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プラズマクラスターは猫アレルギーを軽減するか?

 家電メーカーのシャープが開発した「プラズマクラスター」には、猫や真菌から発せられるアレルゲンの作用を弱める効果があるかもしれません(2016.9.29/日本)。

詳細

シャープが開発した「プラズマクラスター」の基本原理 調査を行ったのは、家電メーカー「シャープ」と日本国内の複数の大学からなる共同研究チーム。1年中風邪に似た症状を引き起こす通年性アレルギーの原因物質に対し、シャープが開発した「プラズマクラスター™イオン」がどのような影響を及ぼすかを検証するため、猫の体から発せられるアレルゲン「Fel d 1」と、真菌の1種アスペルギルス(Aspergillus fumigatu)から発せられるアレルゲン「Asp f 1」を対象とした調査を行いました。
プラズマクラスター™
プラズマ放電により活性酸素を発生させ、+と-のプラズマクラスターイオンを作り、空気中に放出する技術のこと。イオン発生器は空気清浄機、エアコン、冷蔵庫といった家電製品に組み込まれて使用される。
 調査方法は、円筒状の特殊な装置の中に霧状にしたアレルゲンを入れ、プラズマクラスターイオンに6時間暴露するというものです。暴露の前後において、アレルゲン試料に含まれるタンパク質の量と、アレルギー患者の血液に含まれるIgE抗体への結合能力を比較したところ、以下のような結果になったと言います。
Fel d 1について
  • タンパク質の量・装置に入れる前→351.1ng/ml
    ・プラズマクラスターなし→52.6ng/ml
    ・プラズマクラスターあり→11.4ng/ml
    ★プラズマクラスターの作用で「Fel d 1」は79.3 %減少
  • IgE抗体への結合能力・プラズマクラスターなし→12.4ng
    ・プラズマクラスターあり→53.5ng
    ★プラズマクラスターの作用で結合能力は76.9 %減少
Asp f 1ついて
  • タンパク質の量・装置に入れる前→1.97pg/ml
    ・プラズマクラスターなし→0.38pg/ml
    ・プラズマクラスターあり→0.14pg/ml
    ★「Asp f 1」の量は減ったが、これは霧化によるものでプラズマクラスターの作用によるものではなかった
  • IgE抗体への結合能力・プラズマクラスターなし→1.99ng
    ・プラズマクラスターあり→10.93ng
    ★プラズマクラスターの作用で結合能力は81.8 %減少
 こうした結果から調査チームは、プラズマクラスターには「Fel d 1」と「Asp f 1」がもつIgE抗体への結合能力を低下させ、アレルギー症状を軽減する可能性があることを突き止めました。なお「Asp f 1」試料のタンパク質量がそれほど変わらなかったにもかかわらず、IgE抗体への結合能力低下が確認された現象に関しては、プラズマクラスターイオンがタンパク質の量を変えないままアレルゲンの構造だけを変化させたからではないかと推測されています。 Exposure to positively- and negatively-charged plasma cluster ions impairs IgE-binding capacity of indoor cat and fungal allergens
Nishikawa K, Fujimura T, Ota Y, et al. 2016

解説

 1993年から1994年にかけて日本国内で行われた調査によると、猫を飼っている44人の喘息患者のうち70%が、そして猫を飼ったことがない喘息患者394人のうち34%が猫のアレルゲンに対して特異的IgE抗体を保有していたと言います(→出典)。また、幼稚園、学校、公園といった人々が集まる場所で服に付着したアレルゲンが家庭内に蓄積するという現象も確認されています(→出典)。こうした事実から考えると、たとえ家の中に猫やカビが存在していなくても、アレルギーの原因物質(アレルゲン)が空気中を漂っていると想定したほうが無難なようです。
 今回の調査では、プラズマクラスターが空気中のアレルゲンに作用し、血液中のIgE抗体と結合する能力を7~8割も低下させ、アレルギー症状を軽減してくれるかもしれないという可能性が示されました。しかしアレルギーの症状緩和法には、思い込みによる「偽薬効果」が現れやすいという点には注意が必要です。最近の例では、「Circassia」という海外の製薬会社が「Cat-Spires」という次世代猫アレルギー治療薬で期待を集めていたものの、症状改善の60%が偽薬効果であることが判明し、最後の最後で発売を断念するという事例もあります。調査チームが、「今後はより厳密な調査デザインで効果の検証をしていく必要がある」としているのは、こうした背景があるためでしょう。
 プラズマクラスター付きの空気清浄機はすでに市販されていますので、猫アレルギーで困っている方は試してみるのも手です。ただし、小型掃除機程度の騒音は覚悟しなければなりません。 猫アレルギーについて