トップ2016年・猫ニュース一覧2月の猫ニュース2月12日

腎移植後のドナー猫に健康被害はあるのか?

 アメリカ獣医療協会(AVMA)は、腎移植のレシピアント猫(受ける側)ではなくドナー猫(提供する側)の追跡調査を行い、手術が健康にどのような影響を及ぼすのかをデータ化しました(2016.2.12/アメリカ)。

詳細

 調査の対象となったのは、1998~2013年の間に、2つある腎臓の内の片方をドナーとして提供した猫合計141頭。手術時の平均年齢は1.5歳、退院までの平均日数3.6日(2~8日)です。
 協会が3ヶ月~15年(平均10年)の間隔を空けて99頭に対して追跡調査を行ったところ、6頭(6%)が尿路関連の疾患を発症し、そのうち3頭が慢性腎不全、2頭が急性腎障害、1頭が膀胱炎だったといいます。また9頭(9%)で死亡が確認され、そのうち2頭が慢性腎不全、4頭が急性尿管閉塞だったとも。
 追跡調査時、84%の猫では特別な問題が報告されなかったことを受け、協会は「ドナー猫における周術期の健康状態は、十分に許容範囲と考えられる」と締めくくっています。 Perioperative morbidity and long-term outcome of unilateral nephrectomy in feline kidney donors 術用顕微鏡下で行われる猫の腎移植手術

解説

 アメリカでは猫に対する腎臓移植が1980年代後半から行われており、結構長い歴史を持っています。レシピアントとなるのは、慢性腎不全を抱えて他の治療法が効かなくなってしまったような重症例の猫です。一方ドナーとしては、一般家庭で飼われている猫のほか、研究機関で飼育されている実験用の猫が用いられることもあります。
 猫の腎臓移植に際し、よく挙がってくる問題としては以下のようなものがあります。経済的、倫理的な問題がたくさんあるため、気軽に受けられる手術とは言えないようです。
猫の腎移植に関わる問題
  • レシピアントの問題手術における死亡率が高く、腎移植自体が死因になることも多い/手術後は一生涯免疫抑制剤を飲み続ける必要がある/ドナーとなった猫の面倒を見る必要がある/術前術後における経済的な負担が大きい
  • ドナーの問題手術のリスクを一方的に背負わせる/術後の健康障害が懸念される
 猫の腎移植は日本においてはほとんどなじみがありませんが、ごく少数の機関ではひっそりと行われているようです。国内においてドナーとなるのは、実験用に飼育されている猫たちです。術後の猫たちは依頼者が引き取って終生飼養することが通例となっていますので、形式的には「君を施設から救い出してあげよう。そのかわり腎臓を1つくれ」といった感じになります。
 仮にドナーとなる猫が見つかって腎臓移植を受けようとした場合、レシピアントとなる猫には以下に示すような運命が待っていると考えられます。データを見る限り、手術における死亡率が「22.5~30%」とかなり高いようです。これは、腎移植が術用顕微鏡下で行う極めて繊細な手術だからでしょう。また6ヶ月生存率は「59~65%」、 3年生存率は「40~42%」といったところでしょうか。

1987~1996年の統計

  • 調査対象数=66頭
  • 手術による死亡率=29%(19頭)
  • 平均生存日数=26ヶ月
  • 出典=こちら
 47頭(71%)が退院し、平均生存日数は26ヶ月、中央値は22ヶ月だった。追跡調査中に28頭の死亡が確認された。内訳は発作に関連した合併症7頭、腎茎合併症4頭、腎臓の合併症が9頭(15ヶ月生存)、免疫抑制が8頭(12ヶ月生存)。

1992年の報告

  • 調査対象数=23頭
  • 手術2週間以内の死亡率=30.4%(7頭)
  • 8.4ヶ月生存率=56%(9/16頭)
  • 12.6ヶ月生存率=43%(7/16頭)
  • 出典=こちら
 シクロスポリンとプレドニゾロンによる免疫抑制作用により拒絶反応による死亡は確認されなかった。

1987~2003年の統計

  • 調査対象数=169頭
  • 感染症発症率=43頭(25.3%, 合計47種類)
  • 出典=こちら
 感染症の内訳は、バクテリア25頭(53.2%)、ウイルス13頭(27.7%)、菌6頭(12.8%)、原虫3頭(6.4%)。手術後平均2.5ヶ月で発症し、死因の内では2番目に高い14%を記録した。糖尿病を合併している場合、感染症のリスクが高まる。

2008年の報告

  • 調査対象数=60頭
  • 手術による死亡率=22.5%
  • 全体の生存中央値=613日
  • 6ヶ月生存率=65%
  • 3年生存率=40%
  • 出典=こちら
 退院後の合併症としては、高血圧(9頭)、拒絶反応(8頭)、感染症(22頭)、うっ血性心不全(7頭)、移植後臓器機能障害(5頭)、発作(2頭)などが確認された。年齢、体重、血圧が影響している。

1996~1999年の統計

  • 調査対象数=61頭
  • 6ヶ月生存率=59%
  • 3年生存率=42%
  • 出典=こちら
 術前の高窒素血症は、術後の中枢神経系機能障害につながりやすい。年齢が高いほど術後の生存日数が短くなる。