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ネコモルビリウイルスの日本国内における感染率調査

 腎臓病との関連性がかねてから噂されている新興のネコモルビリウイルスに関し、日本国内における大規模な感染率調査が行われました(2016.12.8/日本)。

詳細

 調査を行ったのは、国立感染症研究所・獣医科学部のチーム。東京都内に暮らしている性別や生育環境がばらばらな猫合計100頭を対象に、尿と腎臓組織におけるネコモルビリウイルスの陽性率を調査しました。
ネコモルビリウイルス
 2012年に香港で初めて報告された新興のウイルス。不明な部分が多いが、ヒトの「麻疹」や犬の「イヌジステンパー」と同様、RNAウイルスの一種「モルビリウイルス」に属していると考えられている。モルビイリウイルスの一種麻疹ウイルス
 調査の結果、29頭がモルビリウイルスに対する血清抗体を保有していたり、尿中や腎臓組織内にウイルスRNAを持っていたと言います。
 ウイルスRNAと血清抗体の有無から調査チームは、猫たちを3つのカテゴリに分類しました。RNAを持っている(+)けれども血清抗体を持っていない(-)猫は、感染したのがごく最近でまだ血清中に抗体が現れていないことを意味し、RNAを持っていないけれども血清抗体を持っている猫は、感染した後に免疫系がウイルスを駆逐しまった可能性を示しています。
抗体とRNAの保有状況
  • RNA(+)で抗体(+)→14%
  • RNA(+)で抗体(-)→8%
  • RNA(-)で抗体(+)→7%
 合計100頭のうち、生涯のどこかの段階でウイルスに感染した疑いがある猫が29頭(29%)で、さらにそのうち14頭(48%)がウイルスRNAと血清抗体を併せ持っているという事実から、日本国内に暮らしている猫のうち、多ければ14%(7頭に1頭)程度がウイルスを慢性的に体内に保有したまま暮らしているという可能性が浮き彫りになりました。
Epidemiological and pathological study of feline morbillivirus infection in domestic cats in Japan
Eun-Sil Park, Michio Suzuki, Masanobu Kimura,et al. BMC Veterinary Research(2016) doi: 10.1186/s12917-016-0853-y

解説

 ネコモルビリウイルスに何の病原性もなければ大した問題にはなりませんが、残念ながらそういうわけにはいきません。香港のケースでは尿細管間質性腎炎(TIN)との関連性が指摘され、ドイツのケースでは下部尿路症候群(LUTD)との関連性が指摘されています。また2013年に日本国内で行われた簡易調査でも、腎炎組織の40%(4/10)でウイルスが検出されたとされています(→詳細)。
 今回の調査でも、感染が認められなかった猫71頭のうち腎織内に炎症性病変が見つかったのが44頭(62%)だったのに対し、感染が疑われた猫29頭のうち26頭(90%)までもが病変を抱えていたといいます。こうした事実から調査チームは、病変の重症度とウイルス感染との間に統計的な関連性は見つからなかったものの、このウイルスが炎症性病変の発生と何らかの関連性を持っていることはほぼ間違いないだろうとの結論に至りました。ただしウイルスの保有が病変の原因なのか結果なのかは現時点ではよくわからないとしています。
 ウイルスの伝播は動物病院、ペットホテル、繁殖施設、多頭飼いの家庭など、猫同士が接するあらゆる状況で起こりえます。今回の調査では不妊手術を受けていないオス猫で最も高い感染率が確認されました。去勢済みのオスの感染率が26%であるのに対し、未去勢のオスの感染率が48%と、明らかに高い値を示しています。下の棒グラフ中、赤い部分が「感染あり」の割合です。 猫の不妊手術ステータスとモルビリウイルス感染率の関連性  この事から、男性ホルモンを高いレベルで保有しているオス猫特有の行動が、感染の機会を増やしているものと推測されます。例えば、外を出歩く時間が多いとか他のオス猫と喧嘩をする機会が多いなどです。これらの状況は幸い、猫に不妊手術を施して完全室内飼いにすればほぼ回避できると考えられます。 猫の去勢と避妊手術 猫を飼う室内環境