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ブルーベリー~安全性と危険性から適正量まで

 キャットフードのラベルに記された「ブルーベリー」。この原料の成分から安全性と危険性までを詳しく解説します。そもそも猫に与えて大丈夫なのでしょうか?また何のために含まれ、猫の健康にどのような作用があるのでしょうか?

ブルーベリーの成分

 ブルーベリー(blue belly)はツツジ科スノキ属に分類される落葉低木果樹の総称です。酸味を含んだ果実は生で食されるほか、ジャム、ジュースなどに使われます。 キャットフードの成分として用いられる「ブルーベリー」

ブルーベリーは安全?危険?

 ブルーベリーを猫に与えても大丈夫なのでしょうか?もし大丈夫だとするとどのくらいの量が適切なのでしょうか?以下でご紹介するのはブルーベリーに関して報告されている安全性もしくは危険性に関する情報です。

アントシアニン

 ブルーベリーの中に含まれる色素の一種アントシアニンが「目の網膜に良い」とか「眼精疲労や近視によい」とされていますが実証はされていません。同様に「血管を丈夫にする」という逸話にも科学的な根拠はありません。
 一方、人間と犬においては記憶力の維持や改善を示す報告がいくつか挙がっています。具体的には以下です。

人間に対するアントシアニンの効果

 2010年、タフツ大学とUSDAの共同チームは軽度の記憶力低下が見られる9人の高齢者を対象とし、ブルーベリーに含まれるアントシアニンが神経機能の劣化を予防することができるかどうかを検証しました出典資料:Krikorian, 2010
 一方のグループにはブルーベリージュースを12週間にわたって毎日摂取してもらい、同年代に属する比較対照グループにはプラセボを摂取してもらった上で認知力テストを行いました。その結果、12週間後には試験開始前のベースラインと比べて対連合学習と単語想起能力の成績が改善し、またうつ症状の軽減も見られたと言います。生理学的にはグルコースレベルの低下も観察されました。さらにプラセボグループと比較したところ、対連合学習の成績に関してはブルーベリー摂取グループの方が良かったとも。
 こうした結果から調査チームは、ブルーベリーに含まれるアントシアニンには抗酸化作用や抗炎症作用のほか中枢神経におけるシグナリングを改善する働きがあり、記憶力を始めとした脳機能の維持に役立っているのではないか結論付けています。

犬に対するアントシアニンの効果

 人間の高齢者で観察されたブルーベリーの神経機能維持効果は、犬においても部分的に確認されています。
 2017年、フランスのナント大学とペットフードメーカーを中心とした調査チームは、35頭の老犬(8~14.5歳)を対象とし「PEGB」(ポリフェノールを豊富に含んだぶどうとブルーベリー抽出物)がもつ抗酸化作用や認知力維持作用を検証しました出典資料:Fragua, 2017
 フードに含まれるPEGB濃度に0ppm(11頭)、240ppm(12頭)、480ppm(12頭)というバリエーションを持たせて認知力テストを行ったところ、細胞内に発生した活性酸素の分解酵素「スーパーオキシドディスムターゼ」に関しては「240ppmグループ」が最も高い値を示したといいます。また酸化ダメージから細胞を守る「NFE2L2」と呼ばれる遺伝子の発現に関しては、「480ppmグループ」が最も高い値を示したとも。認知力テストに関してはPEGBを摂取していたグループにおいて良い成績が認められ、240ppmと480ppmとの間に統計的な格差は確認されませんでした。
 こうした結果から調査チームはPEGBが犬の作業記憶能力にプラスに作用した可能性が高いとの結論に至りました。
猫を対象とした給餌試験はありません。猫におけるブルーベリーの安全性、危険性、および適正量に関してはよくわかっていないのが現状です。