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猫の毛色を「ラセット」(赤茶色)に変える遺伝子変異

 猫の被毛をジャガイモの皮のような「ラセット」という赤茶色に変える新たな遺伝子変異が発見されました(2016.10.6/アメリカ)。

詳細

 猫の祖先であるリビアヤマネコの被毛はすべて黒っぽい縞模様ですが、人間による猫の家畜化が進むにつれ、黄色っぽいフェオメラニン色素を多く含んだ猫が見られるようになってきました。その一例が、茶トラ猫に代表される「オレンジ」と、ノルウェージャンフォレストキャットの一部のラインで見られる「アンバー」という毛色です。前者に関わっているのは、X染色体上にある「O」という遺伝子で、後者に関わっているのは「メラノコルチン1受容体遺伝子」(MC1R)に含まれる「E」と呼ばれる遺伝子座の変異(c.250G>A; p.Asp84Asn)であることが分かっています。 茶トラは「O遺伝子」、アンバーは「MC1R遺伝子」によって生み出される  近年行われた調査により、既に知られている変色遺伝子とは違う遺伝子が、猫の毛色を黄色っぽく変えている可能性が浮上してきました。きっかけとなったのは、2007年にニュージーランドで生まれた「Molly Too」という名のバーミーズです。バーミーズには珍しく黄色っぽい被毛をもって生まれたこの猫は、その後交配を重ねて「ラセット」(russet)という新しい被毛パターンの基礎を作りました。基本的な特徴は以下です。
ラセットの特徴
ラセットカラーの基礎猫となった「Molly Too」
  • しっぽの先、股間、肉球周辺の体毛色が薄い
  • 鼻の色は完全にピンク
  • 肉球は成長に伴いピンクになる
  • 成長に伴い、ユーメラニンを含んでいた濃い部分が頭から徐々に明るい色にかわり最終的には完全な赤色になる
 ミズーリ大学獣医学部の研究チームは、「ラセット」が常染色体劣性遺伝で、なおかつ成長とともに色合いが変わるという点に着目し、ノルウェージャンフォレストキャットと同じMC1R遺伝子が関わっているはずだと当たりを付けた上で、15頭のラセット猫を対象とした遺伝子調査を行いました。その結果、MC1R遺伝子内に「c.250G>A; p.Asp84Asn」という予測されていた変異は見つからなかったと言います。その代わり見つかったのが、アミノ酸の一種であるフェニールアラニンの生成を阻害するホモ型欠失変異(c.439_441del)でした(※ホモ型=両親から同じ変異を受け継ぐこと)。さらに、26品種に属する442頭の猫、北米から集められた26頭のバーミーズ、キャラメル色の被毛を持つ15頭の猫を対象とした大規模な調査を行いましたが、ラセット猫で見られたようなホモ型の欠失変異はだたの1頭も保有していなかったと言います。
 こうした結果から調査チームは、バーミーズのラセットラインで発見された遺伝子の欠失変異は、猫の被毛を赤茶色に変える新しい遺伝子パターンであるとの結論に至りました。 Not another type of potato: MC1R and the russet coloration of Burmese cats 猫の模様と色 バーミーズ