トップ猫の文化猫の浮世絵美術館国芳以外の浮世絵師五拾三次之内猫之怪

五拾三次之内猫之怪

 猫の登場する江戸時代の浮世絵作品のうち、五拾三次之内猫之怪について写真付きで解説します。

作品の基本情報

  • 作品名五拾三次之内猫之怪
  • 制作年代1847年(江戸・弘化4)
  • 作者歌川芳藤
  • 板元未詳
五拾三次之内猫之怪のサムネイル写真

作品解説

 「五拾三次之内猫之怪」(ごじゅうさんつぎのうちねこのかい)は、「尾上梅寿一代噺」(おのえきくごろういちだいばなし)の中に登場する化け猫をモチーフとした大判錦絵で、作者は歌川芳藤(うたがわよしふじ)です。
 タイトルにある「五拾三次」とは「独道中五十三駅」(ひとりたびごじゅうさんつぎ)のことであり、かの有名な東海道五十三次を舞台に取り入れた先駆的な作品です。この作品からは「初春五十三駅」(うめのはつはるごじゅうさんつぎ)、「尾上梅寿一代噺」(おのえきくごろういちだいばなし)といったスピンオフ作品が登場しており、当作品で芳藤がモチーフに用いたのはこのうち「尾上梅寿一代噺」だと思われます。
 さて、1847年7月より市村座で上演されたこの歌舞伎舞台では、簾(すだれ)を破って巨大な顔の猫が登場する場面が大評判となりました。この場面に着想を得て芳藤が手がけた絵の中では、大小の猫合計9匹が化け猫の顔を作っています。三毛の模様が微妙な陰影を浮かび上がらせ、目は鈴、口の中から見える赤い舌は猫の首紐です。
 当作品は小さな絵を組み合わせてまったく違う絵を組み上げる「はめ絵」の一つですが、同じく芳藤の手による作品としては小猫をあつめて大猫とするが有名でしょう。