ユネスプ・ペインスケール

 「ユネスプ・ペインスケール」(UNESP Botucatu Multidimensional Composite Pain Scale)は、ブラジル・サンパウロにある公立大学「パウリスタ・ジューリオ・デ・メスキタ・フィーリョ州立大学」(UNESP)の医学部が考案した痛みの評価マニュアルです。このペインスケールの特徴は、「多次元的」(Multidimensional)という言葉が示す通り、猫の様子を観察するのみならず、バイタルサインをチェックしたり、触診に対するリアクションを観察するなど、多角的な評価基準を取り入れている点です。
 まず手術を受ける前の猫を観察し、普段どういった行動をとるのかについてある程度把握しておきます。その後手術を行い、病院内のケージに入れ、疼痛の評価を行います。基本的な流れは「ケージに入っている猫を観察する→猫にゆっくりと近づいてケージを開ける→猫をケージの外に出す→猫を寝かせて血圧をチェックする→触診する」というものです。この流れに沿って動いている間に、猫の様子や反応をよく観察しておきます。
 家庭内で使用するときは、「ケージ」を「普段よく使う休憩場所」に置き換えるとよいでしょう。また血圧の計測は割愛して結構です(※このページは、猫に関する総合情報サイト子猫のへやの一部です)。

ケージに入っている猫を観察する

【 さまざまな行動 】

以下に示すA~Dの行動の中で、観察される数をカウントする。
A
静かに寝ているが尻尾は動いている(→参考動画
B
後ろ足を伸縮している/わき腹を収縮させている(→参考動画
C
半分目を閉じている(→参考動画
D
手術痕(痛む場所)を舐めたり噛んだりしている(→参考動画

【 姿勢 】

猫にゆっくりと近づいてケージを開ける

【 鳴き声 】

【 居心地 】

猫をケージの外に出す

【 活動性 】

【 態度 】

以下に示すA~Eの行動の中で、観察される数をカウントする。
A
警戒心がなく周囲の環境に興味を抱いている/人に対して友好的で交流しようとする(→参考動画
B
おもちゃや遊びに興味を示さず、呼んだり撫でたりしても反応が薄い(→参考動画
C
周囲を見渡したり探索しようとしない(→参考動画
D
隠れたり逃げたり、触られるとすぐにうなったり威嚇しようとする(→参考動画
E
触られると引っ掻こうとしたり噛み付こうとする(→参考動画

【 食欲 】

血圧をチェックする(家庭ではパス)

触診する

【 おなかや脇腹を触った時の反応 】

【 手術部位を触った時の反応 】

ポイント累計

 すべての項目をチェックした後、ポイントを累計します。鎮痛剤などによる介入が必要となるのは8ポイントからとされています。ただしポイントが低くても明らかに痛みを感じている場合は、獣医師の判断で疼痛管理を行うという柔軟性も必要です。痛みの度合いと総合ポイントとの相関関係は以下です。
参考:UNESP Botucatu Multidimensional Composite Pain Scale