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犬の血液から作った目薬で子猫が失明を免れる

 犬の血液から作った目薬により、角膜に重度の潰瘍を患った子猫が失明を免れるという出来事がありました(2016.4.11/アメリカ)。

詳細

 2016年の4月始め、アメリカ・カリフォルニア州にある「サクラメント動物愛護協会」(SSPCA)に生後間もない2匹の子猫が運ばれてきました。民家の裏庭に捨てられていたというこの2匹は痩せこけており、そのうち1匹は両眼に重度の角膜潰瘍を抱えていたと言います。このまま放置すると失明を免れないほど深刻な状態でしたが、協会は一風変わった方法でこの危機を回避します。それが「血清点眼」です。 ヘルペスによって角膜に重度の潰瘍を患った子猫  血清点眼とは、血液を遠心分離して血球成分を取り除き、サラサラの血清成分だけを目薬にする治療法のことで、傷ついた角膜の再生を促す効果があると言われています。目薬の元となる血液を提供したのが、スタッフの飼い犬であるシーズー×ラサ・アプソのミックス犬「ジェミー」。数十ccの血液を取り出して血清点眼を生成し、2時間に1度のペースで腫れ上がった子猫の眼球に点眼しながら様子を見ました。その結果、片方の目は間に合わなかったものの、もう片方の目は順調に回復し、視力を失わずに済んだそうです。 血清点眼のもととなる血液を提供した「ジェミー」  同協会はこれまでも、この「血清点眼」によって数多くの子猫を救ってきたとのこと。猫の血液からも作ることができますが、体が一回り大きい犬から採取した方が体への負担が少なくて済むと言うことです。 供血犬ジェミーと両目失明の危機を回避した子猫 Rescue dog donates blood so orphaned KITTEN can see again

解説

 上記した「血清点眼」は人医学の分野でも用いられることがあります。採取した血液を遠心分離にかけて血球成分を除去し、残った血清を生理食塩水で希釈して作ります。通常はカビや雑菌の繁殖を抑える防腐剤が含まれていないため、使用期限が短い半面、角膜への負担が少ないという特徴を持っています。また血清成分に含まれるサイトカインや成長因子には、角膜上皮細胞の分化・増殖を促進する効果があるといわれています。適用疾患はドライアイ、シェーグレン症候群、角膜上皮欠損などです。