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スコティッシュフォールドの耳折れと病気に関わる遺伝子が特定される

 スコティッシュフォールドの耳折れと関節の障害を同時に生み出していると考えられる原因遺伝子が特定されました(2016.4.15/アメリカなど)。

詳細

 調査を行ったのはアメリカとオーストラリアの共同研究チーム。スコティッシュフォールドに特有の耳折れや手先足先の障害、骨と関節の進行性の変形の原因となっている遺伝子部位を特定するため、ヨーロッパ、オーストラリア、アメリカから集められたスコティッシュフォールド44頭、スコティッシュショートヘアー(耳折れ個体の同腹仔で耳が折れてないもの)22頭、ブリティッシュショートヘア14頭、セルカークレックス13頭、ペルシア5頭を対象としてDNA検査を行いました。 スコティッシュフォールドの耳折れは「TRPV4」遺伝子によって生み出されている  その結果、細胞のカルシウム透過性イオンチャンネルに関わる「TRPV4」と呼ばれる遺伝子の「V342F」という部位が、どうやら骨や軟骨の異常に関わっているらしいことが明らかになったといいます。また、特に重度の骨軟骨異形成個体3頭をレントゲン撮影したところ、すべての個体において手先の骨(手根骨)と足先の骨(足根骨)の短縮化と奇形、手の関節(手根関節)と足の関節(足根中足関節)における隙間の狭小化、遠位足根骨と近位中足骨に沿った関節周辺部での骨新生が観察されたとのこと。要するに「手足の関節が変形をきたしている」ということです。
 骨格系の障害発生メカニズムとしては、「TRPV4」変異種では筋緊張低下に対する反応が敏感で、筋肉や関節に入ってくる機械的刺激の変換仕様が変わり、結果として軟骨細胞内の反応を変化させて形成不全が生じているのではないかと想定されています。 A dominant TRPV4 variant underlies osteochondrodysplasia in Scottish fold cats

解説

 スコティッシュフォールドと同じ遺伝子部位「V342F」に変異を持った人間では、脊柱後弯症(せむし)、扁平椎、長骨骨幹端解離、胴体の短縮化といった症状を示すことが確認されています。猫と人間とで障害の発生部位が異なる理由は、二足歩行の人間では脊柱にかかる力が大きいのに対し、四足歩行の猫では四肢先端に掛かる力が大きいからではないかと推測されています。つまり背骨に大きな負荷がかかる人間では主として脊柱が変形し、手足の先端に大きな負荷がかかる猫では主として四肢の先端が変形するということです。 スコティッシュフォールドにスコ座りが多いのは、体が柔らかいからではなく手足の関節が痛いから  日本国内においてはスコティッシュフォールドの人気が異常なほど高く、必ずトップ3品種に入っています。人気の理由は、単純に「耳が折れていてかわいい」というものですが、毛に覆われた手足の先端では、関節の変形によって慢性的な痛みが発生しているという事実を、ブリーダーも、ペットショップの店員も、子猫を紹介する軽薄な動物番組も伝えることはありません。関節の障害は、両親から1本ずつ耳折れ遺伝子を受け継いだ耳折れ個体だけでなく、両親のどちらかから1本だけ遺伝子を受け継いだ個体においても発生することが確認されています。この品種を慢性的な痛みから解放する最も確実な方法は、イギリスのようにこの品種の繁殖自体を禁止してしまうことです。苦しむことがわかっているのに猫の繁殖を続ける事が、動物虐待以外の何物でもないという意識が人々の間に根付けば、日本における異常な耳折れ人気もいくらか収まってくれるのではないでしょうか。 スコ座りをする(猫の習性)