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猫におけるエンセファリトゾーンの感染率

 外を出歩く機会がある猫の血液を調べたところ、ウサギの斜頚を引き起こすことで知られる「エンセファリトゾーン」に高い確率で感染していることが明らかになりました(2016.7.13/日本)。

詳細

 「エンセファリトゾーン」(Encephalitozoon cuniculi)とは、小さな昆虫から大きな哺乳類までありとあらゆる動物に感染する単細胞生物「微胞子虫」の一種。免疫力が低下した時にだけ発症する日和見感染症の原因生物として知られています。一般的にはウサギ、げっ歯類、犬、人間に感染しますが、北里大学獣医学部が行った調査により、外に出る機会がある猫では高確率で感染歴があるという事実が判明しました。エンセファリトゾーン(Encephalitozoon cuniculi)はウサギの斜頚を引き起こすことで有名な単細胞生物  調査チームは2011年9月から2012年9月までの1年間、不妊手術のため長野県内にある動物病院に連れてこられた猫合計295頭を対象に血液検査行い、一体どの程度の割合でエンセファリトゾーンに対する抗体を保有しているかを調べました。その結果、以下のような結果になったといいます。なお「野良猫」とは飼い主がおらず屋外で生活している猫、「飼い猫」とは室内と屋外を行き来できるペット猫のことです。
猫のエンセファリトゾーン陽性率
  • 全体=6.1%(18/295)
  • オス猫=6.3%(6/96)
  • メス猫=6.0%(12/199)
  • 野良猫=8.3%(11/132)
  • 飼い猫=4.3%(7/163)
 オス猫とメス猫、および野良猫と飼い猫との間に若干の格差は見られたものの、統計的に有意とまでは言い切れませんでした。また、エンセファリトゾーンとメジャーな病気(トキソプラズマ・コロナウイルス・猫白血病ウイルス・猫エイズウイルス)との複合感染を統計的に調べたものの、やはり両者の間に明確な関連性は見出せなかったとのこと。
 こうしたデータから調査チームは、外に出る機会がある猫においてはエンセファリトゾーンの感染率が高く、原虫のキャリアになっている可能性があるという事実を突き止めました。今後は完全室内飼いの猫を調査対象に含め、不明なところが多い原虫の感染経路を明らかにしていきたいとしています。 Serological survey of Encephalitozoon cuniculi infection in cats in Japan

解説

 「エンセファリトゾーン」とは実に聞き慣れない名前ですが、ウサギを飼っている人の間では結構有名なようです。2006年から2007年にかけ、日本国内20の都道府県から集められた合計337羽のウサギを対象に血清IgG陽性率を調べたところ、以下のような結果になったといいます(→出典)。
ウサギのエンセファリトゾーン感染率(IgG抗体ベース)
  • 単独飼い=29.7%
  • 複数飼い=75.2%
  • 神経疾患あり=81.0%
  • その他の疾患あり=43.2%
 感染したウサギの多くは症状を示さないキャリアになりますが、中枢神経系や腎臓に潜伏した原虫は、宿主の免疫力低下をきっかけとして、様々な症状を引き起こす可能性を持っています。腎臓に寄生することから尿中にも排泄され、容易に経口感染します。複数飼い環境において高い感染率が確認されたのはそのためでしょう。主な症状としては斜頚、旋回、痙攣、部分麻痺といった中枢神経症状や、腎炎といった泌尿器系の症状などが挙げられます。なお猫における症状は非特異的で、子猫なら「成長の停滞・粗雑な被毛・腎不全・神経症状・死亡」、成猫なら「攻撃行動の増加・発作・失明・腎不全」とされています(→出典)。 エンセファリトゾーン症を発症したウサギでは斜頚という神経症状が出る  感染予防の王道は、飼っているのがウサギであれ猫であれ、「糞尿の始末をしっかりして経口感染を防ぐ」という基本事項を守ることです。また特に猫では、げっ歯類と同系統の原虫が検出されたという事実があることから、ネズミなどと接触する機会を減らすため、完全室内飼いに切り替えるといった配慮も必要となります。 猫をどこで飼うか? 猫を飼う室内環境の整え方