トップ2016年・猫ニュース一覧12月の猫ニュース12月22日

猫にとって理想的な爪とぎが判明

 インターネットを介した大規模なアンケート調査により、猫の爪とぎ行動を最も促してくれる理想的な爪とぎの条件が明らかになりました(2016.12.22/アメリカ)。

詳細

 調査を行ったのは、アメリカやカナダなど複数の国ならなる共同研究チーム。インターネットを介した27項目アンケート調査により、英語圏を中心とした36ヶ国から猫の爪とぎ行動に関する回答を集め、最も理想的と思われる爪とぎ像を確立しようと試みました。その結果、アメリカ(3,021人/73.6%)、カナダ(356人/8.7%)、イギリス(91人/2.2%)などから合計4,105人分の有効回答が寄せられたといいます。猫たちの基本情報は以下です。
猫の年齢層
  • 1歳未満=499頭(12.2%)
  • 2~5 歳=1,433頭(34.9%)
  • 6~9 歳=1,083頭(26.4%)
  • 10~13歳=708頭(17.2%)
  • 14歳以上=357頭(8.7%)
猫の不妊手術の有無
  • 未手術のオス猫=81頭(1.9%)
  • 去勢済のオス猫=2,007頭(48.8%)
  • 未手術のメス猫=120頭(2.9%)
  • 避妊済のメス猫=1,872頭(45.6%)

最も使用率が高い爪とぎの素材

 以下は、猫の爪とぎ使用率を素材別で見たデータです。9歳以下の年齢層ではロープがトップに来ていますが、10歳超の年齢層ではカーペットに入れ替わっています。加齢に伴ってソフトな手触りを好むようになるのかもしれません。 猫の爪とぎ用具に用いられる素材一覧~ロープ・カーペット・段ボール・木
最も使用率が高い素材(全体)
  • ロープ=36.2%
  • カーペット=30.2%
  • 段ボール=22.4%
  • 木=3.9%
  • その他=7%
最も使用率が高い素材(9歳以下)
  • ロープ=32.5%
  • カーペット=25.1%
  • 段ボール=18.2%
最も使用率が高い素材(10歳超)
  • カーペット=24.7%
  • ロープ=22.9%
  • 段ボール=19.6%

最も使用率が高い爪とぎのタイプ

 以下は、猫の爪とぎ使用率をタイプ別で見たデータです。9歳以下の年齢層では2段以上のキャットツリーがトップにきていますが、10歳超の年齢層ではアップライト型に入れ替わっています。加齢に伴って関節炎などを抱えている猫の割合が増え、上り下りを必要としない縦型のシンプルなものが好まれるようになるのかもしれません。また爪が実際に接する「とぎ面」のサイズに着目した場合、幅が90cm以下での使用率が88.1%だったのに対し、90cm超が9.1%という結果になりました。さらに高さが90cm以下での使用率が60.2%だったのに対し、90cm超が36.3%だったそうです。 猫の爪とぎのタイプ~キャットツリー1段型と多層型 猫の爪とぎのタイプ~アップライト型と吊り下げ型 猫の爪とぎのタイプ~平置き型 猫の爪とぎのタイプ~斜め置き型
最も使用率が高いタイプ(全体)
  • キャットツリー2段以上=28.7%
  • アップライト型=26.8%
  • 水平置き型=20.6%
  • 斜め置き型=9.9%
  • その他=6.6%
  • キャットツリー1段型=4.9%
  • 吊り下げ型=2.4%
最も使用率が高いタイプ(9歳以下)
  • キャットツリー2段以上=75.8%
  • アップライト型=69.0%
  • 水平置き型=49.5%
  • 斜め置き型=24.0%
  • その他=15.8%
  • 吊り下げ型=5.8%
最も使用率が高いタイプ(10歳超)
  • アップライト型=21.9%
  • キャットツリー2段以上=18.8%
  • 水平置き型=16.9%
  • 斜め置き型=8.6%
  • その他=5.7%
  • 吊り下げ型=1.7%

不適切な爪とぎ行動の頻度

 以下は、飼い主が望んでいない場所で爪とぎをする「不適切な爪とぎ行動」の頻度を、素材やタイプ別で見たときのデータです。回答者中52%の人(2,125/4,105人)が不適切な爪とぎ行動を報告し、そのうち65.0%は1日1回、35%は1日複数回の行動を報告しました。爪とぎの高さが90cm未満のときの割合が55.23%だったのに対し、152cm超では64.66%に上昇したそうです。爪とぎがあまりにも大きかったり、とぎ面があまりにも高い場所にあると、使う気をなくしてしまうのでしょうか。
不適切な爪とぎ行動の頻度(素材別)
  • その他=69.7%
  • 木=64.4%
  • カーペット=63.1%
  • 段ボール=60.2%
  • ロープ=53.7%
不適切な爪とぎ行動の頻度(タイプ別)
  • 吊り下げ型=74.1%
  • 水平置き型=63.1%
  • アップライト型=60.9%
  • 斜め置き型=58.4%
  • キャットツリー1段型=56.9%
  • キャットツリー2段以上=55%
Owner observations regarding cat scratching behavior: an internet-based survey
Colleen Wilson et al. Journal of Feline Medicine and Surgery, Vol 18,Issue10,pp.791-797,doi:10.1177/1098612X15594414

解説

 猫が爪とぎではなく家具などをひっかいてしまうには、それなりの理由がありそうです。例えば今回の調査では、猫が最も好む素材はロープ(36.2%)>カーペット(30.2%)だったのに対し、実際に飼い主が猫に与えていた素材はカーペット(61.2%)>ロープ(57.8%)でした。このような猫の好みと実際に与えられた素材のミスマッチが、不適切な爪とぎ行動につながっているものと推測されます。調査データからは除外されましたが、386人の飼い主は猫に対して抜爪術(指の第一関節から先を切り落とす外科手術)を施したと回答したそうです。そして手術を行った理由として最も多かったのは「家財道具のダメージを予防するため」(34.5%/133人)だったとも。もし、猫の好みと爪とぎの素材がぴったりマッチしていたら、上記したような侵襲性の高い残酷な手術が避けられたかもしれません。 猫の抜爪術について  以下は、今回の調査で得られた知見を基にした、年齢別の理想的な爪とぎ像です。まず最初に最も気に入ってくれる確率が高いものを提示し、猫のリアクションが悪いようだったら素材やタイプにマイナーチェンジを加えていくようにします。

全年齢層共通

 犬と比較して猫はなかなかしつけに反応してくれない動物ですが、毎日コツコツ「正の強化」を繰り返していれば、それなりに言うことを聞いてくれるようになるようです。例えば、猫が適切な場所で爪とぎをしてくれたとき、何らかのご褒美を与えている飼い主のうち80.4%(2,366/2,942)は「1日最低1回、自分が望む場所で爪とぎをしてくれる」と回答したそうです。一方、何のご褒美も与えていない飼い主の場合、その割合は67.7%(201/297)にとどまりました。このデータから考えると、猫が正しい場所で爪とぎをしてくれたタイミングで、撫でてあげるとかおやつをひとかけらあげるといったご褒美を与えると、不適切な場所での爪とぎが減ってくれる可能性が大いにあります。ちなみに不適切な爪とぎ行動に際して言葉で叱ったりといった「負の弱化」を行っても、行動頻度が減るということはなかったそうです。 猫のしつけの基本
 家の中で爪とぎをしてほしくないからといって、猫を屋外に出すのはお勧めできません。完全室内飼いの猫における不適切な爪とぎの割合は52.5%だったのに対し、多少なりとも外に出る機会がある猫における割合は51.5%と、ほとんど変わらなかったと言います。放し飼い猫は家の中にいる時間が減る分、家具などをひっかく頻度が減る事は事実です。しかし屋外には感染症や交通事故といった極めて多くの危険が待ち受けています。「猫の命と引き換えに家具の傷を守った」というのではまったく割に合いません。不適切な場所での爪とぎを予防する最善策は、猫に爪とぎをさせないことではなく、猫がどうしても使いたくなるような魅力的な爪とぎを家の中に用意してあげることです。 放し飼いが招く猫の死

猫の理想の爪とぎ・9歳未満

 9歳未満の猫に対しては、2段以上の複数階構造を持った大きめのキャットツリーを用意します。とぎ面の素材はサイザル麻のロープがベストです。市販のキャットツリーには多くの場合麻ロープがすでに巻きつけてありますので、そのまま使えばよいでしょう。しばらく使っていると繊維がほぐれてざんばらになってきますので、ロープだけを新調して上から巻きつけるようにすれば再び魅力が復活します。 9歳未満の猫における理想の爪とぎ~多層型キャットツリーに麻ロープ

猫の理想の爪とぎ・10歳超

 10歳超のシニア猫に対しては、足腰に負担をかけないアップライト型、もしくは1段型のキャットツリーを用意します。既製品はほとんどの場合、麻のロープが巻きつけてありますので、ひとまずこれを使ってみましょう。もし猫が気に入らない場合はカーペット素材に置き換えます。適当な大きさに切った毛足が長めのカーペットをアップライト型の爪とぎに接着しましょう。ほつれた糸を猫が誤飲する危険性がありますので、カーペットの素材は丈夫なものを選んだほうが無難です。 10歳超の猫における理想の爪とぎ~1段型キャットツリーにカーペット  猫全体における吊り下げ型(壁密着型)爪とぎの使用率が2.4%と極めて低いことから考えると、カーペットをただ単にガムテープで壁に貼り付けても、あまり使ってくれないと考えられます。おそらく、野生環境において猫が爪とぎに使用する木の幹に全く似ていため、そもそも爪とぎとして認識しにくいのでしょう。 猫の爪とぎのしつけ