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猫砂が自然発火する

 猫の都市伝説の一つである「猫砂が自然発火する」について真偽を解説します。果たして本当なのでしょうか?それとも嘘なのでしょうか?

伝説の出どころ

 「猫砂が自然発火を起こして火事を引き起こした」という都市伝説の出どころは、 2009年5月、アメリカの都市伝説検証サイト「Snopes.com」に投稿された、差出人不明の1通のメールであると考えられます。メールには、以下のような内容が記載されていました。
 2009年5月24日、私の家が火事になりました。消防署員の話によるとゴミ箱に捨ててあった猫砂が出火原因であるとのこと。私は最初「そんな馬鹿な!」と思いました。それまで何年も猫を飼ってきて、自然に火が出るなんてことはなかったのですから。
 その後に行われた火災調査官の調査でも、ゴミ箱に捨ててあった猫砂からの自然発火が火災の原因であるとの結果が出ています。調査官は私たちに対し、「蓋付きの金属製ゴミ箱を買い、他のゴミと混ぜ合わせないように」とのアドバイスをくれました。どうか、この話を猫を飼っている人たちに広めてください。私たちと同じような目には遭ってほしくないので。
 メールの中では、「猫砂から火が出た」とだけ記載されており、明確な出火メカニズムに関しては何も言及されていません。ですからこの話はとりもなおさず「眉唾物である」と言いたくなるところです。しかしあらゆる可能性を検討していくと、どうやら全くあり得ない話では無いようです。

伝説の検証

 「猫砂から突然火が出る」という、一瞬耳を疑うような話も、あながちデタラメとは言い切れません。2012年10月、アメリカ・オハイオ州シンシナティに暮らしているマイクとシェリーのプレンティス夫妻の家が火事に見舞われました。原因はゴミ箱に捨ててあった亜麻仁油(あまにあぶら)を吸った布きれです。亜麻仁油は、一ヶ所に溜まった状態で長時間空気にさらされると、気化に伴う発熱で自然発火する恐れがあり、この現象はABCニュースが行った検証実験でも確認されています。以下はその時の動画です。
亜麻仁油の自然発火
 以下は、亜麻仁油が自然発火する様子をとらえた実験動画です。実験開始後1時間で内部温度が110℃に達し、2時間後には煙を出し始めます。そして3時間後、着火要因が何もないにもかかわらず、とうとう燃え始めました。 元動画は→こちら
 上の検証実験では、油を紙に吸わせていますが、この紙がもし可燃性の猫砂だったらどうでしょう?おそらく同じメカニズムを通して自然発火を起こすだろうと考えられます。噂の出所となったメールが実話だったとすると、恐らく火元は猫砂自体ではなく、猫砂と一緒にしていた他のゴミだったのでしょう。猫砂はただ単に火を大きくする「焚き付け」として働いたのだと推測されます。

伝説の結論

 猫砂そのものや、おしっこを吸い取った猫砂が自然発火する事はありません。もしそんなことが起こりうるなら、スーパーのペット用品売り場や公衆便所は、今頃大火災を起こしていることでしょう。しかし以下に記すような自然発火する可能性がある物質と混ぜ合わせてしまうと、安全とは言い切れなくなってしまいます。猫砂が「焚き付け」になってしまわないよう、処分するときは十分注意した方がよさそうです。
自然発火危険物
  • 大量の天かす
  • 大量の木材くず
  • 大量のピスタチオの殻
  • 有機肥料
  • ごみ固形燃料(RDF)
  • 亜麻仁油
  • 油が採れる種子(ヒマワリ・菜種・ヤシ・綿花)
自然発火 Spontaneous combustion