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猫の鼻腔狭窄(短頭種気道症候群, BOAS)に対する鼻孔形成術の成果

 体の小ささから猫では難しいとされる鼻孔形成術。短頭種気道症候群(BOAS)を発症して上記手術を受けた猫を対象とした成果検証が行われました。

猫のBOASと鼻孔形成術

 体の小ささから難しいとされる、猫に対する鼻孔形成術の効果を調査したのは台北市にある汎亜動物医院。2019年~2022年の期間、上記医院において鼻腔狭窄(BOAS)に対する形成術を受けた短頭種の猫7頭を対象とし、医療データを回顧的に参照しました。
鼻腔狭窄
鼻腔狭窄とは鼻ぺちゃ品種のマズル(口吻部)が短縮化することで鼻閉、口内軟部組織の余剰、喉頭小嚢の反転といった症状を呈した状態のこと。短頭種気道症候群(BOAS)と同義的に扱われることも。猫の鼻腔狭窄(短頭種気道症候群)

調査対象

 調査対象となった7頭の内訳はエキゾチックショートヘア5頭+スコティッシュフォールド2頭、年齢中央値は3歳(1.5~9歳)です。手術前の主訴としては以下のような項目が挙げられました。
BOASの主訴
  • 呼吸時騒音=100%
  • 鼻詰まり=100%
  • 食欲不振=71.4%
  • 元気喪失=71.4%
  • 睡眠不良=57.1%
  • 鼻腔排出物=42.9%
  • 苦しげな呼吸=28.6%
  • 嘔吐=14.3%
  • 吐き戻し=14.3%

鼻孔形成術

 鼻孔(いわゆる鼻の穴)を形成するに当たり、調査チームは伸長した背外側の鼻軟骨が狭窄の主な原因であり、吸気時の陰圧で症状が悪化すると仮定し、背外側の軟骨を切除してスペースを確保してから鼻翼を上方に牽引して縫合するという手技を採用しました。 猫のBOASに対する鼻孔形成術の術式模式図

調査結果

 術後、全頭において治癒過程が順調で気道の改善が認められました。また狭窄や症状のぶり返しに関する報告もありませんでした。
 手術から平均29.7ヶ月(6~42ヶ月)が経過したタイミングで飼い主6名に症状の変化をたずねたところ、悪化を報告した人は1人もいませんでした。以下は0を不変とし、-3(著しく悪化)~+3(著しく改善)までの7段階で評価してもらった結果です。
術後の変化(中央値)
  • 活力=+3.0
  • 食欲=+2.0
  • 鼻詰まり=+3.0
  • 呼吸時騒音=+3.0
  • 苦しげな呼吸=+2.25
  • 睡眠の質=+2.5
  • 全体=+3.0
A novel surgical approach for feline stenotic nares: Bilateral wedge resection of the dorsal lateral nasal cartilage in seven cases
Veterinary Medicine and Science(2023), Yen-Chen Chen, Yung-Shun Chang, DOI:10.1002/vms3.1302

鼻ぺちゃは固定化された奇形

 BOASに対する根本的な治療法は鼻孔形成術ではなく、短頭種の繁殖自体を規制することです。

共存症の改善にも

 BOASに対する外科手術は、気道の改善だけでなく呼吸器に関連した他部位の症状も改善する可能性があるようです。
 例えば食道裂孔ヘルニアを抱えた猫では29%が共存症として慢性鼻炎や短頭を有していたという先行報告があります。当調査でも持病として食道裂孔ヘルニアを抱えていたスコティッシュフォールド1頭において、術後における嘔吐や吐き戻しの改善が報告されると同時に、術後3週間の時点で胸部エックス線検査を行ったところ、病変部(軟部組織による透過性の低下)が霧消していました。
 ヘルニア以外ではブラ(嚢胞性肺疾患の一種)が鼻の疾患と連動していますので、気道を改善することでこうした共存症も改善してくれる可能性があります。 猫の鼻孔形成術前後における典型的な所見

虐待繁殖に歯止めを

 当調査ではBOASに対する形成外科手術の成果が前向きな言葉で報告されましたが、短頭種におけるBOASや鼻腔狭窄を根本的に治療する方法は外科手術ではなく、鼻ぺちゃという骨格異常を「スタンダード」として恣意的に規定し、臆面もなく虐待繁殖を繰り返す動物販売業界を法的に規制することです。
 「短頭種気道症候群」という病名が示しているように、この疾患は短頭という解剖学的な特徴があって初めて成立します。一方、疾患を発症することがわかっているのに意図的に繁殖することは虐待の一種としてみなされます。つまりBOASという爆弾を抱えた短頭種を繁殖すること自体がもはや虐待ということです。
 需要と供給はコインの表と裏であり、需要を作り出しているのは疾患発症率を高める骨格奇形を単なる身体的な特徴と勘違いしている消費者です。手術をしないとろくに息もできない状態を「かわいい~!」と叫ぶことの異常性を認識しない限り、不幸な猫たちを生み出す虐待繁殖は繰り返されます。 ペルシャ猫の鼻ぺちゃ(短頭)が水頭症の原因になっている可能性あり