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猫のホームレンジは都市部に近いほど小さくなり郊外に行くほど大きくなる

 GPSを用いて屋外における猫の自由行動を観察したところ、都市部と郊外においてはホームレンジが大きく異なることが明らかになりました(2018.2.8/イギリス)。

詳細

 調査を行ったのはイギリス・レディング大学を中心としたチーム。ロンドンの西40km地点に位置するグレーターレディングに暮らしている猫を対象とし、居住地域の特徴と屋外における猫の行動にどのような関係性があるのかを検証しました。 グレーターレディング  調査エリアを都市化の度合いによって「都市部」「郊外」「都市周辺部」という3つのエリアに区分し、それぞれのエリアに暮らしている猫にGPSトラッカー(4.4×2.7×1.3cm/26g)を装着して1週間ほど行動を観察したところ、以下のような違いが見られたと言います。ホームレンジ(移動範囲の95%領域)とコアレンジ(移動範囲の50%領域)は「カーネル密度推定」という統計学的な手法で計算されています。「ha」は「ヘクタール」(100m×100m)です。
都市部の猫(14頭)
  • 特徴Katesgroveの中心地から400m以内の範囲 | 27.8戸/ha | 住居占有率50%超
  • ホームレンジ平均1.05±0.13ha | 中央値0.90ha
  • コアレンジ平均0.18±0.03ha | 中央値0.15ha
  • 最大移動距離平均85±5m | 中央値79m
郊外の猫(15頭)
  • 特徴Maiden Erlegh | 10.7戸/ha | 住宅占有率30-50%
  • ホームレンジ平均1.79±0.24ha | 中央値1.56ha
  • コアレンジ平均0.25±0.04ha | 中央値0.18ha
  • 最大移動距離平均127±8m | 中央値141m
都市周辺部の猫(9頭)
  • 特徴Shinfield | 7.3戸/ha | 住宅占有率30-50% | 家の近く200m以内には農場や自然環境あり
  • ホームレンジ平均2.41±0.73ha | 中央値1.60ha
  • コアレンジ平均0.28±0.09ha | 中央値0.17ha
  • 最大移動距離平均153±27m | 中央値148m
都市化の度合いによって変わる猫の屋外における行動範囲(ホームレンジとコアレンジ)  行動範囲と無関係と考えられた項目は「性別」「昼夜」。コアレンジとだけ関係性が見られたのは「首輪の有無」(無い方が大きい)。そしてすべての項目と関係があったのは「居住区」(都市化が進んでいるほど小さい)でした。
 こうした結果から調査チームは、環境保全区と居住区が隣接している場合、猫による野生動物の捕食行動を防ぐためには緩衝エリア(buffer zone)として、都市部なら半径145m、郊外なら200m、そして都市周辺部なら335m程度を設けておくのが妥当だろうと提案しています。
Urbanisation influences range size of the domestic cat(Felis catus): consequences for conservation
Hugh J. Hanmer et al., Journal of Urban Ecology 2017, 1?11

解説

 オス猫とメス猫の行動を比較したところ、ホームレンジにしてもコアレンジにしてもオス猫の方が大きくなる傾向が確認されたものの、統計的に有意とまでは判断されませんでした。メキシコのソコロ諸島で行われたGPSによる行動調査(Ortiz-Alcaraz, 2017)では、オス猫のホームレンジが219.10 haだったのに対しメス猫のそれは118.86haだったと報告されています。不妊手術の有無や居住区によって結果が大きく変わるのかもしれません。
 調査チームは猫による野生動物の捕食行動を防ぐためには、緩衝エリアを設けることのほか、夜間だけ猫を外出禁止にするとか、鈴つきの首輪を装着するといったものを提案しています。しかし、まるで箝口令でも敷かれているかのように「完全室内飼い」という言葉は全く出てきません。放し飼いによる猫の飼育率が90%というとんでもない値を示している国のお国柄なのでしょうか。2015年に英国内で行われた調査では、5歳未満の猫の死因のうち最も多いのが外傷で、外傷の原因として最も多いのが交通事故だとされていますが(Neill et al. 2015)。 猫が交通事故に遭うリスクを高める要因 猫が生態系を壊している?