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猫の活動パターンは人間の生活リズムとシンクロしている

 マイペースというイメージの強い猫ですが、1週間の活動を1分単位でデータ化してみると、飼い主の行動パターンに意外と合わせてくれていることが明らかになりました(2017.2.20/アメリカ)。

詳細

 報告を行ったのは、アメリカ・ノースカロライナ州立大学のチーム。変形性関節症や骨関節炎など関節に何らかの障害を抱えた猫83頭と、活動性に影響を及ぼすような疾患を抱えていない臨床上健康な猫15頭に、加速度計付きの首輪を装着させ、7日間の活動パターンを1分単位で全てデータ化しました。総計10,080分のデータを解析した結果、以下のような傾向が浮かび上がってきたと言います。
関節障害の有無と猫の活動パターン
  • 1分間の平均活動数は両グループでほぼ同じ
  • 活動性のピークは朝と夕方の二峰性パターンを示した
  • 朝のピークは鋭く、夕方のピークは平坦
  • 週末の朝のピークは平日よりも遅めに発生した
  • 関節に障害を抱えた猫では活動のピークと谷が穏やかだった
加速度計は猫の行動をデータ化する際に有効  平日と週末の活動パターンに違いが見られた理由は、飼い主の行動パターンの変化に合わせたからではないかと推測されています。
 こうしたデータから調査チームは、関節炎に対する鎮痛薬治療の効果を検証する際、加速度計を用いて活動パターンを客観的にデータ化するというアプローチ法は有効ではあるものの、平日と週末の行動パターンの違いを加味しなければ、活動性の増減を見誤ってしまう可能性があると指摘しています。
The Use of Functional Data Analysis to Evaluate Activity in a Spontaneous Model of Degenerative Joint Disease Associated Pain in Cats
Gruen ME, Alfaro-Cordoba M, Thomson AE, Worth AC, Staicu A-M, Lascelles BDX (2017) PLoS ONE 12(1): e0169576. doi:10.1371/journal.pone.0169576

解説

 調査チームは当初、「関節炎を抱えた猫と抱えていない猫を比較した場合、後者において高い活動性が認められるはずである」という仮説と、「活動の数や強度は関節炎のレントゲン所見や痛みのスコアと反比例の関係にあるはずである」という仮説を立てた上でデータ収集に臨みました。しかし実際にデータを解析してみると、関節炎グループにおいてピークとトラフ(谷の相)がやや緩やかになるという違いは見られたものの、活動性にそれほど大きな格差は確認されませんでした。過去に行われた調査では、筋骨格系以外の疾患で動物病院を訪れた12歳以上の猫100頭のうち、エックス線検査でたまたま変形性関節症の徴候が見られた割合は90%に達したとされていますので、猫においては関節炎の有無と活動パターンが、そもそも人間ほど分かりやすく連動していないのかもしれません。
 興味深いのは、関節炎グループと健常グループの両方で、朝の鋭い活動性ピークと夕方の緩やかな活動性ピークが見られたという点です。朝のピークに関しては、決まった時間に起きて決まった時間に猫に餌を与えるなど、飼い主の行動パターンがある限られた時間帯に集中していることを意味していると考えられます。また夕方のピークに関しては、飼い主の帰宅時間がまちまちだったり、夕方の餌の時間がバラバラだったりして、飼い主の行動パターンが比較的広い時間帯に分散していることを意味していると考えられます。つまり猫の活動性のピークは、朝も夕方も人間の行動パターンにある程度連動しているということです。この連動は「週末における朝のピークがやや遅めに発生した」という事実によっても裏づけられています。休日の「二度寝」が飼い主の起床時間を遅らせ、結果として猫の活動性のピークがやや遅い時間にずれ込んでしまったのでしょう。 平日と週末における1日の猫の活動レベル  猫は一般的に薄明薄暮性の動物とされており、活動性のピークは夜明けごろと日暮ごろの二峰性パターンを示すと考えられています。しかし生活リズムは意外と柔軟で、外に出る機会が少ない猫は多い猫に比べ、明るい時間帯の活動が多くなるとの報告もあります(→詳細)。今回の調査でも、猫の活動と人間の行動パターンが連動している可能性が示されました。猫はマイペースで独立独歩という印象を持たれがちですが、完全室内飼いのペット猫の行動パターンを細かく解析していくと、人間のペースにうまく合わせて昼行性動物になってくれているようです。 明け方や夕方に活動的になる