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多くの飼い主が人間用医薬品をペットに誤投与している

 イギリスの保険会社が行った調査により、およそ140万人の犬や猫の飼い主が、ペットに対して人間用の医薬品を与えているという可能性が浮上してきました(2016.3.25/イギリス)。

詳細

 報告を行ったのは、ペット保険を含めた様々な保険商品を取り扱う「MORE THAN」。イギリス国内に暮らす犬や猫の飼い主1,000人に対してアンケート調査を行ったところ、約9%が「人間用の医薬品をペットに与えたことがある」との回答を寄せたと言います。この割合を人数に換算すると、およそ140万人に達するとのこと。さらに過去1年間だけで、1人平均7回の投与歴があり、具体的な医薬品名としては以下のようなものが多かったそうです。
ペットに投与される人間用医薬品
  • 抗ヒスタミン薬→36%
  • アセトアミノフェン→28%
  • 殺菌クリーム→21%
  • イブプロフェン→17%
  • アスピリン→14%
 人間用の医薬品をペットに投与する理由としては、主に以下のようなものが挙げられました。
人間用医薬品をなぜ与える?
  • 医療費を削減するため→35%
  • 病院に行くほどではないと判断した→21%
  • 取り急ぎ苦痛を緩和しようとした→33%
  • 市販薬をペット与えてもよいという誤解→27%
 さらに医薬品では無いものの、約5%の飼い主はプロテインシェイクやバーをペットに与えていたと言います。その主な理由は以下です。
人間用サプリをなぜ与える?
  • スタミナを増強して体型を整える→21%
  • 早く体重が落ちるのはいいことだ→40%
  • ペットの健康を改善する→35%
  • 第三者からかっこよく見られる→6%
 こうしたデータから獣医師は、動物病院において人間用の薬が処方される事はあるものの、薬理学に関する知識の無い素人が自己判断で投与してはいけないとの強い警告を発しています。また、プロテインパウダー、ダイエット用のサプリ、人間用のビタミンを摂った後、およそ15%の動物が体調を崩すというデータがあることから、人間用に調合された栄養補助食品を安易にペットに与えてはいけないとも。ちなみに今回の調査では42%の人が「パートナーが病気になったときよりもペットが病気になったときの方がより強く心配する」と回答したそうです。飼い主がペットに対して安易に人間用の医薬品やサプリメントを与えてしまう理由は、上記したような親心が間違った方向に向かってしまったからだとも指摘されています。 Pills, proteins and pets

解説

 今回、ペットに投与される人間用医薬品として挙がってきた名前の中には、ペットの命を奪いかねない危険なものも含まれています。具体的には以下です。 犬と猫の中毒ハンドブック
医薬品によるペットの中毒
  • 抗ヒスタミン薬 ペットにおける抗ヒスタミン剤中毒の大部分は軽度で鎮静や運動失調などで終わることが多い。しかし肝機能障害を抱えている場合、中毒効果が高まる。
  • アセトアミノフェン 臨床症状はチアノーゼ、呼吸困難、顔面浮腫、抑うつ、低体温、嘔吐など。これらの症状は進行し、衰弱、昏睡、最終的には死に至ることもある。猫においては46mg/kg、犬においては100mg/kg程度で中毒を起こすと推定される。
  • イブプロフェン 主な臨床症状は腹痛、貧血、黒色便、吐血、胃腸過敏、胃潰瘍など。2015年4月には、イブプロフェンと同じく非ステロイド系抗炎症薬に属する「フルルビプロフェン」を舐めたことによる猫の死亡例が確認されたことから、アメリカ食品医薬品局(FDA)が緊急の警告を発している。
  • アスピリン 中毒症状は抑うつ、嘔吐、食欲不振、呼吸速迫、発熱などで、摂取後4~6時間で出現する。中枢神経が抑制されると筋肉の運動失調を招き、昏睡から死に至ることもある。猫における中毒量は25mg/kg/日、犬では50mg/kg/日程度。
 2013年の資料によると、日本国内で人体用医薬品が獣医師の処方権によりペット動物に転用される頻度が高い領域は以下のようになっています。「殺菌消毒薬」や「ビタミン薬」の転用率が50%を超えていますが、飼い主の自己判断で市販薬やサプリを与えるのは大変危険です。 猫にとって危険な毒物 獣医師の処方権により人体用医薬品がペット動物に転用される領域のグラフ