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ジカウイルス感染症(ジカ熱)は犬や猫にもうつる?

 赤ん坊の小頭症を引き起こす危険性が疑われている「ジカ熱」は、果たして犬や猫にも感染するのでしょうか?(2016.3.28/日本)

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 「ジカウイルス感染症」(ジカ熱)とは、デングウイルスと同じフラビウイルス科フラビウイルス属に属する「ジカウイルス」が感染することによって生じる病気のことです。1947年、ウガンダにあるジカ森林のアカゲザルから初めて分離されたことからこの名が付きました。日本国内では2016年2月5日、感染症法の4類感染症に指定されています。基本情報は以下です。
ジカウイルス感染症
  • 感染ルート ネッタイシマカやヒトスジシマカによる吸血によって伝染する。また性交渉によっても感染する可能性がある。
  • 症状 3~12日の潜伏期間を経た後、4~7日程度症状が持続する。しかし患者の約80%では、感染していても症状を示さない「不顕性感染」にとどまる。具体的な症状は発熱、斑状丘疹性発疹、関節痛、関節炎、結膜充血など。また少数では筋肉痛、頭痛、後眼窩痛、めまい、下痢、腹痛、嘔吐、便秘、食欲不振といった非特異的な症状を示すこともある。基本的には軽い風邪程度の体調不良にとどまるが、基礎疾患があったり免疫力が低下している患者においては死に至ることもある。
     脳が正常に発達しない先天的疾患「小頭症」で死亡した新生児の脳、および妊婦の羊水からジカウイルスRNAが検出されていることから、このウイルスが小頭症の発症に関わっていることが強く示唆されている。ジカウイルスは新生児の小頭症を引き起こす可能性がある
  • 治療・予防 解熱鎮痛剤による対症療法を基本とし、脱水症状が強い場合は輸液も実施する。ワクチンが存在しないため、予防は「蚊に刺されないようにする」の一言に尽きる。具体的には、長袖服・長ズボンの着用、虫よけ剤の使用など。特に妊婦や妊娠の可能性がある女性は、一時的にでもジカ熱流行地から離れることが望ましい。また感染が確認された男性は6ヶ月間、女性は8週間、避妊具を用いない性交渉を避けることが推奨される。
  • 発生地域赤道直下の中央および南アメリカ大陸、カリブ海地域20の国や地域。
ジカウイルス感染症の流行地域  さて、上記したジカウイルス感染症は果たして犬や猫といったペット動物にも感染するのでしょうか?結論から言うと、よくわかっていません。アカゲザルから分離されたという事実から、人間に特有の感染症でないことは確かですが、今のところ犬や猫からこのウイルスが分離されたという報告はありません。人医学の情報から類推すると、仮に感染したとしてもそれほど重篤な症状には陥らないと考えられます。また、妊娠中の動物が感染した場合、生まれてきた子獣が小頭症を発症するかどうかもよくわかっていません。しかしジカウイルスと近縁の「牛ウイルス性下痢ウイルス」(BVDV)にかかった牛から、小頭症や目の奇形を持った子牛が生まれたという報告があることから、その可能性を完全に否定することはできないでしょう。
 2016年現在、獣医学領域におけるジカウイルス感染症の疫学は未知の部分が多いため、現時点でできる事はなるべく流行地域に行かないとか感染した場合は性交渉を避けるといった単純なルールを守り、蚊を媒介とした感染の拡大を予防することだと考えられます。 国立感染症研究所 ジカウイルス感染症に関するQ&Aについて PET MD Zika Virus-CDC