トップ猫の心を知る猫の習性スコ座りをする

スコ座りをする

 猫の習性の一つであるスコ座りをするという点について解説します。
 猫が前足を投げ出し、まるで人間のように座る「スコ座り」(おやじ座り)という姿勢を見せることがあります。猫はなぜこのような行動を取るのでしょうか?

スコ座りとは?

 猫はたまに足を前方に投げ出し、まるで風呂上がりのおじさんがソファーの上でくつろいでいるかのような姿勢を見せることがあります。一般的にこの姿勢は「おやじ座り」、もしくはスコティッシュフォールドにちなんで「スコ座り」などと呼ばれます。ちなみに英語圏での表現は、座禅を組むお釈迦様に因んで「ブッダポジション」(Buddha Position)です。
 「スコ座り」(おやじ座り)は、おおむね以下に挙げる3つのタイプに分類されると考えられます。スコティッシュフォールドにしかできないと勘違いしている人もいますが、よほどの肥満体でない限り、実はほとんどの猫ができます。
スコ座りの3タイプ
  • 背もたれ型 壁やクッションなどを背もたれにして姿勢を保つタイプ。スコ座りの亜型~背もたれ型
  • 腹筋型 腹筋の力で上半身を固定するタイプ。スコ座りの亜型~腹筋型
  • 自立型 背もたれも腹筋も使わず、重力を味方につけて上半身のバランスを取るタイプ。スコ座りの亜型~自立型

スコ座りをする理由

 猫が「スコ座り」をする理由として最も妥当なものは、「腹なめや股なめをするため」というものです。「腹なめ」と胸元から腹部にかけてのエリアを毛づくろいすることで、「股なめ」とは排泄の後、股間をペロペロなめてきれいにする行為のことです。 猫は自分のおなかをなめて毛づくろいすることがある  緩めのウンチをした後にもかかわらず、お尻の周辺が意外に綺麗であることを不思議に思ったことはないでないでしょうか?このミステリーの答えは上記「股なめ」だと考えられます。また、日によって猫の口がまるでドブのように臭いことに驚いたことはないでないでしょうか?人間の場合は「胃腸の調子が悪い」となりますが、猫の場合は単純に股間を舐めた直後であるという可能性の方が大です。 猫は排泄後に自分の股間を舐めてきれいにする習性を持つ  このように、猫は自分で自分のおなかや股間をきれいにするという信じられない習慣を持っており、その時にとる特徴的な姿勢が「スコ座り」(おやじ座り)なのです。一般的にそれほど長時間この姿勢をキープすることはありませんが、中にはこの姿のまましばらくリラックスしている猫もいます。

スコ座り中の骨格

 「スコ座り」(おやじ座り)をしている最中の猫の骨格は一体どうなっているのでしょうか?人間との比較図を見てみましょう。
人間と猫の座位比較図
  • 人間の座位 骨盤を構成している骨のうち「坐骨」(ざこつ)と呼ばれる骨の先端部分を座面につけている。上半身と下半身の折れ目は「股関節」。 人間は坐骨結節を座面に接地して座る
  • 猫の座位 骨盤を構成している骨のうち「仙骨」(せんこつ)と呼ばれる骨の平面部分を座面につけている。上半身と下半身の折れ目は「腰椎」。 猫は仙骨を座面に接地して座る
 上記したように、一見同じような姿勢でも、人間と猫とでは骨格の使い方が随分と違うようです。人間の骨盤には「坐骨結節」(ざこつけっせつ)と呼ばれる部分があり、この部分を座面につけることで上半身の体重を支えています。一方、猫にも坐骨はありますが、人間と同じような体重のかけ方をしてしまうと、しっぽの付け根がポキッと折れてしまいます。そこで猫は「仙骨」(せんこつ)と呼ばれるしっぽの付け根のやや上にある平板な骨を座面につけるという独自の座り方を編み出しました。結果として、腰椎を境目にして上半身と下半身を折り曲げるという軟体人間のような芸当を要求されますが、脊柱が人間や犬より柔かく、また腰椎の数が人間より2個多い猫にとっては、それほど苦痛ではないようです。

なぜスコティッシュフォールドに多い?

 「スコ座り」という表現が示しているように、この座り方はスコティッシュフォールドにおいて頻繁に観察されます。その理由に関して詳しく研究した人はおらず、いまだによくわかっていませんが、ただひとつだけ思い当たる節があります。それは「関節の痛みを避けている」というものです。
スコティッシュフォールドの最大の特徴は折れ曲がった耳  スコティッシュフォールドの最大の特徴は折れ曲がった耳です。この特徴的な耳の形状を成立させているのは、「骨軟骨異形成」による不完全な軟骨であり、「Fd」遺伝子による常染色体優性遺伝であることが確認されています。つまり、母猫か父猫のどちらか一方から「Fd」遺伝子を1つでも受け取ったら発現するということです。
 ところがこの遺伝子は、耳の軟骨に形成不全を引き起こすのみならず、他の関節にも様々な影響を及ぼすことがわかってきました。例えば1999年に行われた調査によると、「Fd」遺伝子を1本でも保有している猫においては、以下のような病変が観察されたと言います。 Osteochondrodysplasia in Scottish Fold cat
「Fd」遺伝子がもたらす病変
  • 中手骨以遠の腫れや変形
  • 中足骨以遠の腫れや変形
  • 前足や後足をひきずる
  • 寒い朝に悪化
  • 尾椎(しっぽ)の硬直化
  • 関節周囲の骨新生
 「中手骨以遠」とは手首から先のことで、「中足骨以遠」とは足首から先のことです。言うまでもなく、これらの関節は体重を支える際に最も多くの負荷がかかる場所で、その分耐久力を要求されます。しかし「Fd」遺伝子を1本でも保有している猫、すなわち耳の折れている全てのスコティッシュフォールドにおいては、早ければ生後6ヶ月頃からこうした関節に慢性炎症や変形性関節症をきたしてしまう可能性があるというのです。理由としては、「成長期における骨の形成不全」、「関節軟骨が不完全であるため磨耗が起こりやすい」、「関節軟骨が薄いため滑液の分泌が不十分」などが考えられます。 正常な猫とスコティッシュフォールドの手首の比較レントゲン写真  さて、手首や足首に違和感や痛みを抱え、なるべく体重をかけたくないと考えている猫がいた場合、どういう姿勢が楽でしょう?うつ伏せになるとか横になるといった姿勢の他、関節を完全に重力から解放できる「スコ座り」という姿勢もまた、猫にとっては楽なのではないでしょうか。この説は仮説の域を出ませんが、スコティッシュフォールドを飼っている家庭においては、筋骨格系の病変を示す以下のような項目を常に念頭に置き、チェックする習慣を持っていただきたいと思います。もし病変の徴候が見られた場合、猫が「スコ座り」をしている理由は、飼い主のウケを狙っているからではなく、手首や足首の関節が痛いからかもしれません。「猫の慢性痛を見つける」を参考にしつつ、猫がなるべく平穏な生活を送れるよう環境改善してみてください。
筋骨格系の痛み・関連症状
  • 高い場所にジャンプできない
  • 高い場所から降りられない
  • 通常であればひとっ飛びできる場所にも中間地点を経由する
  • 敏捷性を失う
  • 動きがたどたどしい
  • 飛び上がった後の着地に失敗する
  • 高い所から飛び降りる前に躊躇する
  • 歩き方が変わる
  • 足を引きずる