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ダイズ(大豆)~安全性と危険性から適正量まで

 キャットフードのラベルに記された「ダイズ」。この原料の成分から安全性と危険性までを詳しく解説します。そもそも猫に与えて大丈夫なのでしょうか?また何のために含まれ、猫の健康にどのような作用があるのでしょうか?

ダイズの成分

 ダイズ(大豆, soy)は東アジア原産のマメ科の一年草。アジア圏では食用、世界的には飼料作物として広く栽培・利用されています。 キャットフードの成分として用いられる「ダイズ」(大豆)  日本では「畑の肉」とも呼ばれ、「アミノ酸スコア」を始めとしてその栄養価が高く評価されています。大豆を原料とした食品としてはみそ、しょう油、豆腐、油揚げ、納豆、凍豆腐、豆乳、きなこ、枝豆などがおなじみですが、世界的に見ると食用での用途は1割にも達しません。他を圧倒しているのが「油製造用」で、使途のおよそ9割を占めています。次が家畜の飼料用ですが、数値はぐっと下がってわずか7%程度です。
 キャットフードのラベルでは主に以下の様は表現として目にすることができます。
ダイズのラベル表記例
  • おから(豆類)
  • きなこ
  • こうや豆腐(粉末)
  • 全粒ひきわり大豆
  • 大豆
  • 大豆ミール
  • 脱脂大豆

ダイズは安全?危険?

 ダイズを猫に与えても大丈夫なのでしょうか?もし大丈夫だとするとどのくらいの量が適切なのでしょうか?以下でご紹介するのはダイズに関して報告されている安全性もしくは危険性に関する情報です。

トリプシンインヒビター

 トリプシンインヒビターとは、膵臓から分泌される消化酵素の一種「トリプシン」の働きを阻害する成分。加熱していない大豆にはトリプシンインヒビターが多く含まれているため、生のまま食べてしまうと消化不良になって下痢を起こしてしまいます。
 ラットを対象とした実験では、生の大豆を食べることで成長停滞や膵臓の肥大が起こることが確認されており、また膵臓癌との関係性も指摘されています。
 完全に乾燥させたダイズ種子1mg中のトリプシンインヒビター含有量は、19.59~118.68TIU/mg程度です(※TIU=国際単位)。加熱加工する過程でほとんどのインヒビターが失活しますので、高温高圧下で加工するでエクストルード製法で作られたキャットフードであれば消化不良を起こすことはないでしょう。

ダイズレクチン

 生の大豆にはレクチン(lectin)と呼ばれる成分が含まれています。この成分は細胞膜を構成する糖タンパク質や糖脂質の糖部分に結合することで、細胞凝集や細胞分裂の誘発などを引き起こすことが知られています。
 乾燥させていない状態のダイズ1mgに含まれるレクチンの量は0.105~9.038H.U./mg程度です(※H.U.=血球凝集性単位)。加熱加工する過程でほとんどのレクチンが失活しますので、高温高圧下で加工するでエクストルード製法で作られたキャットフードであれば消化不良を起こすことはないでしょう。

ダイズレシチン

 ダイズレクチンと非常に紛らわしいですが、大豆にはレシチン(lecithin)と呼ばれるリン脂質の一種も含まれています。猫においては生体内(細胞膜・脳・神経)に豊富に含まれており、大量に与えても毒にはなりにくい成分ですが、明白な健康増進効果が見られるわけでもありません。

大豆オリゴ糖

 大豆オリゴ糖とは、大豆に水を含ませて抽出される少糖類の総称です。具体的にはスタキオース、ラフィノース、ショ糖などのことを指し、大豆から油脂とタンパク質を除いた上で分離・精製されます。
 人間を対象とした調査では、慢性的な便秘患者20名(17~84歳)に大豆オリゴ糖を1日9g、4週間摂取させたところ、便秘の症状が改善したとされています。また臨床上健康な成人7名(21~52歳)を対象に大豆オリゴ糖の一種「マンニノトリオース」粉末を1日3g、7日間摂取させたところ、糞便中のビフィズス菌が増加し、クロストリジウム菌が減少したとも。
 上記したような変化が見られたことから、日本国内では特定保健用食品の成分として認められています。ラベルでは「大豆オリゴ糖が含まれておりビフィズス菌を増やして腸内の環境を良好に保つので、おなかの調子を整えます(1日摂取目安量 : 2~6g)」といった表現で目にすることができるでしょう。
 一方、猫を対象として大豆オリゴ糖を給餌試験をした調査はありませんので、猫における安全性、危険性、および適正量に関してはよくわかっていません。

ダイズサポニン

 サポニン(saponin)とは植物界に広く分布する配糖体の一種。大豆の苦味成分として有名です。水溶液の状態では著しい起泡性をもち、溶血作用を示すとされています。
 日本では厚生労働省によって既存添加物の「乳化剤」として認可されています。成分の定義は「マメ科ダイズ(Glycine max MERRILL)の種子を粉砕し、水又はエタノールで抽出し、精製して得られたものである。主成分はサポニン(ソヤサポニン等)」です。

イソフラボン

 イソフラボン(isoflavone)とは大豆(だいず)、レッドクローバー、クズ、カンゾウなどのマメ科の植物に多く含まれているフラボノイドの一種。大豆に含まれるものは特に大豆イソフラボンと呼ばれます。
 タンパク質の安価な供給源として大豆は多くのキャットフードに含まれています。しかし「ヘルシー」というイメージとは裏腹に、猫が大量に摂取したり長期的に摂取しつづけると、中に含まれるイソフラボンによって思わぬ健康被害が引き起こされる危険性があります。具体的には猫に多い「甲状腺機能亢進症」という内分泌系の病気です。詳しくは以下のページでまとめてありますのでご参照ください。 猫の甲状腺機能亢進症の原因は大豆イソフラボン?

グリホサート

 グリホサート(glyphosate)は1970年代前半から世界中で使用されている除草剤の一種。商標名としては「ラウンドアップ(RoundUp)」などが有名です。
 アメリカにあるコーネル大学微生物学部のチームが行った調査によると、キャットフードには高い確率でグリホサートが含まれていると言います 。含有量はフードに含まれるタンパク質や脂質とは無関係でしたが粗繊維の含有量と連動していることが明らかになりました。このことからグリホサートは植物原料由来だと推測されています。
 グリホサート耐性の大豆からほぼ100%の確率でグリホサートやその代謝産物であるAMPA(アミノメチルホスホン酸)が検出されるといいますので、キャットフードに使用されている大豆が「遺伝子組換え」タイプである場合、汚染されている可能性を考慮した方がよいでしょう。詳しくは以下のページにまとめてありますのでご参照ください。 農薬「グリホサート」によるキャットフード汚染の実態
節分の豆まきで使った大豆はしっかり片付けましょう。生のまま大量に食べるとおなかをこわす危険性があります。