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L-グルタミン酸ナトリウム~意味や目的から危険性まで

 キャットフードのラベルに記された「L-グルタミン酸ナトリウム」。この成分の意味・目的から安全性までを詳しく解説します。何のために含まれ、猫の健康にどのような作用があるのでしょうか?

L-グルタミン酸ナトリウムとは何か?

 L-グルタミン酸ナトリウムとは昆布のうま味成分として用いられる化学調味料の一種です。日本の化学者・池田菊苗(いけだきくなえ)が分離に成功した物質で、1908年には早くも「グルタミン酸を主要成分とする調味料製造法」に関する特許が登録されています。池田による生成法は38kgの昆布をただひたすら茹で続けるというものでしたが、現在主流となっている製造法は、サトウキビの絞りかすとグルタミン酸生産菌を合わせて発酵させるというものです。
 化学構造式は以下。なお頭についている「L」とは生体内におけるアミノ酸の存在様式で、省略されることもあります。 L-グルタミン酸ナトリウムの分子式  成分の分類上は「酸味料・調味料」に属し、フードの味を変えて猫の食いつきを良くする作用を持っています。
L-グルタミン酸ナトリウムの安全性情報・概要
  • 厚生労働省=指定添加物
  • IARC=発がん性なし
  • EFSA=使用基準30mg/体重1kg/日
  • JECFA=使用基準未設定
  • ペットフード=ラットの無毒性量(NOAEL)は体重1kg当たり1日3.2g

日本での安全性情報

 日本では厚生労働省によって指定添加物として認可されており「味の素」の商標名で流通しています。使用基準は特に設定されていませんが、大量に摂取した場合は健康被害が生じる可能性もあります。
 1968年、アメリカの中華料理店において頭痛、歯痛、顔面の紅潮、体の痺れなどの症状を訴える人たちが多発しました。調査の結果、原因が中華料理に大量に使用されていたグルタミン酸ナトリウムであることが判明し、後にこの出来事は「中華料理店症候群」(Chinese Restaurant Syndrome)と呼ばれるようになっています。
 上記「中華料理店症候群」は日本においてもわずかながら報告があります。1971年7月、福岡県において味付昆布を食べた人が頭痛や上半身の感覚異常を訴えるという出来事がありました。原因と思われる昆布製品を調査した所、グルタミン酸ナトリウムが異常な割合で含まれていたといいます。具体的には、通常商品の1.07~1.33%に対し、当該商品では25.92~43.6%という異常なものでした出典資料:厚生労働省

海外での安全性情報

 L-グルタミン酸ナトリウムはIARC(国際がん研究機関)によって発がん性は確認されていません。
 JECFA(FAO/WHO合同食品添加物専門家会議)では使用基準が設定されていませんが、EFSA(欧州食品安全機関)は2017年、ラットにおけるグルタミン酸とその塩の無毒性量(NOAEL)が体重1kg当たり1日3.2gだという実験結果をもとに、人間の一日摂取許容量(ADI)を30mgとする意見書をまとめています。過剰摂取した際に考えられる健康被害は、偏頭痛、緑内障などです。

キャットフードに入れると危険?

 猫に対して長期的に与えた場合の安全性や危険性に関してはよくわかっていません。参考までにラットの無毒性量(NOAEL)は体重1kg当たり1日3.2gと推計されています。
 なお人間ではLグルタミン酸とLアスパラギン酸の2つだけがうま味成分とされていますが、猫においては少なくとも6種類のアミノ酸が受容器と結合することが確認されています。 猫は人間よりもうま味(umami)に敏感である可能性あり
ただしLグルタミン酸を「うまい!」と感じているかどうかは不明です。