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骨軟骨異形成症を発症したスコティッシュフォールドのエックス線写真

 ブリーダーやペットショップの金儲けのため遺伝病を背負わされているスコティッシュフォールド。この猫の悲しい宿命を象徴するかのような症例がトルコで報告されました。現実から目をそらしている場合ではありません。

重度の骨軟骨異形成症

 報告を行ったのはアイドゥンにあるアドナンメンデレス大学獣医学部のチーム。9歳になるスコティッシュフォールドが5日ほど前から排尿、排便、呼吸に難があるとして大学付属の動物病院を受診しました。 ルーチンの診察を行おうとしたところ、脊柱の不自然な後弯、肩・肘・股・膝関節の過屈曲、大腿四頭筋(太ももの裏)と上腕三頭筋(二の腕)の腱の拘縮が確認され、関節の可動性が著しく制限されていたといいます。飼い主に聞いてみると数年前からこの状態で、特別な治療は行なっていないとのこと。しっぽの付け根は太く変形してしなやかさを失い、歩くときはウサギのようにジャンプするというひどいありさまでした。 重度の骨軟骨異形成症を発症したスコティッシュフォールドの症例~外観  スコティッシュフォールドに多い骨軟骨異形成を疑った診察チームはエックス線を撮影しようとしましたが、手足を伸ばそうとしただけで激しい痛みの兆候を示したといいます。かろうじて撮影されたエックス線画像では、指、手根骨、足根骨の関節、脊柱と尾骨の関節に著しく増殖した外骨が確認され、猫の運動を著しく制限していることが明らかになりました。 重度の骨軟骨異形成症を発症したスコティッシュフォールドの症例~全身のエックス線画像  骨瘤と呼ばれるこうした病変部には効果的なアプローチ方法がないため、消炎薬とグルコサミン製剤などが処方されましたが、病気は進行性ですので一時しのぎの対症療法に過ぎません。推測の域を出ませんが、極端な耳折れからみて両親ともに疾患遺伝子を保有していたと考えられます。
 診察チームは「今まで見てきた中で最も重症例」であるとし、効果的な治療法がない進行性の遺伝病を撲滅するためには、繁殖の段階で何らかの介入や規制を行う必要があると指摘しています。
Osteochondrodysplasia in a 9-Year-Old Scottish Fold Cat
Gulcan Turan, Zeynep Bozkan, VCOT Open 2019; 02(02): e60-e63, DOI:10.1055/s-0039-1700850

虐待繁殖の犠牲になる猫

 当サイト内で繰り返し強調していますが、スコティッシュフォールドはブリーダーやペットショップの金儲けのため骨軟骨異形成という遺伝病を背負わされた品種です。病気と猫が味わう苦痛の関連性があまりにも明白であるため、イギリスでは品種協会(GCCF)が、ベルギーではブリュッセル市が繁殖すること自体を禁じています。また原産国であるスコットランド国内でも繁殖に対して何らかの制限を設ける法案が検討されています。  日本の動物愛護法でも環境省の細目(動物の管理・第五条の三)で「遺伝性疾患の問題を生じさせる組み合わせによって繁殖させないこと」と規定されていますので、遺伝病を発症するとわかっていて繁殖することは動物虐待であるという認識をもち、今すぐにでもこの品種の繁殖を禁じなければなりません。

遺伝病を撒き散らす人々

 SNSではスコティッシュフォールドをフィーチャーしたアカウントが人気で、様々な企業からスポンサーシップ(=お金)を得ながらグッズ販売や企画展などを行っています。またこの人気アカウントを模倣したかのような類似アカウントも多数存在しています。自分たちのやっていることが、品種を宣伝することで疾患遺伝子を日本中にばらまいているということに気づいていないのでしょう。最近では有名なYouTuberが、極端に耳の折れたスコティッシュフォールドを飼い始めて話題になりました。悲しいことに、急増する購入者に合わせるため、知識も倫理観もないブリーダーが乱繁殖に走っている節も見られます。

猫を遺伝病から解放しましょう!

 このページ内にある画像は、症例レポートに添えられた猫の外観およびエックス線写真です。コンテンツはクリエイティブコモンズですので写真内にある著作権クレジットさえいじらなければ複製、改変、再配布は自由とされています。ブログ、Twitter、Facebookのアカウントをお持ちの方はこうした写真を有効活用し、スコティッシュフォールドが置かれている苦しい状況をなるべく多くの人達に伝えてください。1日も早く、この品種を遺伝病の苦しみから解放してあげましょう。重度の骨軟骨異形成症を発症したスコティッシュフォールドの症例~下半身のエックス線画像 重度の骨軟骨異形成症を発症したスコティッシュフォールドの症例~骨瘤ができて拘縮した肘関節
疾患に関する詳しい解説は「スコティッシュフォールドの遺伝病撲滅のために」でも行っています。現実から目をそらさずご一読ください。