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キャットフードの水分量を増やすと猫の活動量も増えるのか?

 猫のフードに含まれる水分量によって、日々の活動量が変化するかどうかが検証されました(2017.5.18/ニュージーランド等)。

詳細

 調査を行ったのは、ニュージーランド・マッセー大学やオランダ・ヴァーヘニンゲン大学などから成る共同チーム。すべて去勢済のオスの成猫8頭(平均年齢2.5歳 | 平均体重4.19kg | 平均体型5.19/9)を対象とし、タイプが異なる4種類のフードをそれぞれ21日間給餌し、日々の運動量に違いが出るかどうかが観察されました。フードの具体的な内容は以下です。
給餌パターン
  • ウェットフード市販されているものをそのまま与えるパターン。乾燥重量ベースでタンパク質29.3%+脂質8.3%。水分含量は82%。
  • ドライフード市販されているものをそのまま与えるパターン。乾燥重量ベースでタンパク質15.2%+脂質38.3%。水分含量は3%。
  • 乾燥ウェットフード市販のウェットフードにフリーズドライ加工を施し、水分を飛ばしたパターン。水分含量は4%。
  • 加水ドライフード市販のドライフードに水分を加えたパターン。水分含量は70%。
 給餌試験の期間中、猫たちの体重、体型、食餌の摂取量、水分の摂取量、糞便の量と状態、尿の量と状態、日々の活動量を定期的に測定したところ、以下のような事実が明らかになったといいます。
食餌パターンによる猫たちの変化
  • 食餌の摂取量すべての食餌パターンにおいて、平均摂取量は同じだった。
  • 体重・体型調査期間中、全食餌パターンにおいて体型は一定だったが平均体重にはやや違いが見られた(3,990g~3,945g)。
  • 活動量活動レベルが高まるのは規定の食餌時間(午前9:00と午後3:00)前の2時間で、日々の総活動量の33%を占めていた。
    特定期間内における平均活動量、日中の平均活動量、夜間の平均活動量、食餌前の活動量に違いは見られなかった。しかし日中と夜間の平均活動数を比較したところ、高炭水化物のドライフードを摂取しているときに最も大きい比率を示した。
  • 水分の摂取量水分の総摂取量はウェットフードの時が最も多かった。
    食餌経由の水分摂取はウェットフードで最も高く、水分を加えたドライフードで中程度、ドライフードやウェットフードを乾燥させたもので最も少なかった。
    食餌外の飲水量はウェットフード及び加水ドライフードパターンで最も少なかった。
  • 糞便排泄量、糞便中の水分量、糞便スコアリング(緩さの度合い)は食餌パターン間で違いは見られなかった。
  • 尿尿の総排泄量はウェットフードで最も多く、ドライフードで最も少なかった。
    尿比重はウェットフードで最も低く、ドライフード及び乾燥ウェットフードで最も高かった。
 こうした結果から調査チームは、食餌に含まれている水分量が猫たちの活動量に影響を及ぼしてるという証拠は見当たらないとの結論に至りました。ただしドライフードを摂取しているときに見られた「日中の平均活動数が夜間に比べて多くなる」という現象の明確な発生メカニズムはよくわかっていないため、さらなる調査が必要としています。
The effect of changing the moisture levels of dry extruded and wet canned diets on physical activity in cats
D. G. Thomas et al., Journal of Nutritional Science(2017), doi:10.1017/jns.2017.9

解説

 過去に行われた調査では、市販されているドライフードに水を加えたものを与えたところ、室内で飼育されている猫たちの活動レベルが上昇したと報告されています。しかしこの現象の明確な理由まではわかっておらず、また今回の調査でも同じ結果が追認されませんでした。ですから、猫の餌に含まれる水分含量によって活動量が上下動すると断言してしまうのは早計ということになります。
 猫たちの活動レベルの高まりは、食餌パターンにかかわらず食前の2時間に集中していました。この現象の裏にあるのは、猫の狩猟欲求だと考えられます。簡単に言うと「お腹が空いた→獲物を見つけないと!→うろついて食物を探す」ということです。餌を出しっぱなしにしている家庭においてはそれほど明白ではないでしょうが、毎日決まった時間に給餌しているような家庭においては、餌の時間が来る数時間前から猫が家の中をうろつくという光景が顕著に見られるかもしれません。 猫の活動性が高まるのはもっぱら食前の2時間  食餌パターンと水の総摂取量、尿量、尿比重の関係性は直感的に理解しやすいものです。水分含量が高いウェットフード食べてる猫では水分の総摂取量が増え、おしっこが薄くなって尿比重が下がり(水に近くなり)、おしっこの総量も増えます。逆に水分含量が低いドライフード食べてる猫では、水分の総摂取量が減り、おしっこが濃くなって尿比重が上がり(水に溶けてるものが多くなり)、おしっこの総量が減ります。尿比重が上がるという事は、おしっこに含まれている水以外の分子が多くなっているということですので、過飽和による結石の危険性が高まります。これはちょうど、紅茶にたんまりと砂糖を入れたとき、溶けきれなかった分がカップの底に沈殿してしまうのと同じ現象です。結石を防ぐためにはたくさん水を飲ませた方が良いとか、ウェットフードを食べさせた方が良いとよく言われるのはこのためです。 水に溶解しきれなかった成分は結晶化する  興味深いのは、ドライフードと乾燥ウェットフードの水分含量はそれぞれ3%と4%でほぼ同等だったにもかかわらず、食餌外の飲み水の量に関してはドライフードが24.14ml/kg、乾燥ウェットフードが38.57ml/kgと60%近い開きがみられた点です。明確な理由はよくわかっていませんが、フリーズドライ加工された乾燥ウェットフードが猫にとって飲み込みにくかったため、食後になって水が必要になったのかもしれないと推測されています。人間で言うと、パサパサのクラッカーを食べた後、猛烈に水を飲みたくなる感覚に近いのでしょうか。その他の可能性としてはマクロ栄養素の構成比、フードの粘着度などが想定されていますが、猫の飲水量を増やす時の裏技として利用するにはまだまだデータが足りなすぎます。 猫と水