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猫のノミ取り商品に含まれる「フェノトリン」の危険性について

 ノミ取りシャンプーやスポット薬のラベルに「フェノトリン」という成分が記載されている場合、猫に用いるのはいささか危険かもしれません(2016.6.1/日本)。

詳細

 「フェノトリン」(Phenothrin)はピレスロイド系殺虫剤の一種で、動物のノミやダニ、および人間の疥癬、アタマジラミの駆除などに用いられます。しかし詳しく調べてみると、この成分は猫に危害を加えたという「前科」があるようです。副作用の具体的な内容としては皮膚のかゆみ、脱毛、流涎(よだれ)、震え、痙攣などがあり、中には死亡例も含まれていたと言います。以下は簡単な経緯です。
 2000年5月、アメリカ合衆国環境保護庁(EPA)はペット用品メーカー「Hartz Mountain Corporation」が販売している2商品に関する副作用レポートを受け取り始める。2001年3月、その数が一向に減る気配を見せず数千件に及んだたため、EPAはいよいよ原因の調査に乗り出した。販売元、獣医師、副作用が出たペットの飼い主などへ聞き取り調査したところ、スポット式商品に含まれる「フェノトリン」と呼ばれる成分を、猫が誤ってなめてしまうことが副作用の原因である可能性が浮上してきた。
 事態を重く見たEPAは2002年、「Hartz」に対して改善命令を出し、同社は流通している商品の回収、再包装、適正ラベルへの張り替え、危険性に関する警告チラシの配布、ウェブでの呼びかけ、ダイレクトメールキャンペーン、ペット用品店や獣医師への情報開示といった予防策に奔走することとなった。Hartz Recalls 2 Flea and Tick Products
 このように決して安全とはいえない「フェノトリン」ですが、日本国内で流通している商品のラベルを見てみると、なぜか軒並みこの成分が含まれています。例えば以下はシャンプーです。
ノミ取りシャンプーの成分
  • ジョイペット 【商品名】ダニとノミ取り リンスインシャンプー 犬猫用
    【有効成分】フェノトリン
  • ハーツ【商品名】ノミとりケアシャンプー 犬猫用 アロマソープの香り
    【有効成分】フェノトリン
  • ハッピーペット【商品名】薬用マダニ・ノミとりリンスインシャンプー 犬猫用
    【有効成分】フェノトリン
 アメリカの「国立殺虫剤情報センター」(NPIC)が公開しているフェノトリンに関する情報によると、「特に猫はd-フェノトリンに対する感受性が高いと考えられる。神経毒症状としては、スポット式商品を使用した後の震え、過剰な流涎、発作などが報告されている。結果として2005年、d-フェノトリンを含む猫用商品は全て撤廃された」とあります(→出典)。また「ペット中毒ホットライン」は、フェノトリンを含むピレスロイド系薬品が猫に危険であると警告しています(→出典)。日本のメーカーは、一体どのようなデータを根拠に安全と判断し、フェノトリンを含んだ商品を犬猫兼用にしているのでしょうか?
 メーカーの言い分は「動物医薬品として農林水産省で認可された成分である」というものです。一方、農林水産省は「メーカーが規定通りの検査法で安全性をチェックしている」と言い張っています。結局、成分の安全性に関して具体的にどのような検査が行われたのかについては、メーカー側の「知的財産」というブラックボックスの中に隠されたままなのです。
 さまざまなデータから考えると、「フェノトリン」を有効成分として含んでいるノミ取り剤を猫に使うのは最善策ではないと言わざるを得ません。特に猫は自分の被毛を舐めるという習性を持っているため、経皮的に吸収された時よりも強い毒性を発揮してしまいます。アメリカにおいて犬よりも猫における中毒症例が圧倒的に多かったのはそのためでしょう。
 猫のノミ取り対策をする際は、前科がある成分を避けたほうが無難だと思われます。ポイントは「フェノトリン」のほか、猫に対する毒性が強いことで知られる「ペルメトリン」が含まれていないことをしっかりと確認することです。また犬と猫が同居している家庭においては、犬に用いるノミ・ダニ商品に上記2成分が含まれていないことを事前に確認した方がよいでしょう。その他、含有成分が不安な場合は、農林水産省が公開している副作用データベースをご活用ください。 副作用情報データベース