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肉をたくさん含んだ猫用フードが免疫力を高めるとは限らない

 健康な猫を対象とした給餌試験により、一般的に上質と考えられている動物肉を豊富に含んだフードを与えても、免疫機能はほとんど変化しないことが明らかになりました(2017.1.26/ドイツ)。

詳細

 調査を行ったのは、ドイツ・ベルリン自由大学獣医学部のチーム。健康な猫10頭(平均年齢6.8歳)に対し、肉や血粉を豊富に含む上質タンパク食と、コラーゲン成分を豊富に含む低質タンパク食とを交互に給餌し、免疫機能にどのような違いが見られるかを観察しました。給餌パターンは、それぞれのタンパク食に対して少量、中量、多量というバリエーションが設けられたため、合計6パターンということになります(※表中の割合は乾燥重量におけるタンパク質の含有量)。 タンパク質の含有量とクオリティによって作られた合計6種類の給餌パターン  上記した6パターンを、1パターンにつきそれぞれ6週間継続した後、免疫機能の指標である白血球百分率数やリンパ球増殖アッセイを血液検査を通して調べた所、タンパク質の含有量やクオリティーにかかわらず、猫の免疫機能はほとんど変わらなかったと言います。唯一見られた違いは、多タンパク食の時に単球による貪食作用が減少し、好酸球が増加した点だったとも。
 こうした結果から調査チームは、一般的に動物の肉を含んだ高タンパク食は「上質」というイメージを持たれているが、少なくとも免疫機能に対する影響力という点から考えると、「低質」な食事とほとんど変わらないという結論に至りました。
Impact of Dietary Protein Concentration and Quality on Immune Function of Cats.
Paslack N, Kohn B, Doherr MG, Zentek J (2017) PLoS ONE 12(1): e0169822. doi:10.1371/journal.pone.0169822

解説

 タンパク質を構成しているアミノ酸のうち、ある特定のものが免疫機能に影響を及ぼすという現象は、いくつかの報告で確認されています。例えば1.9%アルギニンを低タンパク食に添加したところ、食細胞の機能が高まり、マイトジェン(分裂促進因子)に対する免疫T細胞の増殖能力が高まったなどです。また加熱加工されたタンパク質と加工していないタンパク質を若い猫に給餌した所、加工カゼインを摂取した猫の唾液中における免疫グロブリンA反応が高まったという報告もあります。
 こうした事例から、タンパク質のクオリティーが猫の免疫機能に影響を及ぼすと想定することは自然なことです。しかし今回の調査グループが実際に検証してみたところ、少タンパク食グループで単球の貪食作用が増加し、好酸球数が低下するという点以外、明白な違いは見いだされませんでした。この事実は、動物成分を多く含んだフードだろうと、植物成分しか含まないベジタリアンフードだろうと、猫の健康状態はそれほど変わらないという数多くの逸話を部分的に裏づけるものかもしれません(→詳細)。 野生環境で食べているものがその動物にとってベストであるというのは迷信  一般的に「野生の猫は小動物を食べているのだから肉を与えていれば良い」とか、「動物成分を多く含んだ高タンパク食は上質である」というイメージがありますが、科学的な観点から見るとまだまだ検証の余地がありそうです。そもそも上記した論法が成立するのだとすると、猫にとってベストの餌はメンフクロウと同じ生々しい子ネズミという事になってしまいますね。猫の栄養と食事