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猫の通院ストレスを減らすコツは猫向け音楽「Music For Cats」

 猫のゴロゴロ音と母乳を飲む時のリズムを取り入れて作られた「猫向け音楽」。動物病院内でBGMとして猫に聞かせることにより、診察中のストレスをいくらか軽減できるかもしれません。

猫向けの音楽とは?

 猫向け音楽とは、猫のストレス軽減やリラックスを目的として特別に作られた音楽のこと。音楽配信サービスなどでも非常にたくさんの楽曲が提供されています。
 内容はまちまちですが、猫のゴロゴロ音と母乳を飲む時のリズムを取り入れたものは、子猫だった頃の記憶を呼び戻すことで高いリラックス効果を生み出すとされています。例えば2015年に報告された調査では、人間向けの音楽よりも猫向けに特別に作られた音楽を好む傾向があり、この傾向は特に若い猫や高齢猫において顕著だったとのこと出典資料:Charles T.Snowdon, 2015
ねこのための音楽 - Music For Cats
 以下ではご紹介するのは、ナショナルシンフォニーオーケストラのチェリスト、デヴィッド・タイが作曲した猫向けの音楽「Scooter Bere's Aria」です。2015年10月にリリースされた「Music For Cats」というアルバムに収録されています。 元動画は⇒こちら

動物病院における猫向け音楽

 猫向けに作られた音楽は、動物病院における診察というストレスフルな環境において果たして効果を発揮してくれるのでしょうか?
 調査を行ったのは、アメリカにあるルイジアナ州立大学の獣医療チーム。猫のストレスを緩和することを目的に作られた猫向け音楽の効果を検証するため、臨床上健康な猫を対象とした比較実験を行いました。調査対象となったのは20頭の猫(オス猫12頭+メス猫8頭)。調査前の基本的なステータスは平均年齢5.2歳、平均体重4.8kg、BCS(体型)5.95、平均直腸温度38.3℃、平均心拍数181.8/分、平均呼吸数60.4/分というものです。 猫向け音楽は診察中と診察後の猫のストレス反応を軽減する  調査チームは猫たちをランダムで3つのグループに分け、「サイレント(無音)」「クラシック音楽」「猫向け音楽」という3種類の環境音楽を猫たちに与え、診察中の生理学的・行動的なリアクションがどのように変化するかを観察しました。実験の基本的な流れは「キャリーに入れられた状態で来院→待合室で10分間環境音楽に慣れさせる→キャリーから出して環境音楽を流しながら診察→環境音楽をストップしてキャリーに戻す→帰宅」というものです。使用された環境音楽の具体的な内容は以下です。
院内の環境音
  • サイレント(無音)音楽なし
  • クラシック音楽Gabriel Faureの「Elegie」。リラックスした人間で見られる心拍数「66回/分」リズムと、人間の声が持つ音域周波数を含んでおり、人間に対するリラックス効果が大きいとされる。実際の音源→Elegie Op. 24
  • 猫向け音楽David Teieの「Scooter Bere's Aria」。喉を鳴らすゴロゴロ音と子猫は母猫のお乳を吸う時のテンポ、および猫の鳴き声に近い55~200Hzの周波数を含む。実際の音源→Scooter Bere's Aria
 2週間の間隔を空けてすべての猫が全ての環境音と接するようにデザインした上で、診察中のCSS、HS、および診察後のNLRをストレスの指標として調べた所、以下のような結果になったといいます
猫向け音楽の効果は?
  • CSSCSSとはキャットストレススコアのこと。猫が見せる表情や行動などからストレスの度合いを測る指標で、数字が大きければ大きいほどストレスが高いことを意味する。

    ✅猫向け音楽を聴いていたグループでは、他のグループより診察中と診察後に有意に低い値を示した。
  • HSHSとはハンドリングスコアのことで、診察や保定を受けている猫のリアクションを数値化したもの。数値が高ければ高いほど抵抗が激しいことを意味する。

    ✅猫向け音楽を聴いていたグループでは他のグループより有意に低い値を示した。なお診察の具体的な内容は皮膚つまみ上げテスト(ツルゴールテスト)、粘膜視診、歯茎圧迫、口内検査、腹部触診、脈拍・心拍数測定、胸部聴診、直腸温測定、静脈穿刺。
  • NLRNLRとは好中球:リンパ球比率のこと。ストレスでコルチゾールが血中に放出されることにより比率が高まる。

    ✅グループ間で格差は見られなかった。
 こうしたデータから調査チームは、猫向けに作られた音楽は動物病院で診察を受ける時の猫のストレスを軽減してくれる可能性があるとの結論に至りました。
Effects of music on behavior and physiological stress response of domestic cats in a veterinary clinic
Amanda Hampton, Alexandra Ford, Roy E Cox III, Journal of Feline Medicine and Surgery 1 ?7, DOI:10.1177/1098612X19828131

猫向け音楽の応用方法

 猫向け音楽によりストレスの行動的な指標であるCSSとHSに有意差は見られたものの、生理学的な指標であるNLRにグループ間格差は見られませんでした。これは動物病院に来るまでの間に蓄積したストレス物質が短時間で代謝されなかったからだと考えられています。
 猫にとって診察がストレスになることは明白ですが、「動物病院に行く」というイベント自体が大きなストレス源でもあります。もし本当に猫向け音楽にストレス軽減効果があるのだとしたら、キャリーバックに入った状態の猫にスマートフォンやICレコーダーなどで猫向け音楽を聞かせ続けると、いくぶんかストレスが減ってくれるかもしれません。また病院の待合室で聞かせてあげるのも効果的でしょう。 動物病院の待合室で猫向け音楽を聞かせるとストレスが軽減されるかもしれない  2012年、猫の福祉向上を目的に設立されたチャリティ団体「International Cat Care」が「Cat Friendly Clinic」というプログラムを開始し、猫の通院ストレスに配慮した病院を実地評価した上で認定を与えています。2018年2月には条件をクリアしたクリニックの数が世界中で1000を超えました(→ICC。日本においても少しずつその数を増やし続け、2019年2月の時点でゴールド取得病院が101、シルバー取得病院が52、ブロンズ取得病院が2となっています(→JSFM
 これらの病院ではスタッフや設備に対する条件や基準を設けているものの、環境音楽に関する規定まではありません。今回の調査結果を基に、猫向け音楽をBGMとして流す病院が増えるかもしれません。なお、猫向け音楽は一般向けに市販されていますので誰でも入手可能です。動物病院だけでなく多頭飼育家庭内、保護施設やシェルター、老猫ホームといった場所で使用するケースも考えられます。Amazonプライムに加入している場合、5曲中3曲だけ無料で聞けます。加入していない場合はMP3でダウンロードするかCDを購入するという形です。 ねこのための音楽 - Music For Cats(amazon)
🚨最近、透明の窓から外が見えるデザインのキャリーバッグが流行しているようですが、猫の通院ストレスをいたずらに高めてしまうためまったくおすすめできません。理論的な根拠は以下を参考にしてください。 身体を隠せる空間(隠れ家)は猫の短期的なストレス軽減に有効 ケージ内における猫のストレスを最小限に抑えるコツは?