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アボカド~安全性と危険性から適正量まで

 キャットフードのラベルに記された「アボカド」。この原料の成分から安全性と危険性までを詳しく解説します。そもそも猫に与えて大丈夫なのでしょうか?また何のために含まれ、猫の健康にどのような作用があるのでしょうか?

アボカドの成分

 アボカド(avocado)はクスノキ科ワニナシ属の常緑高木。果実はその形状からワニナシ(鰐梨)とも呼ばれます。実には脂質が多く含まれており、そのうちおよそ80%は不飽和脂肪酸(パルミトレイン酸 | オレイン酸 | リノール酸 | リノレン酸など)です。ちなみに生のアボカドは100g中に18.7gの脂質を含み、カロリーは187kcalとやや高めです。 キャットフードの成分として用いられる「アボカド」  人間においては高コレステロール血症や骨関節炎に対する軽減効果が実証データによって示唆されている一方、便秘や肌の健康に対する効果は逸話レベルに留まっています。またラテックスゴムにアレルギー反応を示す人の中には、まれにアボカドにも交差反応を示す人がいます。

アボカドは安全?危険?

 アボカドを猫に与えても大丈夫なのでしょうか?もし大丈夫だとするとどのくらいの量が適切なのでしょうか?以下でご紹介するのはアボカドに関して報告されている安全性もしくは危険性に関する情報です。

不けん化物(ASU)

 アボカドから抽出される不けん化物(ふけんかぶつ)には結合組織の合成や増殖を促進する効果があるのではないかと考えられています。「不けん化物」とは油脂あるいはろうの成分のうち水酸化カリウムアルコール溶液によりけん化されず、水に不溶、石油エーテルに可溶な物質の総称です。
 この仮説のもと、アボカドオイルと大豆オイルから不けん化物だけを抽出した「アボカドダイズ不けん化物」(ASU)がサプリメントとして市場に出回っています。しかしその効果に関しては人間においても猫においても、いまだにはっきりしていません。犬を対象とした調査はあるものの、そもそも猫を対象とした給餌試験が行われていないというのが現状です。

人に対するASUの効果

 アボカドダイズ不けん化物(ASU)の人間に対する効果は実証されていません。3~6ヶ月という短いスパンで見ると、痛みの軽減に役立っていることを示すデータがあります。しかし数年という長いスパンになるとそうした鎮痛効果が薄くなり、摂っても摂らなくても同じという結論に至ることが多いようです。重大な副作用を引き起こすことがないことから、熱烈な信奉者を除き「試して見る価値はある」くらいの軽い位置づけになっています。
 以下は過去に人を対象として行われたASUの給餌実験結果です。参考までに記載しておきます。
ASUの人間への作用
  • ベルギーの調査ベルギーで膝関節症の患者260名を対象として行われた調査では、アボカドダイズ不けん化物(ASU)を1日300mg摂取するグループ、600mg摂取するグループ、未摂取グループにランダムで分割した比較が行われました出典資料:Appelboom T, 2001。3ヶ月間の試験期間が終わった時点で、量にかかわらずASU摂取グループでは抗炎症薬と鎮痛薬の使用頻度が減少すると同時に、主観的な痛みの指標や痛みと関節機能の指標の改善が認められたといいます。
  • フランスの調査(1998年)フランスでアボカドダイズ不けん化物(ASU)を1日300mg×6ヶ月間摂取してもらうという中間的な観察も行われましたが、結果も中間的なものに終わっています出典資料:Maheu, 1998。具体的には痛みと関節機能の指標 、主観的な痛みと機能障害の指標、症状の総合評価は改善したものの、抗炎症剤の使用回数や使用率に違いはなかったというものです。
  • フランスの調査(2002年)フランスで変形性股関節症の患者163名を対象として行われた調査では、アボカドダイズ不けん化物(ASU)を85名に対し1日300mgを2年間摂取してもらうという長期的な観察が行われました出典資料:Lequesne M, 2002。偽薬(プラセボ)を与えられたグループと比較した所、両グループ間で関節腔の狭さ、痛みと関節機能の指標、主観的な痛みの指標、抗炎症剤の使用量に違いは見られなかったと言います。
人間向けに売られているASUサプリメントを猫に与えないでください。