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猫のヒゲは風向き感知装置

 猫を始めとする動物のヒゲは、目の前にある障害物を感知するのみならず、風向きを感知するときにもかなり重要な役割を果たしていることが明らかになりました(2016.9.26/アメリカ)。

詳細

 調査を行ったのは、アメリカ・イリノイ州にあるノースウェスタン大学の研究チーム。チームはまず、5つの通風孔を30度の角度をつけて半円形に配置し、その中の1つだけから風が出るという特殊な装置を作りました。 ラットのヒゲの有無と風向きの感知能力を調べるための装置  次に5匹のラットを装置の中に入れ、風が出ている「正解」の通風孔を選んだときだけご褒美がもらえるよう訓練しました。そして、すべてのラットが55%以上の正答率を10日連続で出せる状態になったタイミングで、両側のヒゲを2mm以下にカットし、10日間同様のテストを行いました。その結果、以下のような変化が観察されたと言います。
ヒゲの有無と風向きの感知能力
  • 5匹中4匹において正答率が20%近く低下した
  • 正答率は偶然レベルである20%よりは良かった
  • 風への敏感さには個体差があった
  • 風に敏感な個体ほどカット後の成績悪化が顕著だった
  • ふらふらと迷いながら進むことが多くなった
  • 間違った通風孔に進む確率が増えた
 また、上記したような変化は「風」の代わりに「光」を正解の合図として訓練した3匹のラットでは全く観察されなかったと言います。
 こうしたデータから調査チームは、陸上哺乳動物がもつヒゲは、目の前にある物体を触知するのみならず、風の発生源を感知する能力も備えているという可能性を突き止めました。この能力は、餌のありかや外敵の居場所をいち早く感じ取る際に役立つものと考えられています。 Whiskers aid anemotaxis in rats
Yan S. W. Yu1, Matthew M. Graff, et al. 2016

解説

 ヒゲをカットした後、正答率ががくんと下がったものの、偶然レベルである20%(5分の1)よりは良かった点に関し、調査チームは「風向きを検知する際、ヒゲ(触毛)だけを頼りにしているわけではないようだ」と述べています。具体的には、「鼻先、耳先、角膜における温度変化」、「触毛以外の体毛に当たる風圧」、「マズルに残された2mm以下のわずかな触毛」などが関わっているのではないかとのこと。
 匂いの発生源を、空気中を漂っている匂い物質の濃度勾配だけから見つけようとすると、非常に多くの時間と労力を必要とします。それに対し、触毛とそこからの感覚を司る三叉神経のシステムがあれば、匂いが一体どの方向からやってきているのかを大まかに感知することができますので、かなり楽です。
 完全室内飼いの猫にとって室内の風向きはそれほど重要ではないかもしれません。しかし顔周辺のものがあまりよく見えない猫にとって、ヒゲの存在は危険物センサーになってくれますので、むやみにカットするのは控えた方がよいと思われます。 猫のヒゲ 猫のひげの位置と名称一覧図