黙認一転「退去」迫る 三重の県営住宅ペット問題

2010年11月27日 中日新聞より
 愛するペットを手放すか、住まいを出て行くか-。
三重県の県営住宅でペットを飼う住人に、県側から厳しい選択が突き付けられた。住宅のペット飼育は規則で禁じており、県は「規則の徹底を図った」。だが、これまでは“黙認”されてきた経緯もあり、長年犬や猫を飼ってきた住人からは戸惑う声が聞こえる。

 津市の県営住宅で、2匹の愛猫と暮らす女性(68)は、8月、住宅管理会社の職員の訪問を受け、誓約書に署名するよう求められた。  「飼育している動物を県営住宅から移動させ、以降は動物を飼育しないことを誓約します。守らなかった場合は、速やかに県営住宅を明け渡します」

 愛猫とのふれあいで独り暮らしの寂しさを紛らわしてきた女性は「40年以上住んでいるけど、こんなこと初めて」と頭を抱える。猶予期間は「3カ月」と言い渡された。

 三重県が県営住宅のペット対策に乗り出したのは今年4月。「動物を飼っている住人を知っていたら情報提供を」と記した調査票を全戸に配った。後日、通報で指摘された100世帯ほどの住人を管理会社の職員らが訪れ、誓約書を渡した。  県営住宅条例では「他人に迷惑を掛けること」を禁じており、「ペットは飼えない」と入居者の募集の時や住人に配る冊子で告げている。県住宅室の上村明宏主幹は「動物を飼えないと知って、入居を断念する人もいた。規則を破る住人は見過ごせない」と話す。

 入居する約3500世帯のうち212世帯が何らかの動物を飼っているとみられる。従来は苦情などがあった場合、個別に禁止であることを飼い主に伝える程度だった。「何十年も犬を飼っていても何も言われなかった」と別の女性。態度硬化の理由を「マナーを守らない人が増え、苦情が多くなったのかも」と憶測する。

 住人が飼うのは、大きくなった犬や猫がほとんどで、もらい手はまず見つからない。上村主幹は「保健所に連れていくかどうかは飼い主の判断」と言うが、現実の選択は限られている。  事態を聞き、全国の公営住宅のペット問題にかかわってきた大阪府の植田勝博弁護士が8月末、ペット飼育を続けられるよう、柔軟な対応を求める申し入れ書を県に提出した。10月には、県内外の動物愛護団体のメンバーら5千人分の賛同署名も出した。

 植田弁護士は「ペットを飼いたい人、迷惑を受けたくない人がどちらも暮らせるよう、居住棟を区別するなどできることがある」と主張。「憲法上の権利からも、他人に危害を与えない限り、自由が認められるべきだ」と規制を疑問視する。  とはいえ、規則を破って動物を飼うことがほかの住人に受け入れられているとも言い難い。「苦情を言ったことはないが、不快に感じたことはある」「殺処分はかわいそうだが、違反者の側に規則を合わせるのはおかしい」との声も。「密告を推奨するようなやり方は、住人の間に遺恨が残る」と心配する人もいる。  県によると、期限の「3カ月」が過ぎた住人はかなりいるが、誓約書はほとんど提出されていない。