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短頭種と長頭種の猫に対する好みは国や職業によって変動する

 鼻ぺちゃの短頭猫や面長の長頭猫に対する好みは、国や職業によって大きく変動することが明らかになりました(2018.3.1/イギリス)。

詳細

 調査を行ったのはイギリス「Nottingham Trent University」を中心としたチーム。さまざまな国に暮らしている猫の飼い主を対象とし、猫が持つ顔や頭の形が人々の好みにどのような影響を及ぼしているのかを検証しました。内容は、ヨーロッパ(もっぱらイギリス)、アジア(もっぱら中国)、南米(メキシコ、アルゼンチンペルー、ウルグアイ、チリ、エクアドル)などに暮らしている18歳以上の猫の飼い主に対してアンケート調査を行い、7段階に分類した猫の頭部写真に対して好みの度合いを評価してもらうというものです。その結果、以下のような傾向が浮かび上がってきたといいます。 短頭種と長頭種の猫の顔比較
回答者の基本情報
  • 有効回答数=1,239人
  • 女性=92.4%(1,145人)
  • 獣医療や動物保護関係者=18.7%(244人)
  • ヨーロッパ=47.1%(584人)
  • アジア=33.2%(412人)
  • 北アメリカ=11.8%(146人)
  • 南アメリカ=6.5%(80人)
  • オーストラリレイシア=1.4%(14人)
  • 純血種の飼い主=35.6%(441人)
  • 普通の頭の飼い主=52.2%(230人)
  • 短頭種の飼い主=35.6%(157)
  • 長頭種の飼い主=12.2%(54)
猫の頭の形と人間の好み
  • 国にかかわらず極端な短頭種や長頭種への好みは低い
  • 中等度の短頭種や長頭種と普通の猫との間に好みの違いは見られない
  • アジアでは短頭種と長頭種両方に対する好みが他の国より高い
  • 獣医療や動物保護関連の仕事をしている人では短頭種への好みが低い
  • 短頭種を飼っている人は短頭種への好みが強く長頭種への好みが低い
  • 長頭種を飼っている人は長頭種への好みが強く短頭種への好みが低い
In the Eye of the Beholder: Owner Preferences for Variations in Cats’ Appearances with Specific Focus on Skull Morphology
Mark J. Farnworth et al., Animals 2018, 8(2), 30; doi:10.3390/ani8020030

解説

 まず「アジア」という区分の中に含まれているのはもっぱら中国人であることを念頭に置かなければなりません。また回答者の92.4%は女性ですので、厳密に言えば「アジア=中国人女性」ということになるでしょう。今回の調査結果は必ずしも日本に当てはまるわけではないので注意が必要です。とは言え、いくつか有用なデータもあります。
 国にかかわらず、普通の猫の頭(中頭種)とは違う頭の形になればなるほど好みの度合いが減っていくという現象が確認されました。短頭化でも長頭化でも同じ傾向が見られましたが、どちらかといえば短頭化の方が大きくポイントを下げたといいます。人間には、繰り返し目にしたり耳にしたものを無意識的に好む「単純接触効果」という心理現象がありますので、普段目にする機会が多い中頭種の猫に対する無意識的なひいき目があるのかもしれません。あるいは単純に、人間の手が加えられていない猫がもつ造形的な美しさが影響したのかもしれません。レオナルドダヴィンチも「傑作とは小さな猫のことである」と言っているほどですから。
 アジアでは他の国に比べ、短頭種と長頭種両方に対する好みが高くなる傾向が確認されました。中国においてはパグやペキニーズといった短頭犬種が作出されてきたという歴史的な背景があります。自分の顔かたちと似た動物を好むという現象が普遍的なものだとすると、アジア人は目鼻立ちがはっきりした猫よりも平坦な顔の猫を好むという心理的なメカニズムがあるのかもしれません。アジア人の顔は人間における「ネオテニー」(幼形成熟)ではないかという学者(Gould, S.J)がいるのは興味深いところです。ただ短頭種と同時に長頭種に対しても好みを示したと言いますので、それほど単純な話ではないのでしょう。
 獣医療や動物保護関連の仕事をしている人では短頭種への好みが低くなる傾向が確認されました。おそらく短頭種で多く見られる疾患と実際に触れ合う機会があり、治療や管理の大変さを身をもって知っているからだと推測されます。日本においては、高齢者によるペットの飼育放棄が問題視されているにもかかわらず、おじさまが鼻ペチャ猫を飼う漫画が人気を呼んでいます。短頭種の猫で多いとされる呼吸器系疾患、眼科系疾患、内分泌系疾患、神経系疾患を実際に看病してみれば、少しは熱も冷めて「猫好き」と「猫好きビジネス」が区別できるようになるでしょう。 猫が鼻ぺちゃであるほど呼吸に難があることが判明 ペルシャ猫の鼻ぺちゃ(短頭)が水頭症の原因になっている可能性あり