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小さな虫が猫の口の中に入ると気管をふさいで窒息死につながることあり

 人間の場合、お餅をのどに詰まらせて窒息死するというケースがありますが、猫の場合は虫をのどに詰まらせて死んでしまうというパターンがあるようです(2018.6.1/チェコ)。

詳細

 症例報告を行ったのは、チェコ共和国ブルノにある大学の獣医療チーム。放し飼いにされている1.5歳のメス猫(短毛種 | 2.5kg)が突然の呼吸困難を主訴として大学附属の小動物病院を訪れました。飼い主によると、外出から戻って4時間ほどよだれや苦しそうな短い呼吸が見られたとのこと。病院で抗生物質と抗炎症薬を投与したものの症状は改善せず、脱水、頻呼吸(80/分)、低体温(34.7℃)といった徴候のほか、粘膜にはチアノーゼが現れ出したといいます。
 心エコー検査では異常は見られず、胸部聴診や胸部エックス線撮影により肺炎、肺浮腫、胸水などを除外した結果、気道のどこかに異物が混入している可能性に行き着きました。しかし飼い主の経済的な理由から喉頭内視鏡検査だけが行われ、結果として口の中、喉の上の方、気管の入り口、食道の入り口から異常は発見されませんでした。
 投薬治療が継続されたものの症状の改善が見られず、最終的に安楽死が施され、死体は死後解剖に回されました。胸部を切り開いたところ、白い粘着物で覆われた直径1cmの異物が、気管分岐部の2cmほど上の内腔を完全に閉塞していたといいます。閉塞箇所の粘膜は充血し、点状出血と圧迫壊死が見られました。異物をよくよく観察したところ、夏場になると増える「ヨーロッパコフキコガネ」(summer chafer, Amphimallon solstitiale)であることが判明したとのこと。 猫の気管分岐部を閉塞していたヨーロッパコフキコガネ(Amphimallon solstitiale) An unusual foreign body in a cat: a case report
C.F.R. Agudelo et al., Veterinarni Medicina 63 2018 (04): 198?202, doi.org/10.17221/8/2018

解説

 気道内の異物は鼻腔、鼻咽頭、喉頭など比較的上の方でとどまることが多いですが、今回のように気管や気管支にまで到達してしまうケースもあります。こうした気道の奥深い場所まで侵入した異物は、閉塞箇所の二次感染を引き起こしたり、他の場所(胸腔、心臓、腹腔など)に移動して気管支肺炎膿胸気胸、腹腔内出血を引き起こしたりします。またたとえ部分的な閉塞だとしても浮腫や粘膜層の圧迫壊死を引き起こし、時間が経ってから死に至らしめることもあります。 気管直径が小さい猫で気道閉塞が起こると除去が難しい  過去に屋外で暮らしている猫の食事内容を調べたところ、糞便の0.5~18%で虫が検出され、クモ、ワラジムシ、昆虫などが含まれていたといいます。猫を放し飼いにしていると、屋外を飛び回っている昆虫に飛びかかり、何かの拍子に飲み込んでしまう危険性が高まりまるものと考えられます。人間で言うと、自転車に乗っているときカナブンが口の中に飛び込んでしまう状況に近いでしょう。たまたま息を吸い込んでいるときにこうしたアクシデントが起こると、気管や気管支の中にまでカナブンがズボッと入り込んでしまう危険性もあります。
 猫が突然の呼吸困難、咳、えづきを見せた場合は気道閉塞の可能性がありますので要注意です。またそもそも誤飲の危険性を減らすため、完全室内飼いに切り替えることが推奨されます。 猫が異物を飲み込んだ 猫が喜ぶ部屋の作り方