トップ猫の栄養と食事キャットフード成分・大辞典保存料デヒドロ酢酸ナトリウム

デヒドロ酢酸ナトリウム~安全性と危険性から適正量まで

 キャットフードのラベルに記された「デヒドロ酢酸ナトリウム」。この原料の成分から安全性と危険性までを詳しく解説します。そもそも猫に与えて大丈夫なのでしょうか?また何のために含まれ、猫の健康にどのような作用があるのでしょうか?

デヒドロ酢酸ナトリウムとは何か?

 デヒドロ酢酸ナトリウム(sodium dehydroacetate)とは防カビや防腐剤として用いられるデヒドロ酢酸にナトリウムが結合した化合物の一種です。以下のような化学構造式で表されます。 デヒドロ酢酸ナトリウムの分子構造式  成分の分類上は「保存料」に属し、キャットフードの鮮度や質を保つ作用を持っています。
デヒドロ酢酸ナトリウムの安全性情報・概要
  • 厚生労働省=指定添加物
  • IARC=発がん性なし
  • EFSA=使用基準なし
  • JECFA=使用基準なし
  • ペットフード=使用基準なし

日本での使用基準

 日本では厚生労働省によって指定添加物の保存料として認可されており、チーズ・バター・マーガリンにおける使用量の最大限度が、製品1kg当たりデヒドロ酢酸として500mgまでという使用基準が設けられています。
 なお2016年度にマーケットバスケット方式で行われた日本における保存料等の摂取量調査の結果、年齢層に関わらずデヒドロ酢酸ナトリウムの摂取量はゼロと算出されています。食品添加物としては認められているものの、実際にはほとんど使用されていないか、使用されていたとしてもごく微量なのかもしれません。

海外での使用基準

 デヒドロ酢酸ナトリウムはEUにおいて化粧品の防腐剤および食品添加物(保存料, E266)として認められています。使用基準はソーセージやチーズ表面のコーティングとして使用した場合、残存量が製品1kg当たり500mgまでです。
 JECFA(FAO/WHO合同食品添加物専門家会議)においてもEFSA(欧州食品安全機関)においても一日摂取許容量(ADI)は設けられておらず、IARC(国際がん研究機関)でも発がん性は確認されていません。

キャットフードに入れると危険?

 猫を対象とした給餌試験はありませんが、犬を対象とした試験においては急性および慢性の経口毒性が確認されています出典資料:International Journal of Toxicology, 1985
 急性の経口毒性に関しては、体重1kg当たり200mgのデヒドロ酢酸を経口投与したところ、一時的なひっかき行動が見られたほか、2~4日後に死亡したといいます。また体重1kg当たり400mgのデヒドロ酢酸ナトリウムを経口投与したところ、運動失調や嘔吐が現れ、72時間後に死亡が確認されたとのこと。さらに体重1kg当たり500mgのデヒドロ酢酸を経口投与したところ10時間後に死亡したという報告もあります。
 慢性の経口毒性に関しては、体重1kg当たり1日80mgのデヒドロ酢酸を経口摂取した犬において、食欲不振、流涎(よだれ)、13~33%の体重減少、痙攣が起こり、10~23日後に死亡が確認されたといいます。別の調査では体重1kg当たり1日50mgのデヒドロ酢酸を週に6日のペースで200日に渡って経口投与しましたが、こちらの試験では何ら有害反応が見られなかったことから、この辺りが犬における摂取許容量ではないかと推測されています。
 猫における許容量は不明ですが、犬に比べて肝臓の解毒酵素活性が低いため、上記した数値以下と見積もるのが妥当でしょう。
デヒドロ酢酸は高用量で急性・慢性の経口毒性を発揮します。人間向けの食品にはほぼ使われていない成分ですので、ペットフードのラベルに記載されているとあまりいい気分はしませんね。