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トイレに不満を抱いている猫が発するサインは?

 異なる環境における猫の排泄行動を観察することにより、猫がトイレに不満を抱いているときに出すサインが明らかになりました(2017.5.25/アメリカ)。

詳細

 調査を行ったのはアメリカ・ミズーリ州にある「Nestle Purina PetCare」のチーム。設定が異なる2つの環境の中に12頭の猫(オス6+メス6 | 全て不妊手術済み | 平均1.7歳)を入れ、排泄行動にどのような変化が見られるのかを観察しました。環境の具体的な内容は以下です。
環境とトイレの設定
  • 病院のような環境狭い室内(71 × 61 × 81 cm)に小さいトイレ(41 × 30 × 10 cm)。猫砂は吸水性がないポリプロピレン製ビーズ355 ml。
  • 豊かな環境広い室内(3.65 × 4.26 m)に大きなトイレ(89 × 89 × 17 cm)。猫砂は吸水性のある砂タイプのものを最低5cm。
 上記「病院のような環境」と「豊かな環境」のそれぞれで数日間の観察を行い、排尿や排便の前後に見られる行動を網羅的に記録したところ、合計39種類もの行動が観察され、トイレに対する不満足のサインとして以下のような項目が候補として浮かび上がってきたといいます。
猫のトイレ不満サイン
  • なかなかトイレに入ろうとしない
  • 体勢を決めるまでに時間がかかる
  • 片方の前足を外に出す
  • 排尿回数が少なく排尿時間が長い
  • 使用後、排泄物の匂いを嗅ぐ時間が長い
  • 使用後、トイレの壁をシャカシャカこする
  • 使用後、何度もトイレに戻る
  • 開始から終了までのトータル時間が長い
 「豊かな環境」(8日間)におけるトイレ外での不適切な排泄が0回だったのに対し、「病院のような環境」(4日間)におけるトイレ外でのおしっこが4回、うんちが5回だったそうです。
 こうした結果から調査チームは、飼育放棄の原因になりうる不適切な排泄を予防するためには、猫が忌避するような要素をなるべく環境中から排除することが重要であると指摘しています。またたとえトイレの外における不適切な排泄がなかったとしても、その猫がトイレに不満を抱いていないことの証拠にはならないとも。
The ins and outs of the litter box: a detailed ethogram of cat elimination behavior in two contrasting environments
McGowan, Ragen T.S., Ellis, Jacklyn J., Bensky, Miles K., Martin, Francois, Applied Animal Behaviour Science, doi.org/10.1016/j.applanim.2017.05.009

解説

 「豊かな環境」における不適切な排泄がゼロだったことから、猫にとって理想的なトイレはだだっ広い砂場のような環境だと考えられます。しかし猫が好むからといって、排泄のために放し飼いにするわけにもいきませんし、砂場のような屋外環境を室内に設けるわけにもいきません。消去法でいくと室内にトイレを設置することになりますが、設定を間違えると粗相につながってしまう危険性があるため要注意です。 猫にとって理想のトイレは、欲を言えば砂場くらいの大きさ  「病院のような環境」では、おしっこの回数が少なくなるかわりに1回ごとの排尿時間が延びました。これはすなわち猫がおしっこを我慢していたことを意味しています。おしっこの我慢は膀胱炎や尿路感染症のリスクを高めてしまう可能性がありますので、猫からの「このトイレ嫌い!」サインに目を配り、適宜アレンジしていく必要があるでしょう。
 おしっこやウンチをした後、トイレの壁や付近の床をシャカシャカこする「壁たたき」(box banging)はドーム型トイレを使っている家庭において頻繁に見られますが、これは猫からの改善提案なのかもしれません。また人間の場合、トイレの中に新聞や雑誌を持ち込んで大人の隠れ家を満喫している人もいますが、猫の場合、トイレの中に長居するのは不満の表れと考えた方がよいでしょう。トイレの設定に関しては以下のページにまとめてありますのでご参照ください。最終目標は、猫がスッと入ってスッと出てくる居心地のよりトイレセッティングを見つけることです。 猫のトイレのしつけ 猫のトイレの失敗