, インターズー)。
 参考までに、人間の視野と犬の視野を比較として載せます。
動物たちの視野・比較図
動物たちの視野・比較図~猫の視野が250度程度であるのに対し、人間のそれは200度程度です。周囲の様子をうかがう能力に関しては猫のほうが上のようです。  草食動物である馬は、外敵である肉食動物(ライオンやトラ)などをすばやく見つけることが出来るよう、眼を顔の側面に配置し、単眼視野を広くするよう進化しました。その結果、草を食べている間でも、後ろから忍び寄る肉食動物の影を視認(しにん)することができます。一方肉食動物である猫は、眼を顔の前面に配置し、両眼視野の範囲を広くするよう進化しました、その結果、見つけた獲物までの距離を正確に測ることができ、狩猟の成功率が高まりました。
 ちなみに猫は犬や人間と同様、眼球をくるくると自分の意志で動かすことが出来ます。草食動物の眼球は顔の側面に位置しているので眼球を動かさなくても十分な視野を確保することができますが、人間や犬、猫のように、眼球が顔の前面に位置している動物は、眼球を動かすことで狭くなりがちな視野を補う必要があるのです。眼球の運動に関わっている筋肉は一般的に「外眼筋」(がいがんきん)と呼ばれ、以下の6つの筋から構成されます。
猫の外眼筋(右目)
猫の眼球は、外眼筋と呼ばれる6本の筋肉によってぐるぐる回転することができる
  • 内側直筋=目を鼻側に向ける
  • 外側直筋=目を耳側に向ける
  • 背側直筋=目を上に向ける
  • 腹側直筋=目を下に向ける
  • 背側斜筋=目を(図の状態で)時計回りに回す+鼻側に向ける
  • 腹側斜筋=目を(図の状態で)反時計回りに回す+耳側に向ける
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