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猫向けノミダニ駆除製品「ブラベクト®スポット猫用」の効果と副作用

 猫のノミダニ駆除と予防を目的として販売されている「ブラベクト®スポット猫用」。含まれている成分の効果から副作用までを論文と出典付きで詳しく解説します。

ブラベクト®スポット猫用とは?

 「ブラベクト®スポット猫用」とはフルララネル(fluralaner)を有効成分とする猫向けのノミ・マダニ駆除製品。日本国内ではスポット(滴下式)が動物医薬品として認可されています。

フルララネルの効果

 ブラベクト®スポット猫用の有効成分であるフルララネルは、日産化学工業株式会社が発明したイソキサゾリン系化合物の一種。節足動物のγ-アミノ酪酸(GABA)作動性塩素イオンチャンネルに作用し、塩素イオンの神経細胞流入を阻害することで過剰な興奮を引き起こし、ノミやマダニを死亡させます。また同時に、節足動物のグルタミン酸作動性塩素イオンチャンネルにも作用し、ダブルの殺虫効果を示すとされています。 ブラベクトスポット猫用の有効成分「フルララネル」の分子構造

フルララネルの安全性

 フルララネルに関してはラットを対象とした毒性試験が行われています。具体的には以下で、「NOEL」とは 毒性試験期間中に試験物質を与え続けても、動物に何の影響も認められない最大の投与量、「NOAEL」は毒性試験期間中に試験物質を与え続けても、動物に有害な影響がみられない最大の投与量という意味です。単位は体重1kg当たりで示しています。
フルララネルの毒性・ラット
  • 経口半数致死量→2g超
  • 急性摂取のNOAEL→1g超
  • 慢性摂取のNOAEL→1日50mg
 投与動物は猫ですので、当然ながら猫を対象とした毒性試験も行われています。まず生後11週齢の子猫を8頭ずつ4つのグループに分け、体重1kg当たり93~465mgという高濃度のフルララネルを8週間隔で3回に渡って滴下投与した結果、有害事象は見られなかったとしています。
 また生後6~7ヶ月齢の猫6頭を対象とし、体重1kg当たり93mgのフルララネルを経口投与したところ、一過性の流涎(よだれ)、咳、舌噛み行動が見られたものの、血液検査や組織学的な検査において異常は見られなかったといいます。
 さらに2013年から2015年の期間、日本国内にある25の動物病院においてブラベクト(40~94mg/kgw)を合計60頭の猫たちに滴下投与したところ、投与から3ヶ月の間に報告された有害反応はなかったといいます。 MSDアニマルヘルス公式情報

フルララネルの毒性・危険性

 ブラベクト®スポット猫用の有効成分であるフルララネルは新たに発見された成分であり、猫向けの商品が日本国内の市場に出回り始めたのが2018年とつい最近のことです。ですから市場に出回ってから初めて、メーカーすら想像していなかった思わぬ副作用が生じてしまう危険性があります。
 ブラベクトと同じスポットオン(滴下)式のノミダニ駆除剤としては「フロントライン」が有名ですが、こちらの有効成分である「フィプロニル」は皮脂腺に吸収され、皮脂とともに全身に行き渡るものの血中にはほとんど入りません。
 一方、ブラベクトの有効成分である「フルララネル」は、皮膚から吸収された後、血管から血流に入ることで全身に行き渡ります。つまり成分が臓器が接触するということです。蓄積量が多い順は脂肪組織、肝臓、腎臓、筋肉ですので、皮膚や被毛のほかこうした臓器にも副作用が生じる危険性が高まります。 フルララネルの経皮的吸収イメージ  ラット、犬、猫の肝ミクロソームを用いて体内における代謝をシミュレーションしたところ、フルララネルの90%以上が変化を受けなかったといいます。この事実から大部分は便中にそのままの形で排出されるものと推測されています。しかし逆の見方をすれば10%は代謝されるということです。実際、欧州薬品局(EMA)の製品情報ファクトシートでは、滴下部における炎症、紅斑、かゆみなどの皮膚反応がおよそ2.2%、無気力・無関心、元気喪失、振戦(ブルブル震える)、食欲不振が0.9%、嘔吐、流涎(よだれ)が0.4%の割合で見られたと記載されています。
 こうした副作用事例は、肝臓などで代謝を受けた10%のフルララネルおよびその代謝産物によってもたらされたのかもしれませんし、賦形剤(添加剤)として用いられているジメチルアセトアミド、グリコフロール、ジエチルトルアミド(DEET)、アセトンなどによって引き起こされたのかもしれません。
 なおフルララネルは血漿蛋白との結合力が強いため、同じ性質を有した薬剤と競合し、それぞれの効果が弱まってしまう可能性があります。具体的にはNSAIDs(非ステロイド性消炎鎮痛剤)、ループ利尿剤、炭酸脱水酵素阻害薬、ACE阻害剤の一部、抗凝固剤などです。事前の投与実験で競合作用は確認されていないものの、理論上は起こりえます。

アメリカでの副作用事例

 2018年、アメリカ食品医薬品局(FDA)はイソキサゾリン系のノミダニ駆除剤が一部の犬や猫に対して神経系の副作用を引き起こすとして警告を発しました。具体的にはフルララネルを有効成分とする「ブラベクト」やアフォキソラネルを有効成分とする「ネクスガード」(※犬専用)などです。症状はひきつけ、振戦(ぶるぶる震える)、運動失調(足元フラフラ)が多く、副作用が疑われる場合は速やかに報告するよう勧告しています。

日本での副作用事例

 日本国内の動物医薬品データベースでは死亡例を含めたいくつかの副作用事例が報告されています。しかし製品との因果関係があやふやだったり、使用法を遵守しないいわゆる「オフラベル」の使い方が原因になった可能性もあるため、本当に副作用や死の引き金になったのかどうかはよくわかっていません。一例を挙げると「用量を守らなかった」「11週齢未満の子犬や1.2kg未満の子猫に使った」「使用期限の切れた古い商品や保存状態の悪い商品を使った」などです。 スポット式の滴下薬では猫同士のアログルーミングに要注意  また猫で最も多いと考えられるのは、自分自身の滴下部をなめたり、同居猫(もしくは犬)の滴下部をなめてしまうという経口ルートでしょう。猫にはグルーミングという習性がありますので、滴下部を間違えてしまうと口が届いてしまうかもしれません。また同居動物に滴下した後、猫の行動をしっかり監督していないと、まだ湿った部分を舐め取ってしまうかもしれません。
 製品の添付文書では「複数飼育の場合は、個体間でのノミ及びマダニの再寄生を最小限にするため、全頭に投与することが望ましい」と記載されていますが、中毒のきっかけにもなりますので滴下後は飼い主が猫たちの様子を注意深くモニタリングしておく必要があるでしょう。

ブラベクト®スポット猫用

 ブラベクト®スポット猫用はフルララネルを有効成分とする猫向けスポット(滴下式)ノミダニ駆除剤。1回の投与でおよそ3ヶ月間(12週間)、ノミとダニに対する駆除効果が持続するとされています。ノミやダニに対して95%の致死効果を発揮するのに必要な最低血中濃度はそれぞれ20ng/mLと90ng/mLで、体重1kg当たり40mgを投与すれば上記した濃度に至るとされています。駆除効果はネコノミなら12時間以内、ダニなら48時間以内に現れ始め、投与から5~14日で血中濃度が最大値に達した後、緩やかに下降し始めます。【公式】ブラベクト®スポット猫用 ブラベクトスポット猫用のパッケージ

ブラベクト®スポット猫用の使い方

  • いつから使える?使用条件は11週齢以降および体重1.2kg以上とされています。
  • 使用頻度は?ノミダニに対する効果が3ヶ月であることから3ヶ月に一度の使用が望ましいとされています。
  • 使用期間は?ノミやダニは通年性で生息していますので1年中(4回)使用することが望ましいとされています。
  • 料金は?動物病院、猫の体の大きさ(体重)、体重に連動したピペットのサイズ、使用頻度によって合計費用は変動しますが、病院で処方される1本の料金は3,000~4,000円程度です。なお要指示薬には指定されていませんが、基本的には獣医師による診察と処方が理想とされます。
  • 使い方は? 猫の肩甲骨の間の被毛をかき分け、皮膚の上に直接滴下します。以下の動画を参考にしてください。 【公式動画】ブラベクト猫用の付け方
  • 使用量は?1mL中に含まれるフルララネルは280mgで、体重1kg当たりの最低推奨量は40mgです。体重ごとに以下のような使用基準が設けられています。なお猫の体重が12.5kgを超えるような場合、一番大きいLサイズに加えて小さいサイズのピペットを滴下します。
    ✓1.2~2.8kg未満→0.4mL(S)
    ✓2.8~6.25kg未満→0.89mL(M)
    ✓6.25~12.5kg未満→1.79mL(L)
  • 使用上の注意は?使用する際の注意点は「用法(11週齢以降+1.2kg以上)や用量(40mg/kg)を厳守すること」「獣医師指導のもとで与えること」「猫以外の動物(犬やウサギ)には使用しないこと」「直射日光、高温多湿を避けること」「使用期限が過ぎたものを使わない」などです。また滴下前の入浴制限はありませんが、滴下後は3日ほどシャンプーやお風呂を控えたほうが良いとされています。なお添付文書には元気喪失、食欲不振、重度の皮膚有害反応、発熱、下痢といった副作用が生じる可能性が記載されています。

ブラベクト®スポット猫用の効果

 以下でいくつかの調査結果をご紹介しますが、注意すべきはノミやダニがそもそも体につかないようにする防虫効果はないという点です。効き目が早いと言っても数時間は体の上で生息しているため、猫が虫に噛まれてしまう可能性は否定できません。公式の添付文書でも、ノミやダニが媒介する病気に対する予防効果は検証していないと明言しています。なおフルララネルとモキシデクチンの両方を含んだ「ブラベクト®プラス」は日本国内で認可されていませんのでご注意ください。

ネコノミへの効果

 「Zoetis」の調査チームは猫たちをランダムで8頭ずつ2つのグループに分け、一方にだけブラベクト(フルララネル40mg/kg)を投与してネコノミに対する効果を検証しました。投与前日および投与から2週間に一度のペースで100匹のネコノミに暴露し、12週間におよぶ観察を行ったところ、未治療のグループと比較した時の駆除率(有効性)はどのカウントポイントにおいても93.4~100%だったといいます。また試験90日目に20匹が回収された1頭を除き、目立った副作用は見られなかったとも出典資料:Vatta, 2019)
 カンザス州立大学の調査チームは、アメリカフロリダ州の一般家庭で飼育されているペット猫を対象としてフルララネルの効果を検証しました。ネコノミへの自然感染が確認された31頭の猫たちの体からノミを回収して数をカウントしたところ、幾何平均で11.4匹だったといいます。次いでフルララネル(40mg/kg)を1回滴下し、一定の評価ポイントを設けて86日間に及ぶモニタリングを行ったところ、投与後における駆除率が96.6~100%だったといいます。この数値は86日後のタイミングにおいても保たれていました。
 また猫が暮らしている20世帯の家からネコノミを回収して生息数をカウントしたところ、投与前の幾何平均が32.4匹だったのに対し、投与後のそれは0.1~7.2匹にまで激減したとも。さらに猫のそう痒症(後ろ足でカキカキすること)の度合いを飼い主の主観で評価してもらったところ、投与前の5.9が投与後は0.9~2.6にまで軽減したそうです出典資料:Dryden, 2018)

マダニへの効果

 「Zoetis」の調査チームは猫たちをランダムで8頭ずつからなる2つのグループに分け、一方にだけブラベクト(フルララネル40mg/kg)を投与してマダニ(Ixodes ricinus)に対する効果を検証しました。投与直前に50匹のマダニに暴露した後、26→54→82→89日目のタイミングで繰り返し暴露し、48時間待った上でダニの生存数をカウントしたところ、28日目における駆除率が100%と良好だったものの、日を追うごとに効果は薄れていき、56日目には82.8%、84日目には67.1%、91日目には73.3%にまで低下したといいます。また滴下部位がぎとぎとになってスパイク状になり、白い粉のようなものが頻繁に観察されたとも出典資料:Geurden, 2017)

麻痺ダニへの効果

 「MSD」の調査チームは猫たちをランダムで2つのグループに分け、一方にだけブラベクト(フルララネル40mg/kg)を滴下して効果を検証しました。投与前日および投与から14→28→42→56→70→84日後のタイミングで未吸血のメスの麻痺ダニ(Ixodes holocyclus)10匹に繰り返し暴露し、時間をおいて生存数をカウントしたところ、初回投与48時間後における数はゼロだったといいます。また投与後の反復暴露から72時間おいてカウントしたダニの数も、すべての評価ポイントにおいてゼロでした(駆除率100%)出典資料:Fisara, 2018)

シカダニへの効果

 「Zoetis」の調査チームは猫たちを8頭ずつ2つのグループに分け、一方にだけブラベクト(フルララネル40mg/kg)を投与してシカダニ(Ixodes scapularis)に対する効果を検証しました。投与から5→12→26→40→54→68→82→88日後のタイミングで未吸血のメスのシカダニ50匹に繰り返し暴露し、未治療グループと比較したところ、70日目までの駆除率はどの評価ポイントにおいても99.3%以上を記録したといいます。84日目では90.1%とやや下がりましたが、ダニが多く見られた猫では滴下量が推奨より4~12%少ないことが判明しました出典資料:Vatta, 2019)

耳ダニへの効果

 製品の効能書きには記載されていませんが、耳ダニを対象とした実験も行われています。MSDの調査チームは猫たちを8頭ずつからなる2つのグループに分け、耳ダニ(O.cynotis)50~100匹に暴露した上で一方にだけブラベクト(フルララネル40mg/kg)を滴下し効果を検証しました。その結果、14日目と28日目のタイミングで回収された生きた耳ダニの数に関し、滴下グループはいずれも0匹だったといいます。ただしこの調査では効果が12週間(3ヶ月)持続するかどうかまでは検証されていません出典資料:Taenzler, 2017)
ノミ皮膚炎」や「マダニ症」もあわせてご覧ください。皮膚症状だけでなく、寄生虫が保有する細菌やウイルスが重大な感染症を引き起こす危険性もあります。