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アレルギーを抱えた猫と健康な猫における皮膚細菌叢の違い

 健康な猫とアレルギーを抱えた猫を対象とし、皮膚に生息している細菌叢に違いが見られるかどうかが検証されました(2017.6.15/アメリカ)。

詳細

 調査を行ったのはテキサスA&M大学のチーム。少なくとも過去6ヶ月間、皮膚疾患にかかっていないことが確認されている健康な猫11頭(2~17歳)、およびアレルギー性皮膚炎(ノミ皮膚炎・食品関連性皮膚炎・非ノミ非食品性知覚過敏反応)を抱えた猫10頭を集め、体の各所から細菌サンプルを採取し、両グループの間でどのような違いが見られるのかをDNAレベルで検証しました。細菌の具体的な採取場所は以下です。
皮膚細菌叢の調査部位
  • 健康な猫・12ヶ所脇の下 | あごの下 | 結膜 | 鼻梁 | 耳道 | 股間 | 指間 | 腰 | 鼻腔 | 口腔 | 耳介 | 包皮・外性器
  • アレルギー猫・6ヶ所脇の下 | 耳道 | 股間 | 指間 | 腰 | 鼻腔
猫の皮膚細菌叢は個体差よりも1個体内における部位別の差異のほうが大きい  DNA検査の結果、健康な猫であれアレルギー猫であれ「細菌の種類」に関してはそれほど大差は見られなかったと言います。その代わり「細菌の豊富さ」に関しては、両グループの間で統計的な格差が見られたとも。具体的には以下です。
皮膚細菌叢の違い
  • 健康な猫操作的分類単位(OTU)が8,137種で門(phylum)が31種。細菌の豊富さは皮膚の特質(被毛・粘膜・皮脂・口腔)、採取した部位、採取した個体によって大きく変動した。また生殖器に関してはオス猫とメス猫の間でも違いが見られた。
    門(phylum)を多い順に並べると…
    ✓プロテオバクテリア門=46.4%
    ✓バクテロイデス門=20.7%
    ✓フィルミクテス門=17.7%
    ✓アクチノバクテリア門=8.6%
    ✓フソバクテリウム門=4.1%
    科(family)を多い順に並べると…
    ✓ポルフィロモナス科
    ✓モラクセラ科
    ✓パスツレラ科
    ✓シュードモナス科
  • アレルギー猫操作的分類単位4374種で門が19種。皮膚の中でも被毛が生えた部位(脇の下・耳道・股間・指間・腰)ではフィルミクテス門が多く、中でもクロストリジウム属が豊富だった。また粘膜性の部位(鼻腔)ではコリネバクテリウム属が多く見られた。
    門(phylum)を多い順に並べると…
    ✓プロテオバクテリア門=49.0%
    ✓フィルミクテス門=21.5%
    ✓アクチノバクテリア門=13.7%
    ✓バクテロイデス門=11.2%
    ✓フソバクテリウム門=3.0%
    科を多い順に並べると…
    ✓シュードモナス科
    ✓モラクセラ科
    ✓パスツレラ科
    ✓ナイセリア科
健康な猫とアレルギー猫の皮膚細菌叢の違い  さらに脇の下、耳道、股間、指間、腰、鼻腔の6ヶ所に関し、健康な猫とアレルギー猫を比較したところ、健康な猫ではオキサロバクター科、アリサイクロバチルス科、スフィンゴバクテリア科が多く見られ、総じてオキサロバクター科が豊富だったといいます。それに対しアレルギー猫ではブラジリゾビウム科、プレボテラ科、ビブリオ科、ハロモナス科が多く見られ、総じてブドウ球菌科が豊富だったそうです。
The feline skin microbiota: The bacteria inhabiting the skin of healthy and allergic cats.
Older CE, Diesel A, Patterson AP, Meason-Smith C, Johnson TJ, Mansell J, et al. (2017) PLoS ONE 12(6): e0178555, doi.org/10.1371/journal.pone.0178555

解説

 今回の調査では健康と不健康を分けるような細菌叢の定義を確立することはできませんでした。しかしアレルギー猫においてブドウ球菌科(Staphylococcus)の豊富さが確認されたことから、人間や犬の場合と同様、アレルギー性皮膚炎との間に何らかの因果関係があるのではないかと推測されています。また健常猫とアレルギー猫とでは、耳道の細菌クラスターに大きな違いが見られたことから、この部位に関しては細菌の種類や豊富さに関して理想的な状態というものがあるのかもしれないと推測されています。例えば、何らかの理由で細菌叢の乱れ(Dysbiosis)が発生し、理想状態からかけ離れると皮膚炎が発生するなどです。
 過去に犬を対象として行われた調査では、犬と人間が同居しているとき、両者の皮膚細菌叢がだんだん近づいていくことが確認されています。同じ現象が猫と人間の間でも生じるのかどうかはわかりませんが、ブラッシングやマッサージなど猫の体を触ることが日常化している場合、細菌叢の近似化が起こっても不思議ではないでしょう。 猫のアトピー性皮膚炎 食品アレルギー 猫のノミ皮膚炎