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慢性腎臓病を抱えた猫の典型的な体重変化

 慢性腎臓病を抱えた500頭を超える猫を対象とした調査により、病気にいち早く気づくためには、日常的な体重測定が重要であることが再確認されました(2016.9.1/アメリカ)。

慢性腎臓病に伴う体重変化

 調査を行ったのは、アメリカ・タフツ大学カミングス獣医学校のチーム。2006年から2010年の期間、アメリカ国内にある6つの動物病院を受診した、慢性腎臓病のさまざまな進行ステージにある569頭の猫(メス316頭+オス253頭/ステージ1=6% | 2=61% | 3=25% | 4=9%)を対象とし、腎臓病と診断される前後における体重の変化を調査したところ、以下のような事実が明らかになったと言います。なお「中央値」とは、ある属性を持った集団の中で、ちょうど真ん中に位置する個体の数値を取り出したもので、平均値とは別物です。例えば、6、7、8、9、10歳の5人の子供がいた時、年齢の中央値は最小値と最大値のちょうど真ん中に位置する「8歳」になります。
慢性腎臓病と体重変化
  • 診断が下された時の年齢中央値は14.9歳(5.0~22.8歳)
  • 診断が下された時の体重中央値は4.2kg(1.6~9.9kg)
  • 診断前の12ヶ月における体重減少率は、中央値で8.9%
  • 診断後の12ヶ月における体重減少率は、中央値で6.2%
  • 体重減少の徴候は早ければ3年前からあり
  • 腎臓病の診断後に体重減少は加速する
  • 診断時の体重が4.2kg未満の猫は生存時間が顕著に短い
慢性腎臓病診断の前後3年における猫の体重変化  こうしたデータから調査チームは、慢性腎臓病を早期発見するためには、飼い主が日常的に体重をモニタリングし、減少がないかどうかをチェックすることが重要であるとしています。 Evaluation of Weight Loss Over Time in Cats with Chronic Kidney Disease
L.M. Freeman, M.-P. Lachaud, et al. 2016

体重と生存率の関係

 慢性腎臓病を抱えた犬を対象として行われた過去の調査では、「やせているほど生存期間が短くなる」という傾向が確認されています出典資料:Parker, 2011)。また猫を対象とした同様の調査でも、「4kg以下の猫は死の危険性や非経口的液体治療の必要性が2.5倍に高まる」という結果になっています 出典資料:King, 2008)。今回の調査でも、診断時の体重が4.2kg未満の猫の方が生存率が悪くなるという現象が確認されました。ただしこの結果には、食欲不振で体重が減り始めた猫の飼い主が安楽死に踏み切ったという可能性も含まれているため、体重減少と死亡率上昇の因果関係を忠実に表しているとは言い切れません。 診断時の体重が4.2kgより上か下かで余命が左右される  慢性腎臓病の重症度をIRISの国際基準に照らして1~4に分類した場合、症状が重い猫(4)の方が体重が軽く、また予後も悪いことが明らかになりました。50%生存率に関し、ステージ1と2の場合が2年(24ヶ月)後、ステージ3と4の場合が1年(12ヶ月)後にやってくるというのが目安のようです。
腎臓病のステージと体重
  • ステージ1=4.3 kg
  • ステージ2=4.4 kg
  • ステージ3=3.8 kg
  • ステージ4=3.8 kg
腎臓病のステージが進行しているほど体重が軽くなり、余命も短くなる  腎臓病の早期発見に関しては、犬や猫などの外注検査を受け持つ「アイデックス」(Idexx)が2015年より、「SDMA™」と呼ばれる新しいバイオマーカーの検査を開始しています。これにより、従来より17ヶ月も早く病気を検知できる可能性が高まりました。しかしこの検査には血液が必要なため、通院や採血に伴うストレスを猫に強いなければなりません。一方、体重測定の方は少ないストレスで日常的にできますので、なるべく飼い主が習慣化しておきたいものです。ただし体重の増減だけから腎臓病の有無を判定することはできませんので、半年~1年に1回の健康診断と並行して行うのが理想です。 猫の慢性腎不全