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ファブリーズの成分一覧表~犬や猫への安全性と危険性を検証する

 日本国内では安全性はおろか、含有成分すらまともに公開されていない消臭剤「ファブリーズ」。犬や猫がいる家庭で使っても本当に大丈夫なのでしょうか?確認できる成分を一つ一つ検証していきましょう。
🚨日本国内においてファブリーズの含有成分は公開されておらず、また公式サイトも新型コロナウイルスに対する効果は確認できていないと断言しています。ウイルスに対する消毒効果をもった成分に関しては「猫の飼い主のための新型コロナ対策」および「犬の飼い主のための新型コロナ対策」において安全性(毒性)情報とともに詳しくまとめてありますのでご参照ください。

ファブリーズとは?

 ファブリーズ(Febreze)は消費財メーカー「P&G」が発売している消臭剤のブランド名。1996年、布製品向けの消臭剤として市場に登場した後、空気清浄剤、プラグイン、消臭キャンドル、自動車の消臭剤といった商品として展開してきました。現在では北米、南米、ヨーロッパ、アジア、オーストラリア、ニュージーランドなど世界各国で販売されており、日本国内でも盛んにCMが流れていますのでご存知の方も多いことでしょう。 ファブリーズの製品ラインナップ

ファブリーズは危ない?

 ファブリーズに関しては発売間もない頃から「ペットが健康被害を受けた!」とか「有害物質が含まれている!」いう噂がネット上に出回っています。1998年12月頃にはすでに「飼っていた犬が死んでしまった。皆さん気をつけてください」といった類の注意がインターネット上に出現しているようです。
 こうした有害性に関する噂は、製品の中に塩化亜鉛が含まれていた時代のものであり、また健康被害と製品との因果関係がはっきりと証明されたわけでもないため、一般的にはガセネタとして認定されています。
 しかし製品から塩化亜鉛が取り除かれた現在も、弊害を心配する似たような噂がネット上に蔓延(はびこ)っています。「ファブリーズ 犬」「ファブリーズ 猫」「ファブリーズ ペット」といったキーワードで検索すれば、ペット動物の病気や肝臓への有害性を気にかけている飼い主たちが、いかに多いかがすぐに確認できるでしょう。  果たしてこうした噂には科学的な根拠があるのでしょうか?それとも単なる個人体験レベルのガセネタなのでしょうか?
 ファブリーズに含まれている原料や成分を一つ一つ細かく調べて行ったところ、必ずしも安全とは言えない成分が含まれていることが明らかになりました。以下はアメリカ国内で販売されているファブリーズのラインナップの中で、最も代表的な布用「Febreze Fabric Refresher」の成分表です。安全性や危険性に関する科学的な根拠と出典も記してあります。

ファブリーズの成分表

 以下はP&G(アメリカ)の公式ホームページで確認できる含有成分一覧表です。アメリカ本社のホームページでは主成分以外のマイナーな含有成分まで記載されていますが、日本のホームページには主成分しか記載されておらず、さらに個々の成分名は総称に置き換えられています。カスタマーセンターに問い合わせても成分に関する情報は得られませんでした。なお日本国内で販売されているファブリーズと、アメリカを始めとする海外で販売されているファブリーズの成分は必ずしも同じではありませんOur ingredients | febreze

シクロデキストリン

 シクロデキストリン(cyclodextrin)とは、デキストリンと呼ばれるブドウ糖の複合体が環状に連なった成分のこと。ブドウ糖が6つ結合して輪になったものは「α(アルファ)-シクロデキストリン」、7つ結合して輪になったものは「β(ベータ)-シクロデキストリン」、8つ結合して輪になったものは「γ(ガンマ)-シクロデキストリン」と呼ばれます。主な原料は馬鈴薯やとうもろこしのでん粉です。

役割・メカニズム

 ファブリーズに含まれているのは3種類あるうちの「β-シクロデキストリン」です。メーカーによると、臭いを封じ込め、繊維から空中に飛散するのを防ぐ作用があるとのこと。米国内では発売元であるP&Gが「UNCOMPLEXED CYCLODEXTRIN」(直訳すると錯体を形成していないシクロデキストリン)という名でスプレー式で使用する際の特許を取得しています。一方、日本のネット上ではなぜか「トウモロコシ由来の消臭成分Cy」という意味不明な表現に置き換わっています。
シクロデキストリンの消臭原理
 以下でご紹介するのはシクロデキストリンがニオイ成分をトラップする仕組みを模式化したイメージ動画です。ドーナツのような形状をした分子構造の中央に悪臭が捉えられることで消臭につながるという原理です。 元動画は⇒こちら

安全性・危険性

 シクロデキストリンは日本の厚生労働省によって既存添加物として認可されており、「製造用剤」として使用されています。α、β、γという3種すべてに対して使用量の上限値が設けられていない理由は、シクロデキストリンの製造が始まった1970年半ばから現在に至るまで、とりわけ大きな健康被害が出ていないからです。
 一方、EFSA(欧州食品安全機関)はラットを用いた6ヶ月間の給餌試験から、β-シクロデキストリンの無毒性量(NOAEL)を「体重1kgあたり1日600mg」と推定しています。また犬を対象とした52週間の給餌試験からNOAELはオス犬で「体重1kgあたり1日466mg」、メス犬で「体重1kgあたり1日476mg」と推定しています。
 こうしたデータから設定された人における一日摂取許容量(ADI)は、体重1kg当たり1日15mgまでです。またJECFA(FAO/WHO合同食品添加物専門家会議)では「0~5mg」というやや厳しめの基準値を採用しています。なお国際がん研究機関(IARC)によって発がん性は確認されていません。 シクロケムバイオ 食品安全委員会 EFSA(欧州食品安全機関) 日本食品化学研究振興財団

QUAT

 QUAT(クォット)とは第四級アンモニア化合物のこと。ファブリーズの中に含まれているのはその一種である塩化ジデシルジメチルアンモニウムです。この成分は陽イオン界面活性剤に属し、「DDAC」と略されます。

役割・メカニズム

 塩化ジデシルジメチルアンモニウム(DDAC)は帯電防止剤として用いられる他、界面活性剤としても用いられます。また生物の細胞膜を破壊する性質を持っていることから、真菌、アメーバ、エンベロープを持つウイルスに対する殺菌消毒剤としても利用されます。
 日本のファブリーズ公式サイトでは「Quat」という総称で記載されており、DDACという個別名称は記載されていません。また商品ラベルには「Quat」という記載すらありません。以下は引用です。
Quatは特定の除菌成分の総称です。このタイプの除菌成分の安全性は広く認められており、化粧品や薬用石鹸などに使用されています。 P&G「まいれぴ」

安全性・危険性

 ラットを対象とし、塩化ジデシルジメチルアンモニウム(DDAC)を飼料に添加して4週間経口投与した結果から、無毒性量は1,000ppm、最小中毒量および中毒量は2,500ppmと推定されています。
 また犬を対象とし、体重1kg当たり塩化ジデシルジメチルアンモニウムを5mg、15mg、50mgという割合で添加して90日間経口投与した結果、50mg群でわずかに体重減少した以外には異常は認められなかったとも。
 さらにウサギの除毛した背部皮膚に500倍液0.5mLを4時間当て、1→24→48→72時間後のタイミングで観察を行った結果、皮膚炎や蕁麻疹と言った刺激性反応は認められなかったそうです。
 しかし全く無毒というわけではなく、ラットにおける半数致死量(LD50)は体重1kgあたり84mgとの報告もあります。またドイツ連邦リスク評価研究所(BfR)では、DDACの一日摂取許容量(ADI)を体重1kgあたり0.1mgまでと設定しています。なお国際がん研究機関(IARC)によって発がん性は確認されていません。 塩化ジデシルジメチルアンモニウム 食品安全委員会 GESTIS Substance database 職場のあんぜんサイト

ジエチレングリコール

 ジエチレングリコール(diethylene glycol)はエチレングリコールが脱水縮合してできるグリコールの一種。無色無臭で粘り気があり、甘みがあります。

役割・メカニズム

 ジエチレングリコールは引火せず、また経皮的に吸収されないという特性を持っていることから、化粧品にも用いられています。ファブリーズにも含まれており、P&Gの説明書きには「消臭成分の機能を促進するブースター」という漠然とした記載がされています。

安全性・危険性

 ジエチレングリコールは工業的に広く使用されており、不凍液、ブレーキ液、潤滑剤などに含まれています。一方、毒性が強いことから医薬品の原料や食品添加物として使用を認可している国はありません。
 誤飲した場合の中毒症状は吐き気、嘔吐、頭痛、下痢、腹痛で、大量に摂取した場合は腎臓、心臓、神経系に悪影響が現れます。実際1930年以降、ジエチレングリコールの誤飲による大量中毒死事件が世界各地で発生しています。日本でも2007年6月、中国から輸入した練り歯磨き粉にジエチレングリコールが含まれていたことから、自主回収するという騒動がありました。
 EFSA(欧州食品安全機関)における耐容一日摂取量(TDI)はエチレングリコールとジエチレングリコールの総計で体重1kgあたり0.5mgまでです。
 ラットにおける半数致死量(LD50)は体重1kgあたり15.6~20.8 g、人間における中毒量は体重1kgあたり0.14 mg で致死量は1~1.63 gと推計されています。なお国際がん研究機関(IARC)によって発がん性は確認されていません。 愛知県衛生研究所 職場のあんぜんサイト 東京都健康安全研究センター

ベンゾイソチアゾール

 ベンゾイソチアゾール(benzisothiazolinone)はイソチアゾリノンに属する殺生物剤。「BIT」と略されます。

役割・メカニズム

 抗生物作用を有しており、バクテリア、菌、藻などの繁殖を防ぎます。具体的には水流システム、燃料タンク、製紙工場などで使用されています。また一部の人間用のシャンプーにも原料として配合されています。

安全性・危険性

 2012年、ヨーロッパの「消費者安全科学委員会」は、ベンゾイソチアゾールが皮膚炎を始めとするアレルギー反応を引き起こす感作性物質として作用する懸念を表明しました。ゴム手袋に含まれたわずか20ppm(0.002%)のBITで接触アレルギーを発症するケースもあったとのこと。こうした事実から、アレルギー症状を引き起こす濃度がわかっていない限り、化粧品における使用は安全とは言えないとの結論に至っています。
 イソチアゾリノンは防腐剤や殺菌剤として広く用いられています。ひとたびアレルギーを発症すると、シャンプー、ハンドソープ、ボディーシャンプー、冷却マットなどが原因で皮膚のかゆみなどが引き起こされるかもしれません。空中に浮遊した成分により全身性のアレルギー反応を発症したというケースもあります。
 なおラットにおける半数致死量(LD50)は1.02mg/kgとされています。国際がん研究機関(IARC)によって発がん性は確認されていません。 ChemicalBook GESTIS Substance database TOXNET Contact Dermatitis Volume 67, Issue 5 Scientific Committee on Consumer Safety(SCCS)

ジメチコン

 ジメチコン(dimethicone)はシリコンオイルの一種。ジメチルポリシロキサンとも呼ばれます。無色無臭での水を弾く性質を持っていることから、化粧品、シャンプー、潤滑剤などの原料として用いられています。

役割・メカニズム

 ファブリーズに含まれており、メーカーによると液体の表面張力を低下させて泡立ちを防ぎ、繊維に浸透しやすくする作用があるとのこと。ネット上では「空気中を漂うシリコンが石油ファンヒーターに付着して壊れる」という話がありますが、ファブリーズと何らかの関係があるとすればシリコンオイルに属するこの「ジメチコン」でしょう。

安全性・危険性

 動物を用いた試験では消化管を通じても皮膚を通じても体内には吸収されず、そのまま排出されるといいます。遺伝毒性、発がん性などは確認されておらず、「Cosmetic Ingredient Review」の専門家パネルでは15%以下の濃度であれば安全に使用できると結論づけています。
 なおJECFA(FAO/WHO合同食品添加物専門家会議)における一日摂取許容量(ADI)は体重1kg当たり0~1.5mgです。国によっては食品に用いることもありますが、日本においては食品添加物として認可されていません。なお国際がん研究機関(IARC)によって発がん性は確認されていません。 Cosmetic Ingredient Review 化粧品成分オンライン

マレイン酸

 マレイン酸(maleic acid)は鎖状不飽和ジカルボン酸の一種。

役割・メカニズム

 ファブリーズにおいては悪臭成分のpHを調整するために配合されています。

安全性・危険性

 日本においてマレイン酸およびマレイン酸を加熱して得られた無水マレイン酸は厚生労働大臣による指定がなされていません。もし食品への添加物として検出された場合は、食品衛生法第10条に違反することとなります。
 JECFA(FAO/WHO合同食品添加物専門家会議)ではマレイン酸の幾何異性体であるアロマレイン酸(フマル酸)に関し、摂取上限値(ADI)を設けていません。なお国際がん研究機関(IARC)によって発がん性は確認されていません。 厚生労働省

その他の成分

 公式ホームページに非含有成分として明記されているのは「フタル酸エステル類」「ホルムアルデヒド」「燃焼促進剤」です。
 一方、含有成分の中で比較的聞き馴染みのある成分としては以下のようなものがあります。
ファブリーズその他の成分
  • 消臭成分を悪臭成分に届ける媒体として機能します。また製品の均一性を保つ働きも担っています。
  • アルコールスプレー後の乾燥を早めるために配合されています。
  • ポリアミン重合体カチオン(陽イオン)界面活性剤の機能を補強します。メーカーの説明文では悪臭成分に付着して中性化する「臭いのマグネット」のようなものと表現されています。
  • 水素化菜種油融点を高めた菜種油のことで、成分を安定化させる目的で配合されています。
  • 水酸化ナトリウム消臭成分のパフォーマンスを最適化し、安全性を保つ目的で配合されています。
  • クエン酸柑橘類から製造される成分で、悪臭のpH(酸性度)を調整します。
  • 香料香り付けです。ラインナップによって異なる香料が使用されていますが、使用原料と濃度はすべて「International Fragrance Association」(国際フレグランス協会)が定める基準を遵守しているといいます。

ASPCAのスタンス

 アメリカ国内で販売されているファブリーズの中身について調べてみましたが安全な成分もあれば危険な成分も含まれていることが明らかになりました。
 アメリカ動物虐待防止協会(ASPCA)は ネット上に流布している噂を検証し、国立機関である動物中毒コントロールセンターの毒物学者やその他の専門家と検証を重ねた結果、使い方さえ間違えなければ犬や猫を飼っている家庭において使用しても問題がないとの結論に至ったと宣言しています。ただし鳥に関しては、空気中を漂う成分に敏感であるため、部屋の中から揮発成分が完全に換気されるまで隔離することを推奨するとも。
 高らかに安全宣言しておきながら、どのような科学的根拠を持って「安全」と判断するに至ったのかは全く公開されていませんが…。

日本のファブリーズ

 日本においては「布用消臭剤」が家庭用品品質表示法薬機法の対象外であるため、ファブリーズの詳細な成分が表記されていなくても違法にはなりません。またP&G Japanのカスタマーセンターに問い合わせても、のらりくらりと質問をはぐらかされ、結局原材料や素材については教えてくれませんでした。要するに「私たちが安全といえば安全なんです。信用出来ないなら使わなくて結構」というスタンスなのでしょう。
 P&Gの公式の見解は使用量や使用法さえ間違えなければほぼ安全というものです。間違った使用法とは、ペットの体に直接ふりかけるといったことを指します。
🚨個々の成分及び製品全体の安全性データについての検討結果から、ファブリーズがペットの目に入ったり、布製品をなめたりして口に入った場合でも、安全性上の問題は特に考えられません。万が一、目に入った場合には、念のため多量の水で目をすすぎ、十分に洗い流してください。また、異常な症状があらわれたり続いたりした場合は、獣医師にご相談ください。なお、ファブリーズをペットに対して直接スプレーしないでください。 P&G「まいれぴ」
 個々の成分が何であるかも、製品全体の安全性データがどのようなものであるかも一般には公開されていません。ただ「安全」とのこと。

飼い主の注意

 少なくともアメリカ国内で販売されているファブリーズには、体内における代謝経路が完全には解明されていない第四級アンモニア化合物(QUAT)が含まれています。また濃度まではわからないものの、ジエチレングリコールやベンゾイソチアゾールなど、大量に摂取したら有毒(猛毒)な成分も含まれています。
 さらに重要なのは、猫では肝臓におけるグルクロン酸抱合能力がきわめて弱く、シトクロムと呼ばれる酵素の一部が全く生成されないという事実です。人間や犬とは異物の代謝能力が違いますので、くれぐれも猫の体に直接ふりかけないよう注意してください。またファブリーズは飲むことを想定していません。「口の中を殺菌する」という名目でわざと飲ませるバカな飼い主はいないでしょうが、猫がうっかり液体を飲んでしまう誤飲にも気をつけてください。残留した成分が肉球や被毛に付着する危険性もありますので、一箇所に大量噴射してべちゃべちゃにしないほうがよいでしょう。
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