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8月の猫ニュース

 2015年8月の猫に関するニュースをまとめました。一番上が最新で、下にスクロールするほど記事が古くなります。記事内にリンクが貼られていることもありますが、古い記事の場合はリンク切れの時がありますのでご了承下さい。

8月31日

 脳の働きをリアルタイムで観察できるfMRIを用いた実験により、猫の側頭葉には音の高低(ピッチ)に特異的に反応する専門領域があるらしいことが分かりました。
 実験を行ったのはウエストオンタリオ大学が中心となったチーム。猫10匹に対して大脳皮質の働きが低下しない程度に麻酔をかけ、専用の拘束具で体を固定してfMRIに入れた後、音の高低を含む音刺激と含まない音刺激を与えました。その結果、10匹中5匹において、側頭葉の聴覚野後部が音の高低に対して特異的に反応したといいます。またこの部位は、単調なノイズには反応しなかったとも。
 今回の実験では、参加した全ての猫が同様に反応したわけではなかったため、「側頭葉には音の高低に反応する専門領域がある」と自信をもって断言するまでには至りませんでした。しかしかつて人間や人間以外の霊長類(マーモセットなど)を用いて行われた実験結果でも同様の結果が出ているため、側頭葉が「ピッチセンター」であるという仮説を補強するものと言えそうです。
 音の高低と脳の反応部位に関する知見は、今後先天的な音痴の解明や、人工内耳の改善などに応用される予定だといいます。 猫の耳・聴覚 PLOS ONE

8月28日

 ハチに刺された猫が、そのハチの毒ではなく、ハチが媒介したユリの花粉を舐めとることで中毒に陥るというケースが報告されました。
 急性ユリ中毒に陥ったのは、イギリス・スタッフォードシャー州に暮らしている黒猫「ローラス」(Loras)。飼い主のクリスチャン・ターナーさんによると、ローラスはハチに刺された箇所をしきりに舐めていたと言います。その後嘔吐などの症状を見せ始めたため動物病院へ急行。そこではハチによる刺傷と診断され、応急処置が施された後、自宅に戻されました。しかし自宅に戻ってからも症状は回復せずぐったりして来たため、再び病院へ連れて行ったところ、今度は急性腎不全という診断が下されたそうです。状況から考え、原因はハチの毒ではなく、ハチの体に付着していたユリ科植物の花粉を舐めとったことだと推測されています。結局安楽死という苦渋の選択がなされ、ローラスは1歳2ヶ月という短い人生に幕を下ろしました。 DailyMail
 ユリ科の植物は未知のメカニズムを通じて猫の体に作用し、急性腎不全を引き起こすことが知られています。今回のケースからもわかるように、ほんのわずかな花粉を舐めただけでも中毒に陥りますので、飼い主としては十分な注意が必要です。家の中にユリ科植物を置かない事はもちろんのこと、花粉を仲介するような虫を遠ざけることも有効でしょう。 猫の急性腎不全 猫にとって危険な有毒植物
花粉を仲介する虫も中毒の原因になりうる

8月27日

 猫の問題行動を予防するためには、猫の行動に関する正しい知識と、子猫のうちからの適切なしつけが重要であることが実験により明らかになりました。
 実験を行ったのはイタリア・ピサ大学の獣医学チーム。まず91組の「飼い主と猫」ペアを2つに分け、45組には「猫が2.8(±0.8)ヶ月の段階で獣医師からしつけのアドバイスを受ける」、残りの46組には「何も教えない」という条件格差をつけました。そして10ヶ月後、日常生活の中で見せる猫の問題行動についてのインタビューが飼い主に対して行われました。その結果、1つ以上の問題行動を報告した人の割合が、「アドバイスなし:アドバイスあり=43.5%:15.6%」という大差になったと言います。具体的には、過剰な鳴き声に関して「なし:あり=21.7%:4.4%」、ハンドリングを嫌がるかどうかに関して「なし:あり=82.2%:58.7%」などです。
 こうした結果から研究者たちは、猫の問題行動を予防するため、かなり早い段階で飼い主に対し正しい知識としつけの方法を教授しておく事は非常に有効であるとの結論にいたりました。 やんちゃ猫のいたずら The prevention of undesirable behaviors in cats

8月26日

 首輪にビデオカメラを取り付けて行われた生態調査により、猫の狩猟成功率は狩場の状態に大きく左右されることが判明しました。
 調査を行ったのはタスマニア大学が中心となったチーム。2012~2014年の間、オーストラリア北部に位置するキンバリー中央地域の広大な土地(1500平方kmの牧草地/3200平方kmの野生動物保護区)において、首輪にビデオカメラを装着した13頭の野猫を用いた生態観察を行いました。その結果、101回の狩猟行動を含む、合計89時間の行動記録が収集されたと言います。そして狩猟行動の成功率と、狩猟が行われた場所との関連性を検討したところ、入り組んだ岩場や生い茂った草地での成功率が17%程度だったのに対し、開けた土地での成功率は4倍の70%にまで跳ね上がるという事実を突き止めました。
 こうした結果から研究者たちは、特定の土地から草や茂みを取り除いてしまうと、猫による小動物の狩猟成功率が高まり、結果として個体数の減少に繋がってしまう可能性があると指摘しています。「待ち伏せ型」の狩猟を行う猫にとって、適度な高さを持つ草地は有利に働くように思えますが、実際の成功率を見てみると、どうやらマイナスに作用してしまうようです。 猫がおみやげを持ってくる Feral Cats Are Better Killers in Open Habitats
野生ネコの首輪に取り付けたビデオカメラと、カメラからの視界

8月25日

 今年の2月、犬や猫などの外注検査を受け持つ「アイデックス」(Idexx)が腎不全のバイオマーカーとして発表した「SDMA」という物質が、腎臓病の国際研究組織「IRIS」による暫定承認を得ました。
 「IRIS」が毎年行っている「IRIS Napa Meeting」という会合、およびその後に開かれた「2015 IRIS board meeting」において、新たに発見されたバイオマーカー「SDMA」(対称性ジメチルアルギニン)の有効性が議題に上がり、最終的に「SDMAは従来のクレアチニンよりも腎臓の機能不全を敏感に反映する」との結論に至りました。この結論を基に、「IRIS」が慢性腎不全(CKD)のステージを判定する際の目安として暫定的に設けた数値が以下です。
2015 IRIS CKD Staging Guidelines
  • CKD Stage1SDMA14 μg/dl+クレアチニン1.6mg/dl未満
  • CKD Stage2SDMA25 μg/dl以上+やせている
  • CKD Stage3SDMA45 μg/dl以上+やせている
 この数値が広く認められるようになれば、従来よりも幾分か早く犬や猫の腎不全を検知することができるようになります。 猫の慢性腎不全 IRIS CKD Guidelines Updates

8月25日

 東京都の動物保護施設に収容された猫を対象とし、10年の間隔をあけて行われたトキソプラズマ感染率調査の結果が公表されました。
 当調査行ったのは日本大学が中心となったチーム。1999~2001年と2009~2011年の二期において収容猫のトキソプラズマ(T. gondii)感染率を調査し、その推移を分析しました。結果は以下です。
T. gondiiの感染率推移
1999~2001年における収容猫のトキソプラズマ感染率 2009~2011年における収容猫のトキソプラズマ感染率
  • 1999~2001年=5.6% (13/233)
  • 2009~2011年=6.7% (7/104)
 こうしたデータから研究者たちは、東京都における収容猫のトキソプラズマ感染率は7%未満と比較的低く、動物経由で人間に感染する可能性も低いだろうと推測しています。 トキソプラズマ症 PLOS ONE

8月24日

 94頭の猫を対象とした遺伝子調査により、猫の性格のうち「荒っぽい」という側面には、ある特定の遺伝子が関わっている可能性が示されました。
 当研究を行ったのは、東大と京大を中心とした共同チーム。オス猫57頭、メス猫37頭から遺伝子サンプルを集め、オキシトシンレセプターを形成する「OXTR遺伝子」のエクソン1と呼ばれる部位に着目して解析を行いました。その結果、この部位には3つのSNPs(一塩基多型)が存在していることが分かったと言います。さらに研究者たちは、上記3つのうちの「G738A」に着目し、「対立遺伝子A(A allele)がG738A内含まれているかどうか」という観点と、飼い主へのアンケートから把握した猫の性格とを比較検討しました。 その結果、「G738A」にある特定の対立遺伝子(A allele)が含まれているとき、猫の性格を形成している「開放的」、「友好的」、「荒っぽい」、「神経質」という4つの側面のうち、特に「荒っぽい」という側面が強まったと言います。またこの傾向は避妊手術を施したメス猫で顕著だったとも。
 こうした結果から研究医者たちは、猫の性格の一部には遺伝的な素地があり、その遺伝子は「友愛ホルモン」と呼ばれるオキシトシンの受容体形成に関わっているという可能性を示しました。 猫の性格 JVB

8月21日

 猫のフェイシャルフェロモンの一種である「F3」を診察台に塗りつけておくと、診察中の猫のストレスレベルが大幅に減ることが確認されました。
 実験を行ったのはポルトガルにある複数の大学が中心となったチーム。まず動物病院内に2つの診察室を用意し、一方は「診察台にフェリウェイ(人工フェロモン)を噴霧した部屋」、他方を「何もしない部屋」に設定しました。そして年齢、性別、不妊手術の有無などがすべてバラバラな87頭の猫をランダムでどちらかの部屋に振り分け、診察後のストレスレベルを「CSS」という指標によって評価しました。さらにその後、15日間の間隔をあけて87頭すべての猫を前回とは逆の診察室に入れ、同様の評価を行いました。
 その結果、フェリウェイを噴霧した診察室では猫のストレスレベルが大幅に減ることが確かめられたといいます。またハンドリングのしやすさ関しては、どちらの部屋に入ってもそれほど変化しなかったとも。
 こうした結果から研究者たちは、猫のフェイシャルフェロモンの一種であるF3を人工的に合成した「フェリウェイ」(Feliway®)には、診察中の猫のストレスを軽減する効果があると結論づけました。 猫のフェイシャルフェロモン(FFP) the usefulness of Feliway spray in reducing cats’ stress
 上記フェリウェイは、近年増えつつある「猫専門病院」においては有効かもしれません。ただし犬と猫を同じ診察台で見ざるを得ない小さな動物病院においては、応用するのが難しいでしょう。なおフェリウェイの犬バージョンは「DAP®」と呼ばれており、こちらも犬に対して鎮静効果を発揮することが確認されています。

8月20日

【アメリカ】重度の腎不全を患う老猫「オキ」に対して、腎臓の移植手術が行われました。
 手術を受けたのはニューヨーク州バッファローに暮らすアンドレ・ゴンシアさんの飼い猫「オキ」(Oki)。重度の腎不全を患い、腎移植以外に命を長らえる術がなくなったことから、150件以上の手術例を誇るペンシルバニア大学附属動物病院に運命が託されました。腎臓の移植には、手術代だけで160万円以上かかり、その他移動費、滞在費、さまざまな検査や術後の診察料を合わせると、トータルで300万円近くになるとのこと。しかし飼い主のゴンシアさんは、「自分の子供にお金を使うのは当然だ」として、出費のことはあまり気にしていないようです。手術は成功し、オキは現在、ドナーとなった猫と共に元気に暮らしているとのこと。
 一見するとこの話は美談に聞こえますが、実は倫理的に全てがクリアというわけではありません。今回オキに提供された腎臓は、殺処分の運命にあった「チェリーガルシア」という名の猫から提供されたもの。「殺処分されるよりはましだろう」という考え方はあるものの、人間の一方的な都合で片方の腎臓を奪ってしまうことに対しては、さまざまな意見が出るところでしょう。 CBS NEWS
腎臓のドナーとなったチェリーとレシピアントになったオキ

8月17日

 北アメリカ大陸で発見された2000を超える化石の調査から、古代のネコ科動物が40種類近いイヌ科動物を絶滅に追いやったという可能性が浮かび上がってきました。
 調査を行ったのはスイス・ローザンヌ大学やスウェーデン・ヨーテボリ大学などを中心とした合同チーム。北アメリカ大陸における生物多様性を明確化するため、イヌ科動物のものと思われる2000以上の化石をさまざまな側面から精査しました。その結果、イヌ科動物は4000万年前に北アメリカ大陸で生まれ、2200万年前には30種類を超える繁栄を誇っていたものの、なぜか1500万年前頃から「ボーンクラッシングドッグ」と呼ばれる種が顕著に減り始め、200万年前には大陸から完全に消滅してしまったといいます。この絶滅の原因として研究者たちが目をつけたのが、およそ1850万年前にアジア大陸からやってきたネコ科動物(プセウダエルルス)です。明確な証拠は無いものの、「ボーンクラッシングドッグ」とアジアからやってきたネコ科動物は共に待ち伏せ型のハンティングを得意としており、また同じ種類の動物を獲物としていたため、やがて両者の間で資源をめぐる生存競争が起こり、ハンティングに長けていたネコ科動物が最終的に生き残ったものと推測されています。この正存競争の結果、60を超える亜種が存在していた「ボーンクラッシングドッグ」のうち、少なくとも40種が絶滅に追いやられたとも。
 論文の著者であるローザンヌ大学のダニエル・シルベスト博士は、ネコ科動物を優位に立たせた要因の一つは「出し入れ可能なかぎづめ」ではないかと推測しています。移動する際の摩耗がない分、ネコ科動物の狩猟成功率が高くなり、これが生存につながったのかもしれないとのこと。 PNAS MailOnline

8月13日

 動物保護施設に収容された猫を対象とした実験により、人間とのちょっとした交流が猫の免疫力を高め、上部気道感染症にかかる割合を減らすという事実が明らかになりました。
 実験を行ったのはオーストラリア・クイーンズランド大学の獣医学チーム。不安やストレスの傾向を見せない96頭の猫を、動物保護施設内でランダムに2つのグループに分けた後、一方には「なでる」、「遊ぶ」、「グルーミングする」といった人間との交流時間({1回10分×4セット}×10日間)を設け、もう一方には「目線をそらせた状態でただ単にケージの前に立つ」という状況を設けました。さらに猫の免疫力と感染症の有無を確認するため、糞便中の免疫グロブリンA値を毎日計測し、収容初日、4日目、10日目のタイミングで結膜と口咽頭における病原体(ヘルペス・カリシ・マイコプラズマ・クラミジア・ボルデテラ)の培養試験を行いました。結果は以下。
人との交流と猫の免疫力
  • 交流グループIgA平均値=1,450μg/g
    保菌率=35%(1st)→26%(4th)→32%(10th)
  • 非交流グループIgA平均値=846μg/g
    保菌率=22%(1st)→36%(4th)→61%(10th)
 このように、「非交流グループ」よりも「交流グループ」の方が免疫グロブリン値が高く、上部気道感染症の罹患率も低かったといいます。またこの傾向は、人間との交流を好む人なつこい猫において特に顕著だったとも。
 こうした事実から研究者たちは、動物収容施設における人間とのちょっとした交流は、猫の免疫力を高め、結果として上部気道感染症の発症率を減らす効果があるという事実を明らかにしました。この事実はまた、家庭において猫と交流することがいかに重要であるかを示す好例ともいえるでしょう。 猫の幸福とストレス Effect of interactions with humans

8月11日

 1000頭近い猫を対象とした統計調査により、1歳を超えたくらいの若い猫が肥満に陥ってしまう際のリスクファクターが明らかになりました。
 当調査を行ったのはイギリス・ブリストル大学の獣医学チーム。1歳未満の猫を飼っている飼い主に対し、「生後2~4ヶ月」、「生後6.5~7ヶ月」、「生後12.5~13ヶ月」という3つの観測地点においてBCS(脂肪の付き具合を数値化したもの)を評価してもらうと同時に、飼育環境に関するアンケートに答えてもらいました。その結果、最終観測地点である「生後12.5~13ヶ月」において肥満傾向(BCS4~5)にある猫は全体の7%で、「完全室内飼い」と「摂取カロリーの半分以上をドライフードに頼っている」という2項目が、肥満のリスクファクターとして浮かび上がってきたといいます。
 こうした結果から研究者たちは、上記リスクファクターを抱えている子猫の飼い主は、「猫を室内で上手に遊ばせる」とか「エサにウェットフードも混ぜてみる」などの工夫をして、なるべく肥満に陥らないよう注意した方が良いと呼びかけています。 猫の肥満 Risk factors identified for owner-reported feline obesity at around one year of age

8月10日

 猫が持つ縦長の瞳孔は、上下の視野をなるべく広げて獲物の捕獲率を高めるための構造であることが明らかになりました。
 研究を行ったのは、カリフォルニア大学バークレー校が中心となったチーム。陸上で生活する動物の瞳孔の形状に大きな違いがあることに着目した当チームは、200を超える陸上動物の瞳孔サンプルを収集し、その特徴を探り出しました。結果は以下です。
陸上動物の瞳孔形態
  • 縦長の瞳孔顔の正面に眼球を持ち、待ち伏せ型で体高が40cm程度の小型肉食獣に多い/眼球の上下から広く光を集めることができる/左右の視野はぼやけてしまう
  • 横長の瞳孔顔の横に眼球を持つ草食動物に多い/眼球の左右から広く光を集めてパノラマビューを得ることができる/立体視できるのは顔の正面のわずかな範囲だけ
 こうした事実から研究者たちは、「縦長の瞳孔」は上下の視野を広げることで獲物を捕獲する確率を高めることに寄与しており、「横長の瞳孔」は左右の視野を広げることで外敵をいち早く捕捉することに役立っているという可能性を明らかにしました。
 縦に細長い猫の瞳孔は、明るい場所から暗い場所に移動した際、面積を150倍にまで広げて光の量を調整するシャッターとして機能することはよく知られています。今回の研究ではシャッターとしての役割のほか、縦長の形状を保って上下の視野を鮮明に保ち、急に飛び上がる鳥など動きにも対応できるスコープとしての役割も担っていることが示されました。なおライオンやトラなど、大型の肉食動物の瞳孔が主として円形である理由は、獲物としている動物の動きに極端な上下動が含まれず、垂直方向の視野をそれほど広げなくてもよいからだと推測されます。 猫の目・視覚 Why do animal eyes have pupils of different shapes?
猫の縦長の瞳孔は、垂直方向の視野を鮮明に保つ