トップ猫の文化猫の浮世絵美術館国芳以外の浮世絵師新板風流相生尽・卯春

新板風流相生尽・卯春

 猫の登場する江戸時代の浮世絵作品のうち、新板風流相生尽・卯春について写真付きで解説します。

作品の基本情報

  • 作品名新板風流相生尽・卯春
  • 制作年代1832年(江戸・天保3)
  • 作者歌川国貞
  • 板元江戸屋吉兵衛
新板風流相生尽・卯春のサムネイル写真

作品解説

 「新板風流相生尽・卯春」(しんばんふうりゅうあいおいづくし・うはる)は、右上部にあるコマ絵と手前図とを対比して楽しむ趣向の作品です。作者は歌川国貞(うたがわくにさだ)。
 まず右上部のコマ絵は「竹とスズメ」で、これは古くから日本の画題として存在していたテーマです。「取り合わせがよい」という意味を持ちます。それに対し手前図は着物を着たうら若き女性と、その女性に抱かれたブチ猫。かんざしに飾られているのは小さな糸巻きで、現代で言う「ストラップ」のようなちょっとしたオシャレでしょうか。帯は表と裏で違う柄になっている「昼夜帯」(ちゅうやおび)と呼ばれるもので、着物の柄は歌舞伎役者・七代目市川団十郎が舞台で着て大評判になったと言う「鎌輪ぬ」(「構わぬ」に引っ掛けた一種の謎解き模様)の役者模様になっています。
着物の謎染め「鎌輪ぬ」
着物の謎染め「鎌輪ぬ」  赤い首紐に鈴を付けていることから、抱かれている猫は女性のペットであることが分かります。猫は女性の顔にほほを擦り付けて自分の臭いを残そうとしており、女性と猫が相思相愛で、一つの根元から幹が二つに分かれて伸び、切っても切れないまさに「相生」(あいおい)の関係であることがうかがえますね。