トップ猫の文化猫の浮世絵美術館国芳以外の浮世絵師当世見立忠臣蔵

当世見立忠臣蔵

 猫の登場する江戸時代の浮世絵作品のうち、当世見立忠臣蔵について写真付きで解説します。

作品の基本情報

  • 作品名当世見立忠臣蔵
  • 制作年代1860年(江戸・万延元)
  • 作者落合芳幾
  • 板元堀越
当世見立忠臣蔵のサムネイル写真

作品解説

 「当世見立忠臣蔵」(とうせいみたてちゅうしんぐら)は、人形浄瑠璃および歌舞伎の代表的な演目である「仮名手本忠臣蔵」(かなてほんちゅうしんぐら)の登場人物を猫に見立てて描いた大判錦絵です。作者は落合芳幾(おちあいよしいく)。
 当作品のように歌舞伎役者を猫に見たてて描くという趣向は、芳幾の師匠・歌川国芳(うたがわくによし)が早くも天保12年(1841)に「猫の百面相・忠臣蔵」といううちわ絵作品で発表しています。芳幾も20年近く前の師匠のアイデアに感化されたのかもしれません。
猫の百面相・忠臣蔵
1841年の国芳作品・「猫の百面相・忠臣蔵」
 さて、「仮名手本忠臣蔵」は二代目竹田出雲・三好松洛・並木千柳の合作で、元禄赤穂事件(げんろくあこうじけん=江戸時代中期に発生した赤穂浪士による吉良義央及びその家人の殺害事件)を題材とした演目です。「菅原伝授手習鑑」(すがわらでんじゅ てならいかがみ)、「義経千本桜」(よしつねせんぼんざくら)とならぶ人形浄瑠璃の三大傑作と称されます。
 「仮名手本」(かなてほん)とは本来「いろは歌」のことですが、赤穂四十七士をいろは四十七字にかけ、題名に「仮名手本」という言葉が織り込まれたとされています。全十一段からなり、史実に基づくリアリティあふれる構成は観客を飽きさせず、不況だったり劇場が経営難に陥ったりしたときのカンフル剤として上演されることもあったとか。なおこの作品は文化デジタルギャラリー・「仮名手本忠臣蔵」にて要約されています。
 作中の配役、および簡単な役どころの解説は以下。
「当世見立忠臣蔵」の配役図
「当世見立忠臣蔵」の配役図
1, 高師直(こうのもろとも)  幕府執事。師直が伯州大名の塩冶判官(えんやはんがん)をいじめ抜き、耐えかねた判官は師直を斬りつけるところから物語が始まる。
2, おかる  塩冶判官の武士・勘平の妻。勘平は塩冶判官のお供で外出するが、一人抜け出しておかると逢い引きを楽しんでいた。
3, 早野勘平重氏(はやのかんべいしげうじ)  塩冶判官の武士。おかるとの逢瀬を楽しんでいたその時に、判官が師直に刃傷に及ぶという大事件が発生してしまう。責任を感じた勘平は、切腹をしようとする。
4, 斧九太夫(おのくだゆう)  塩冶家家老。由良助と金の分配をめぐり対立する。
5, 大星由良助義金(おおぼしゆらのすけよしかね)  将軍家から切腹を申し付けられた判官は、家老の大星由良助が来るのを待つ。彼がようやく現れたときは既に短刀を腹に刺した後で、「この九寸五分は汝が形見。切って恨みを晴らせわやい」と由良助に短刀を形見に渡して息絶える。
6, 寺岡平右衛門(てらおかへいえもん)  おかるの兄で、塩冶家足軽。仇討ちを忘れてしまったかのように祇園で放蕩に明け暮れる由良助を、同志たちが切ろうとするも、平右衛門に止められる。