トップ2016年・猫ニュース一覧4月の猫ニュース4月27日

猫にとっての「隠れ家」の重要性が再確認される

 19頭の猫を用いた比較調査により、猫のストレスを軽減するためには、身を隠せる箱の存在が極めて重要であることが判明しました(2016.4.27/オランダ)。

詳細

 調査を行ったのはオランダ・ユトレヒト大学の研究チーム。オランダ国内では法律により、保護施設に収容された猫たちは2週間、検疫のため隔離された狭いケージの中で過ごさなければなりません。しかしこうした収容方法は猫に対して強いストレスを与え、結果として免疫力の低下に起因する感染症のアウトブレークにつながる危険性を常にはらんでいます。そこで調査チームは、かねてから猫のストレス軽減法として指摘されていた「隠れ箱」を用い、一体どの程度の効果があるのかを検証しました。
 調査の対象となったのは、野良猫として保護施設に収容された19頭の短毛種。そのうちの10頭は「箱ありグループ」(平均24.1ヶ月齢)、9頭は「箱なしグループ」(平均39.3ヶ月齢)にランダムで振り分けられ、 ビデオ録画を用いた2週間の行動観察が行われました。主な結果は以下です。なお、データ中の数字は「キャットストレススコア」(CSS)と呼ばれる指標における評価指数で、「1」が「非常にリラックス」、「7」が「恐れおののいている」を意味しています。つまり、数字が小さければ小さいほどストレスが少ないということです。 猫のストレススコア 「箱なしグループ」の猫と「箱ありグループ」の猫におけるストレススコアの変遷グラフ(2週間)  「箱ありグループ」のスコアが3日目にして早くも下限(2)に達しているのに対し、「箱なしグループ」のスコアは14日目にしてようやく「箱ありグループ」と同等になると言う緩やかな順化傾向を示しました。また「箱ありグループ」は、合計120分に及ぶ観察時間のうち、55%という大量の時間を箱の中で過ごすという事実も明らかになったと言います。こうしたデータから研究チームは、慣れない場所に連れてこられた猫たちのストレスを軽減するためには、身を隠せる箱の存在が極めて重要であるとの結論に至りました。また「箱なしグループ」で観察された「45%の時間をトイレの後ろで過ごす」という傾向は、「身を隠す」という行動の代替行動ではないかとも指摘しています。 Will a hiding box provide stress reduction for shelter cats?

解説

 日本の保健所や動物愛護センターでは、極めて味気ないステンレス製のケージに猫を収容しているところが大半です。身を隠せる箱もなければ、タオルすら置いてもらえないところもあります。こうした収容方法は、主として「管理がしやすい」とか「スペースや資金が足りない」といった理由なのでしょうが、猫の福祉が大きく損なわれてる事は間違いないでしょう。 保護施設では、猫のケージ内に簡単な隠れ家を用意してあげるだけで劇的なストレス軽減効果が期待できる  2016年4月、東京都墨田区にあった猫カフェに対し、劣悪な環境で営業していたとして業務改善命令が下った事は記憶に新しいと思います。この猫カフェではわずか6畳のスペースに60頭を超える猫がひしめきあい、7割近くが猫風邪にかかっていたとのこと。過密状態によってストレスを感じた猫たちの免疫力が低下し、感染症のアウトブレークにつながったという流れは容易に想像がつきます。
 猫を飼ってる方は家の中を見渡し、猫が身を隠せるスペースが複数箇所あるかどうかを今一度確認してみましょう。もしそうした隠れ家がないようであれば、なんとか工夫して作ってみてください。また暗がりで寝ている猫を無理やり引っ張り出して抱っこするという行為は、猫にとって大変なストレスになります。猫カフェに行った際は、ぜひそっとしてあげてください。 猫の欲求 猫カフェにおけるマナー